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後編
しおりを挟む「エミリー、勘違いなんだ、これは違うんだ」
「……婚約破棄して差し上げても構いませんよ?」
「なっ」
「だって貴方、こちらの女性を凄く愛されているようじゃないですか。私など、もう要らないのでしょう?」
敢えて笑顔を向ける。
「ち、違う! 彼女とは遊び、遊びなんだ! 勘違いさせてしまったのは悪かったと思うが、でも、そうじゃない! そうじゃないんだ!」
「何を言っても無駄ですよ、マッスルさん」
「どうして……!」
「浮気していた、その事実だけでもう無理ですから」
「そ、そんな……」
「婚約は破棄します、マッスルさん――さようなら、お幸せに」
私はもう、彼とは歩めない。
彼の行いを知ってしまったから。
「ゆ、許してええええええええ!!」
◆
マッスルはあの後、『遊び』だと言ったことからガーレンダにも捨てられ、一人ぼっちになってしまったそうだ。
一人にしておけばいいのに、二人に手を出した。
そんな男の末路。
それはとても憐れなものであった。
今彼はもう誰からも愛されない。
そして、誰かを愛することすら認められない。
悪評が立ってしまい女性は誰も彼に良い印象を抱いてくれず――彼は小さな過ちで大きなものを失ったのだった。
一方、ガーレンダもまた、婚約者がいる男に手を出したとして評判を地に堕としたようで。
彼女の父親はその悪評によって心を病んだほどだったようだ。
――結局二人とも幸せにはなれなかった。
ちなみに私はというと、今複数の婚約希望者から声をかけられ、あれこれ悩みつつ誰を伴侶とするか考えているところだ。
私はまだ何も失っていない。
だから前を向いて進めるのである。
◆終わり◆
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