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前編
しおりを挟む幼い頃から冒険者として働いていた私は、ニ十歳になってすぐの頃に同じ年の男性アミーユからプロポーズを受け、彼と婚約した。
しかし彼の私への想いはそれほど長くは続かず。
彼は婚約した途端私に飽きたようになり、扱いも雑になって。
――そんな感じで今日に至っていたのだが。
「あのさぁ、ちょっといいかぁ?」
「ええ」
「お前との婚約なんだが破棄したいんだ」
今日、ついに、そんな話を切り出された。
「え……」
「驚いてるみたいだな! はは!」
アミーユは何やら嬉しそうだ。
「婚約破棄って……また急ね」
「ああ、サプライズ感を出したかったからな!」
ええ……それは滅茶苦茶過ぎる……。
「てことで、関係はおしまいな!」
「本気なの?」
「もっちろん! 本気! 本気に決まってるだろ」
「そう……」
「当たり前だろ、普通、こういうこと冗談で言ったりしないって」
そこはきちんとしているのね。
……他が滅茶苦茶だけれど。
「でもどうして」
「はぁー? それ聞くー? 面倒臭いなぁ」
「理由くらい聞いてもいいじゃない」
「もう察してくれよ!」
「ええ……」
「じゃあはっきり言うが、お前はもうどうでも良くなったんだ!」
……ああ、やっぱり。
なぜか非常に納得できた。
本当はもうずっと前から気づいていた。
彼は私を愛していないのだと。
だから今こうして答えのようなものを突きつけられてもそれほど驚きはしないしショックもそこまでない。
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