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後編
しおりを挟む「それに、もっと愛しい人と出会ったしな!」
「そう……分かった、ありがとう。じゃ、私たちはここまでね。さようなら、アミーユ」
「ああ! ばいばい!」
彼は最後まで軽い調子だった。
婚約破棄――その本当の意味を彼は理解していないのだろう。
「あ、でもお金は貰うからね」
その後私は父の知人に協力してもらってアミーユからまともな理由なく婚約を破棄した償いの金を搾り取ることに成功した。
償いの金が支払われた日、その日は穏やかな晴れの日だった。
その後私は再び冒険者の世界へと舞い戻る。
なぜなら「結婚もなくなったならもう一度この世界へ行きたい」と純粋に想ったから。
ただそれだけ。
それ以上でも以下でもなく、単にそれだけの理由で私は冒険者の世界へと再び足を向けたのである。
そして私はみるみるうちに階級を上げて。
最年少最上級冒険者、という名誉を得た。
さらに、ちょうどその頃王子からプロポーズされ、少し悩みはしたものの彼のもとへ行くことを決める。
「最強の冒険者を妻とできるなんて……嬉しいです、僕はただひたすらに弱いので」
私を迎え入れてくれた王子は外へ行くより城にいる方が好きなインドア系の男性だった。
男らしいかと言われればそうとは言えないような感じの人。けれども人としても魅力はある。包み込むような優しさだ、それこそが彼の長所であり魅力的なところだ。
「そのようなことを仰らないでください」
「ですが、実際、剣もまともに触れないのです」
「貴方には優しさがあるではないですか、そして寛容さも」
「え……」
「私のような女を受け入れる寛容さ、それは素晴らしいものです。きっとこの国の未来にも明るい光となるでしょう」
「そ、それは、少し……て、照れてしまいますね。直球で来られると。……ですが、その、貴女からそう言っていただけたことはとても嬉しいです」
ちなみにアミーユはというと、惚れた女性には捨てられてしまったようだ。
何でも「もっと良い条件の男性が見つかったから」と言われ振られてしまったのだとか。
結婚まであと一歩というところだったようだが。
私を捨ててまで得ようとした女性をアミーユは結局手に入れられなかったのである。
……切ない話だ。
でも、まぁ、何事も繰り返すと言うから。
誰かを切り捨てた者は誰かに切り捨てられる、というのが世の理なのだろう。
◆終わり◆
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