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後編
しおりを挟むこうして婚約を破棄されることとなってしまったレイティアだったが、周囲は心配していたものの本人はそれほど動じていなかった。そこはやはりこれまで数多の災難に見舞われてきた彼女、確かな不動心がそこにはある。
「レイティア、聞いたわよ婚約破棄されたんですって? 大丈夫?」
「ええ平気よ~」
「思ったよりけろっとしてるわね……」
「命までは取られないもの! 生きていれば良いことあるわ」
「そ、そう……」
友人らの心配をよそに、彼女は日々を呑気に楽しく生きていた。
◆
レイティアとルレクの婚約が破棄となってから一年半。
「レイティア、君を絶対幸せにする――そう誓うよ」
「フロウさん……ありがとうございます。私も貴方のためにできることをしていくつもりです」
今日、レイティアは結婚する。
資産家の息子で自身もやり手実業家である青年フロウと。
とある晩餐会にて出会い知り合った二人。
初対面で惹かれ合った。
視線が合う、それだけで、二人はお互いを特別な人と捉えたのだ。
――そして結婚するに至った。
「式お疲れ様、レイティア」
「楽しかったわ!」
「良かった。おっちょこちょいさも発揮されなかったし、本当に良かったよ」
「ごめんなさいねいつも」
「ああいやでもそういうところも含めて好きなんだけどね」
「フロウさん……きっと迷惑もかけるでしょうけど、どうか、これからもよろしくお願いします」
独特な感性の持ち主であるレイティアにも幸せになる道はあった。
彼女を理解してくれる人に出会えた、それが幸福へのトリガーとなったのだ。
「サポートするよ」
「嬉しいです!」
「って、言った傍から! 水こぼれてる!」
「あ」
「ああもう駄目だよ気をつけないと……」
「ああ……申し訳ありません~……」
「水は僕が入れるから、必要な時は言って? ね? じゃないと部屋中水浸しになっちゃう」
「ごめんなさい~」
ちなみにルレクはというと、レイティアとの婚約を破棄した後気に入った女性に声をかけ続けるも十人連続で拒否され玉砕し続けたために心が折れ、家から出ることを極端に恐れるようになってしまった。また、彼は女性自体をも酷く恐れるようになり、今では母親以外の女性と出会うと言葉にならない大きな声を発してしまうというような状態だ。
彼には結婚は無理そうである。
◆終わり◆
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