酷く侮辱されたうえ婚約破棄され凍り付いてしまった彼女の心を溶かしたのは、夏の日に現れた太陽のような男性でした。

四季

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前編

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 一年ほど前、当時の婚約者から酷く侮辱されたうえ婚約破棄された二十二歳の女性ミレーネリアは、それから男性を嫌うようになってしまった。

「とても美しい……結婚してください」
「お断りします」

 彼女はとても整った容姿も持ち主、そして性格も悪くはない――ただ、婚約破棄の件があってからというもの、男性に対してだけは冷ややかな態度をとるようになってしまっている。

「なぁ、良かったらさぁ、俺と仲良くせえへん?」
「嫌です」

 男性が声をかけると彼女は般若のような顔をする。

「んな!? そんなぁ……」
「離れてください」
「嫌や、遊ぼうやぁ」

 何度も声をかけられると鋭い声を放つ。

「――やめてください!!」

 昔の可愛らしかった彼女はもうどこかへ行ってしまったのだ――あくまで、男性の前では、だが。

「え……」
「お断りしているのです、離れてください」
「あ、ああ、うんせやな」

 そんなだからなかなか婚約者ができないミレーネリア。

 親は心配していた。
 このまま一生一人だったら、と。

 けれどもミレーネリアはそんな心配は抱いておらず、それどころかずっとこんな感じで生きていこうと強く心を決めていた。彼女は既に男性というものに対して嫌悪感を覚えており、たとえ相手が善人だとしてもなるべく関わりたくない、とまで思っていた。

 しかし、ある夏、そんな彼女の前に一人の明るい男性が現れる。

「ミレーネリアさん! こんにちは! 暑いですね!」

 彼はどこか子どものような人で。
 いつも満面の笑み。
 太陽のような明るい表情と声でミレーネリアに絡んでくる。
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