酷く侮辱されたうえ婚約破棄され凍り付いてしまった彼女の心を溶かしたのは、夏の日に現れた太陽のような男性でした。

四季

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後編

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「今日は雨ですねー、濡れちゃいました、あはは」

 晴れの日も、雨の日も、彼はミレーネリアの前に現れて。

「さっきあそこの店で買ったんです、クッキー。はい、どうぞ!」

 短時間だけ喋って去っていく。

「この前のクッキーどうでしたー?」
「捨てました」
「ええ!?」
「男性から貰った物は口にしない主義なので」
「うそぉー」

 最初は面倒臭いと思っていたミレーネリア。

 しかし段々関係は変わってゆく。

 ――そして、初めて出会った日から一年半が経ち。

「ぼくと婚約しませんか?」
「え……」
「絶対幸せにする! 約束しますっ」
「……迷っています」
「どうして?」
「また、裏切られるかと……不安があるので」

 ベンチに隣り合って座る二人。

「じゃあ! もし裏切ったら、ぼくのこと殺してください!」

 赤い糸が二人を結んだ。

「分かりました。では……どうか、よろしくお願いします」

 二人は婚約したのであった。

 そうして二人は結婚、幸せに暮らした。

 一方、かつてミレーネリアを傷つけ婚約破棄した男性はというと。

 ある時「スリルを体験したいから」という馬鹿げた理由で富豪の家に忍び込んで物を盗もうとしてばれてしまい、家の主によって地下室に拘束され痛めつけられ続けることとなった。

 彼への痛めつけは数年が経った今も続いている。

 そう、彼はもう、死ぬまでその暗い地獄から逃れられないのだ。


◆終わり◆
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