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後編
しおりを挟む「婚約を一方的に破棄するなんて。そんなことをしたらきっと契約違反でお金を支払ってもらうことになりますよ?」
「何でもいいさ。何ならちょっとくらいなら払ってやったっていい。それでも俺はもうお前といたくないんだ」
「どうしても私と離れたいのですね?」
「ああそうだ! 歌をやめないならお前は無価値、俺には必要ない!」
ここまで言われてしまったならもう仕方ない。
「分かりました。では受け入れます」
こうして私は婚約破棄された。
ただ良いこともあった。
両親に相談し、知人を頼り、その結果少額ではあるが契約違反でお金をもぎ取ることに成功したのだ。
そういう意味では良いこともあったと思えている。
いずれ良き人と巡り会えるように――。
今はただ光ある未来を見据えて。
そうやって顔を持ち上げて歩いていこう。
◆
三年後。
たった数年だというのにたくさんのものが変わっていった。
私は歌でデビューし有名人となり、やがて民から歌姫と呼ばれるところまで評判を高めた。
そうして私は大きな富を得た。
また、そんな仕事の中で出会った善良な男性と親しくなり、結婚。
こうして私は地位と名誉を得るのみならず穏やかな家庭までもを手に入れられることとなったのだった。
今はオーガンゼーに感謝している。
あの時手放してくれて良かった、だってそれがあって今の幸せな私が生きているのだから。
ただ、それでも、他人の趣味について悪くばかり言うのはどうかとは思うけれど……。
ちなみにオーガンゼーは今犯罪者として牢屋に入れられている状態だ。
というのも、彼は、ある時私が出演したコンサートにて会場で包丁を振り回し数名を負傷させたために捕まったのだ。
地位、名誉、評判――彼は持っていたものすべてを失った。
彼はもう犯罪者。
どこまでも悪人。
今後彼は、いつまでも、ただひたすらに悪の行いをしてしまった者として扱われてゆくだろう。
もし生きて牢屋から出られたとしても、きっとそこに救いはない。
これから先ずっと誰もが彼を悪人として犯罪者として認識するだろう――それゆえそんな状態で穏やかに生活するなんて不可能に近いのだ。
◆終わり◆
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