婚約者ガーランドは数ヶ月前に知り合った女性ロレッタに惚れてしまっている――それも、少々異様なくらい。

四季

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2話

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「今すぐ消えてくれ」
「本気なのですか?」
「しつこいぞ! 本気だ、当然だろう。俺はくだらない冗談を言ったりはしない!」
「そうですか。……分かりました、ではそういうことで。婚約破棄ですね、分かりました」

 こうして私とガーランドの関係は終わってしまったのだった。

 ――ああ、どうしてこんなことに。

 婚約破棄されてからしばらくはそんな思いばかり抱えてもやもやしていた。それ以外のことを考えようと思うのだがそれはなかなか難しくて。考えないようにしよう、そう思えば思うほどに深みにはまってゆく。

 ――けれどもある時、通っていた図書館で出会いがあって。

「あの、その本……もしかしてお好きなのですか?」

 さりげなく声をかけてくれた彼は眼鏡をかけていた。

「え」
「慣れた感じで手に取っていらっしゃったので、ふと思って」
「あ……はい、好きなんです」
「小説がお好きなのですか」
「そうですね、何となく、ですけど。暇潰しにちょうどいいな、なんて思っているんです。……あっ、そういう言い方はちょっと失礼でしたか」
「いえいえお気遣いなく」

 それから、彼との関わりは深くなっていった。


 ◆


 あれから数年が経った今、私は、夫となった彼と定期的に図書館に通っている。
 あの時たまたま向こうが声をかけてくれて始まった関係は、不思議なことだが長く続き、そして今にまで至っている。
 他人だった私たちはいつしか夫婦となった。
 ここまでの道のりは長かったような短かったような、何とも言えない不思議な感じだ。
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