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前編

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 盾使いの一族に生まれた私は、両親が共に盾使いだったこともあり、幼い頃から重く大きな盾というものに馴染んでいた。自宅にも多く置かれていたからだ。盾そのものが、私にとっては、かなり身近なものだったのである。で、そんな環境で育ったこともあり、私もまた盾使いとなるべく道を歩み始めた。

 学園でも盾専攻で学び、訓練を受け、卒業。

 しかしちょうどその頃に一人の男性に気に入られた。
 彼の名はヴィヴェクゼという。
 私に惚れたという彼は婚約を求めてきた。

 そして、気づけば、私はヴィヴェクゼの婚約者となってしまっていた。

「これで美しいキミはボクのものだよ!」
「は、はぁ……」
「これからよろしく! 仲良くしてくれたまえよ」
「……はい」

 盾使いとして働きたかった。
 国のために生きたかった。
 でもヴィヴェクゼと結婚することになったためにすべてが壊れた。

 しかし、それから一年も経たず、二人の関係は沈みゆくこととなる――というのも、ヴィヴェクゼがエリーという女性に惚れ込んだのだ。

「悪いね、キミとの婚約はやっぱりなかったこととさせてもらうよ」

 ヴィヴェクゼがエリーと定期的に一緒に出掛けていることは知っていた。
 でもこんなことになるとは。
 正直そこまでのことになるとは読んでいなかった。

「え……今さら、ですか」

 勝手に婚約しておいてそれはないだろう。
 どうしても腹が立ってしまう。
 他者を巻き込んでおいて無責任過ぎる。
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