婚約破棄された!? でもいいもん！ あたしにはとっておきの相手がいるんだもん!!

前編

「わりーんだけど、お前といるのダルくなったんだわ。ってことで、婚約は破棄させてもらうから。いいな？　じゃ、そーいうことなんで」

　あたしには婚約者がいる。

　彼、オーブリーは、いつも明るくて楽しいことを言う愉快な人で。本当のことを言うなら、嫌いじゃなかった。彼といると世界が明るくなるように感じられて。二人で過ごす時間は晴れやかで楽しかった。

　でも両想いにはなれていなかったみたい。

「本気なの……？」
「もっちろん！　いくら俺でもそんな冗談は言わねーよ。そのくらい分かれよ、馬鹿だな」
「馬鹿とか酷い……」
「は？　黙ってろや。うるせーな。そういうとこも含めてだりーんだよ」

　そんな風に言うオーブリーの瞳には優しさも明るさも楽しさもなく。それを目にしたら、彼は私を不愉快な存在としか思っていないのだと理解することができてしまった。

　そっか。
　幸せになるなんて無理だったんだ。

　悲しい。

　でもいいもん！
　あたしにはとっておきの相手がいるもん!!

　悲しさは握り潰して消してしまおう。

　そして前を向くの。

　それでこそあたしだよ。