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前編
しおりを挟むそれはある春の日。
穏やかな日射しが降り注ぐ海辺の町で、私は婚約者ローランから関係の解消――つまり『婚約破棄』を告げられた。
彼が言うには、他にもっと惹かれる女性ができてしまったらしくて。
それによっての婚約破棄ということだったようだ。
その時はただただ驚くことしかできず、私は何となくで頷いてしまった。で、それによって婚約破棄了承ということになってしまって。気づけば私たち二人の関係は終わりを迎えていた。
ああ、どうしてあの時もっとあれこれ言わなかったのだろう……。
そんな風に後悔しながら実家へ戻って暮らしていたのだけれど。
「やあ! 僕は宇宙連合本部からやって来たダドゥルマ・ディドゥマ! 君を妻にしたくて来たんだ!」
ある日のこと、朝、急に謎の人が訪ねてきて。
「え……」
「星の外から君をずっと見ていたんだ!」
「えと、話が……ちょっと……」
突然現れた褐色の肌の宇宙人はよく分からないことを言ってくる。しかしその瞳は虹色に煌めいていて。まるで恋する乙女のような目をしていた。
「僕と結婚してください!」
「えええええ!!」
――こうして始まってゆく、私と謎過ぎる宇宙人ダドゥルマの物語が。
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