私、ウェルネリア。婚約者の家へ行った時、彼が他の女といちゃついているのを目撃してしまいました。……これはもう駄目ですね。

四季

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2話「終焉へと続く道だって歩みます」

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 トマスとの日々は平凡だった。
 でも嫌なものではなくて。
 むしろ楽しい心地よいものでもあった、とにかく自然な感じだったから。

 だがその平穏はもう崩れ去ってしまった――少なくとも、この胸の内においては。

 ただ、まだ何とか今まで通りを維持する方法はある。

 それは、今日のことを、見て見ぬふりすること。私がこれに触れないこと。もしもそれを選ぶのなら、私は辛いけれど、それでも一応今までのように彼と関わることはできるのだ。

 でも。

 ……いいえ、なかったことになんてできないわ。

 それが私の答えだった。

 だから、扉を押し開けた。

「トマス! いてる? お邪魔しまーす!」

 あたかも、何にも気づいていないかのように。

「――え」

 そして、今まさにこの瞬間にトマスと女性の関わりに気づいたかのように演じる。

「な……」

 トマスは青い顔になった。

「あの……トマス、これは、一体……」

 するとトマスは急に激昂、鬼のような形相で「何で勝手に入ってきてんだよ! 常識無し!」と叫んでくる。

 どうして? やらかしたのは貴方でしょう。なぜ私を責めるの? 私には非などないというのに。

 ……そうか、分かった、やらかした自覚があるからごまかそうとしているのか。

「どうしてそんな言い方をするの」
「うるさい! 勝手なことをしやがって、絶対許さん!」
「ええっ……酷いわ、急にそんなことを言うなんて。私はただ驚いて、それで、これは一体、って聞いただけじゃない……。それなのにそんな風に怒るの……?」

 しかし彼は止まらない。

「なんて勝手なやつ! 女として最低だな! もういい、婚約は破棄だ! 俺はお前とはこれ以上やっていけん、よって、婚約は破棄とする!!」

 彼はついにそこまで言いきった。

「……話をしましょう、皆できちんと」


 ◆


 私とトマスそれぞれの両親とオフィリア、七人で一カ所に集まる。

「残念ですぞ、まさか彼がそのような軽い人だったとは……想像していなかった、でも実際そうだったようですな」

 第一声、私の父が切り出す。

「婚約者のいる身で他の女性を部屋に連れ込むなんて最低です!」

 私の母が続けた。

 それに対して、トマスの母親は悲しそうに「……私もそう思います。息子の行為は最低なものです、謝罪します。……申し訳ありませんでした」と返した。

 トマスの両親は二人とも暗い顔をしている。

「でも! あたしたちの心はいつだって同じ! あたしはトマスを愛しているし、トマスだってあたしを愛しているって言ってくれていたの! だから、本当に結ばれるべきはあたしたちの方よ!」

 いきなり頓珍漢なことを言い出すオフィリア。

 夢みる乙女か? 彼女は。

「貴女、最低な女性ね」
「何よあんた! あんたなんて所詮、トマスに愛されてもいない形だけの婚約者の母親でしょ! 出てこないで!」
「……立場を分かっているのかしら」
「立場? そんなものどうでもいいわ。本当にトマスに愛されているのはあたしなんだもの、その事実は決して変わらない。つまり! トマスに相応しいのはあたしなの!」
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