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前編
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私とアダームスは幼馴染みだった。
それで色々あって婚約、その日から私たち二人はこの世においてお互いにとって特別な人間となったのだ。
私たちはいつだってくだらないことを言って笑え合えていた。だからきっとこの先も、ずっと、そう思っていた。新鮮さはなくとも付き合いが長いからこそ築けている関係というのもあるもので、それゆえ、この先何があっても協力して工夫してやっていけば何とかなると信じていたのだ。
……でもそれは思い込みだった。
「お前ほんと可愛いなぁ、あいつとは大違いだわ」
「あいつって……婚約者さん?」
「そーそー。あいつ色気ないし可愛げもあんまないしでほーんと萎えるんだよな」
ある日の夕暮れ時、私は見てしまった。
アダームスが知らない女性と腕組みして歩いているところを。
その翌日アダームスを呼び出して「昨日見てしまったの」と明かすと、彼ははぁぁとわざとらしい長めの溜め息をついて「そっか、じゃあ仕方ないな」と冷めたような感情のない声でこぼした。
彼の反応が想定していなかったようなものだったことに戸惑っていると。
「悪いが婚約は破棄とさせてもらう」
数秒の沈黙の後、彼は淡々とそう述べた。
「そ……そんな、本気で言っているの……?」
「当たり前だろう」
「信じられないわ……だって私たち、ずっと仲良しだったじゃないの……」
心が震えて、それと同時に声も震えた。
しっかりしなくちゃ。
そう思ってもなかなか上手くいかない。
「お前がそう思ってただけだろ」
「えっ」
「そっちはそう思ってたかもしれないがな、こっちはそうは思ってなかったってことだよ」
くらくらしてきた……。
「俺はあの女性を愛してるんだ」
駄目だ、めまいが……。
「ってことで、ここまでにしよう。な? この際もうその方がいいだろ? お前だって次の男に行けるし」
「言っていることが滅茶苦茶よ……」
「そうか? 俺はまともなこと言ってると思うけどな。俺の言ってることは筋が通っていることだ」
こうして私たち二人の関係は壊れてしまったのだった。
それで色々あって婚約、その日から私たち二人はこの世においてお互いにとって特別な人間となったのだ。
私たちはいつだってくだらないことを言って笑え合えていた。だからきっとこの先も、ずっと、そう思っていた。新鮮さはなくとも付き合いが長いからこそ築けている関係というのもあるもので、それゆえ、この先何があっても協力して工夫してやっていけば何とかなると信じていたのだ。
……でもそれは思い込みだった。
「お前ほんと可愛いなぁ、あいつとは大違いだわ」
「あいつって……婚約者さん?」
「そーそー。あいつ色気ないし可愛げもあんまないしでほーんと萎えるんだよな」
ある日の夕暮れ時、私は見てしまった。
アダームスが知らない女性と腕組みして歩いているところを。
その翌日アダームスを呼び出して「昨日見てしまったの」と明かすと、彼ははぁぁとわざとらしい長めの溜め息をついて「そっか、じゃあ仕方ないな」と冷めたような感情のない声でこぼした。
彼の反応が想定していなかったようなものだったことに戸惑っていると。
「悪いが婚約は破棄とさせてもらう」
数秒の沈黙の後、彼は淡々とそう述べた。
「そ……そんな、本気で言っているの……?」
「当たり前だろう」
「信じられないわ……だって私たち、ずっと仲良しだったじゃないの……」
心が震えて、それと同時に声も震えた。
しっかりしなくちゃ。
そう思ってもなかなか上手くいかない。
「お前がそう思ってただけだろ」
「えっ」
「そっちはそう思ってたかもしれないがな、こっちはそうは思ってなかったってことだよ」
くらくらしてきた……。
「俺はあの女性を愛してるんだ」
駄目だ、めまいが……。
「ってことで、ここまでにしよう。な? この際もうその方がいいだろ? お前だって次の男に行けるし」
「言っていることが滅茶苦茶よ……」
「そうか? 俺はまともなこと言ってると思うけどな。俺の言ってることは筋が通っていることだ」
こうして私たち二人の関係は壊れてしまったのだった。
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