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職場の部下に婚約者を奪われました!? ~貴女はもう用済みなんですよ、は、さすがに失礼ではないですか?~
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「貴女はもう用済みなんですよ。イリーナさん」
婚約者ウィルベルを彼の職場の年下女性に奪われてしまった。
今日まで彼の裏での行動には気づいていなかった。ウィルベルとその女性ロッタの関係はあくまで上司と部下だと思っていたのだ。ウィルベルを疑うことはしてこなかったし、まずそういう発想がなかったのだ。でもそこに落とし穴があって。ウィルベルとロッタは陰で着実に関係を進めていっていた。
「悪いなイリーナ。婚約は破棄だ。俺はロッタを選ぶ。たとえ君に何と言われようとも……それでも俺は愛のある関係を選ぶんだ」
そしてこの日がやって来てしまったのだ。
あまりにも突然のことで。
ちっとも想定していなかった展開で。
それだけに今はまだどこか他人事のように話を聞いている。
怒り、悲しみ、情緒が大きく振れてもおかしくなさそうなものなのだが――現時点ではそれよりも衝撃とそれによる思考の停止が勝っている。
「あははっ、イリーナさんまだ状況が呑み込めていらっしゃらないみたいね」
「ああそうだな、実に面白い顔をしている」
「これは傑作だわぁ。ふふっ、写真に撮って皆に見せたいくらいね」
「それな」
こうして私はウィルベルに捨てられてしまったのだった。
どうしてこんなことになってしまったのだろう……。
それなりに真っ当に生きてきたはずだったのに……。
でも、もう今さら何を言っても無駄だ。
私にはウィルベルを取り戻すすべはない。
――絶望に堕ちた私は、その日の晩、家から少し離れたところにあるベンチに座って泣いていた。
母には泣き顔を見せたくない。
だってそんなものを見せてしまったらきっと悲しませてしまうから。
だから敢えて外を選んだのだ。
誰もいないところでなら思いきり泣けるから――そう思っていたのだが。
「え、イリーナ!?」
暗闇で涙を流していたところ急に声をかけられる。
顔を上げれば、ぼんやりと見覚えのある顔。
「あ……も、もしかして……アルト?」
「ああそうだ! そうだよ! 久しぶり、覚えてくれてたんだ」
アルト、彼は私の幼馴染みだ。
でももうずっと会っていなかった。少なくとも十年は会っていない。それは確かなことだ。だって、かつて私たちが離れることになった時、二人ともまだ十歳になるかならないかくらいだったのだ。
顔を見て彼だと分かったのが不思議なくらいである。
「こんな夜に何してるの?」
「……実は、婚約破棄されて」
「ええ!?」
「職場の部下の女性に奪われたの……婚約者を」
するとアルトは「話聞くよ」と言ってくれた。
それで私は彼にすべての出来事を話した。
「その会社って……僕の会社じゃない?」
「え」
「ウィルベルだっけ? その名前、聞いたことがある気がする。多分だけど。それにロッタとかいうのも」
話していく中で判明したのは、アルトがウィルベルとロッタが勤めている会社の社長であるという事実。
「僕が作った会社だよ」
「えええ!!」
「……物凄い驚き方だね」
「だって、そんな、貴方が社長になっているなんて……そんなこと、ちっとも思わなくって」
衝撃の事実に唇まで震えた。
負の意味ではないけれど。
「とにかく、その二人に罰を下すよ」
「え……」
「できるよ社長だからね」
「そ、そんな、でも……」
「それにさ。ウィルベルって人、評判あまり良くないよ? 部下に暴言を吐いたとか何とかって問題とか聞いたことあるし」
「そうだったの……知らなかった……」
その後アルトの決定によりウィルベルは会社をクビになった。
ウィルベルは職を失った。
そしてそれによってロッタからの愛も失うこととなる。
ロッタは彼が失職したことを知ると「高給取りだから好きだったのに。もうどうでもいいわ、貴方みたいな人。仕事もないなら貴方なんて所詮どこにでもいる程度の男性よ」と冷ややかに言い彼の前から去ったそうだ。
それから少ししてウィルベルは私のところへやって来た。そして平然ともう一度やり直そうと言ってくる。しかし私はそれを拒否。すると彼は激怒し殴ろうとしてきた、が、通行人のおじさんが通報してくれて殴られずに済んだ。
そうしてウィルベルは牢屋送りとなったのだった。
また、その一件によって、アルトとの関係も大きく動くこととなり。
「僕がイリーナを一生守る!」
彼はそう言ってくれて。
結果私たちは結婚への道を歩み出すこととなった。
◆
「「「おはようございます、イリーナさん!」」」
アルトの妻となった私は社長の妻として今は彼のサポートに入っている。
社員の多くは私を受け入れてくれている。
温かな人が多いので助かっている。
「イリーナさん、こちらを」
「あ、ありがとうございます」
「書類はお昼頃にお持ちしますね」
「ああいえ、私が取りに行きます。いつも持ってきていただいて申し訳ないですし……たまには自分で」
忙しい毎日だけれど充実してもいる。
ロッタは私とアルトの結婚を知った直後に退職した。
それまでにあんなことをしていた以上、さすがに、私が社長の妻として現れれば平気でそこにはいられなかったのだろう。
また、噂によれば、その後ロッタはろくな仕事に就けず社会の底辺で生きているらしい。
ウィルベルは牢屋送りとなった。
ロッタは絶望の中で生きる外ない。
まぁ、妥当なところだろう。
他人を傷つけておいて幸せになんてなれるわけがないのだ。
◆終わり◆
婚約者ウィルベルを彼の職場の年下女性に奪われてしまった。
今日まで彼の裏での行動には気づいていなかった。ウィルベルとその女性ロッタの関係はあくまで上司と部下だと思っていたのだ。ウィルベルを疑うことはしてこなかったし、まずそういう発想がなかったのだ。でもそこに落とし穴があって。ウィルベルとロッタは陰で着実に関係を進めていっていた。
「悪いなイリーナ。婚約は破棄だ。俺はロッタを選ぶ。たとえ君に何と言われようとも……それでも俺は愛のある関係を選ぶんだ」
そしてこの日がやって来てしまったのだ。
あまりにも突然のことで。
ちっとも想定していなかった展開で。
それだけに今はまだどこか他人事のように話を聞いている。
怒り、悲しみ、情緒が大きく振れてもおかしくなさそうなものなのだが――現時点ではそれよりも衝撃とそれによる思考の停止が勝っている。
「あははっ、イリーナさんまだ状況が呑み込めていらっしゃらないみたいね」
「ああそうだな、実に面白い顔をしている」
「これは傑作だわぁ。ふふっ、写真に撮って皆に見せたいくらいね」
「それな」
こうして私はウィルベルに捨てられてしまったのだった。
どうしてこんなことになってしまったのだろう……。
それなりに真っ当に生きてきたはずだったのに……。
でも、もう今さら何を言っても無駄だ。
私にはウィルベルを取り戻すすべはない。
――絶望に堕ちた私は、その日の晩、家から少し離れたところにあるベンチに座って泣いていた。
母には泣き顔を見せたくない。
だってそんなものを見せてしまったらきっと悲しませてしまうから。
だから敢えて外を選んだのだ。
誰もいないところでなら思いきり泣けるから――そう思っていたのだが。
「え、イリーナ!?」
暗闇で涙を流していたところ急に声をかけられる。
顔を上げれば、ぼんやりと見覚えのある顔。
「あ……も、もしかして……アルト?」
「ああそうだ! そうだよ! 久しぶり、覚えてくれてたんだ」
アルト、彼は私の幼馴染みだ。
でももうずっと会っていなかった。少なくとも十年は会っていない。それは確かなことだ。だって、かつて私たちが離れることになった時、二人ともまだ十歳になるかならないかくらいだったのだ。
顔を見て彼だと分かったのが不思議なくらいである。
「こんな夜に何してるの?」
「……実は、婚約破棄されて」
「ええ!?」
「職場の部下の女性に奪われたの……婚約者を」
するとアルトは「話聞くよ」と言ってくれた。
それで私は彼にすべての出来事を話した。
「その会社って……僕の会社じゃない?」
「え」
「ウィルベルだっけ? その名前、聞いたことがある気がする。多分だけど。それにロッタとかいうのも」
話していく中で判明したのは、アルトがウィルベルとロッタが勤めている会社の社長であるという事実。
「僕が作った会社だよ」
「えええ!!」
「……物凄い驚き方だね」
「だって、そんな、貴方が社長になっているなんて……そんなこと、ちっとも思わなくって」
衝撃の事実に唇まで震えた。
負の意味ではないけれど。
「とにかく、その二人に罰を下すよ」
「え……」
「できるよ社長だからね」
「そ、そんな、でも……」
「それにさ。ウィルベルって人、評判あまり良くないよ? 部下に暴言を吐いたとか何とかって問題とか聞いたことあるし」
「そうだったの……知らなかった……」
その後アルトの決定によりウィルベルは会社をクビになった。
ウィルベルは職を失った。
そしてそれによってロッタからの愛も失うこととなる。
ロッタは彼が失職したことを知ると「高給取りだから好きだったのに。もうどうでもいいわ、貴方みたいな人。仕事もないなら貴方なんて所詮どこにでもいる程度の男性よ」と冷ややかに言い彼の前から去ったそうだ。
それから少ししてウィルベルは私のところへやって来た。そして平然ともう一度やり直そうと言ってくる。しかし私はそれを拒否。すると彼は激怒し殴ろうとしてきた、が、通行人のおじさんが通報してくれて殴られずに済んだ。
そうしてウィルベルは牢屋送りとなったのだった。
また、その一件によって、アルトとの関係も大きく動くこととなり。
「僕がイリーナを一生守る!」
彼はそう言ってくれて。
結果私たちは結婚への道を歩み出すこととなった。
◆
「「「おはようございます、イリーナさん!」」」
アルトの妻となった私は社長の妻として今は彼のサポートに入っている。
社員の多くは私を受け入れてくれている。
温かな人が多いので助かっている。
「イリーナさん、こちらを」
「あ、ありがとうございます」
「書類はお昼頃にお持ちしますね」
「ああいえ、私が取りに行きます。いつも持ってきていただいて申し訳ないですし……たまには自分で」
忙しい毎日だけれど充実してもいる。
ロッタは私とアルトの結婚を知った直後に退職した。
それまでにあんなことをしていた以上、さすがに、私が社長の妻として現れれば平気でそこにはいられなかったのだろう。
また、噂によれば、その後ロッタはろくな仕事に就けず社会の底辺で生きているらしい。
ウィルベルは牢屋送りとなった。
ロッタは絶望の中で生きる外ない。
まぁ、妥当なところだろう。
他人を傷つけておいて幸せになんてなれるわけがないのだ。
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