雨が降ってきた しとしとと

四季

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雨が降ってきた しとしとと

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雨が降ってきた
しとしとと
静かに
身を舐めるように洗うように
降り注ぐ滴

こんな昼下がりには
思い出すことがある
あれはあなたとの最後の日
あなたが「婚約破棄」を告げてきた
あの日の空だ
あの日もこんな風に
灰色に覆われた空がわたしたちを見下ろしていた

あの日は
涙と雨が混ざって
何が何だか分からないくらい
濡れていた
でもそれもまた一つの思い出で
今はもう
それに縛られているわたしではない

どんな雨もいつかはやむのだ

永遠はない

どんな雲もいつかは去るのだ

永遠ではない

人生もそれと同じ
すべてはそういうこと

だから見上げよう

空を

どんな時も

雨が降ってきた
しとしとと
静かに
身を舐めるように洗うように
降り注ぐ滴

けれどももうじきやむだろう

その時を心待ちにして

雨粒の音を楽しんでいる
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