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前編
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私の人生は幼い頃に決まりました。物心ついた頃には私は隣国の第一王子の婚約者とされていて、当時はまだ意味が分かりませんでしたが、後から聞いた話によれば両国が勝手に決めたことだったそうです。つまり、本人たちの意思は関係なかった。それは理解しています。
ただ、今この目の前で繰り広げられている光景には、正直唖然とするほかありません。
なんせ、私の夫となった人が、見知らぬ女と重なっているのですから。
「あの、これは一体……」
私が唇を開きかけた瞬間、女に馬乗りになっていた夫は急に慌て出します。
「待ってくれ! 違う! これは違うんだ!」
私はまだ何も言っていません。それなのにいきなり「これは違う」なんて言い出すなんて、自らの罪を自ら明かすようなもの。情けないとしか言い様がありません。
「違う? 何の話をなさっているのですか……?」
「誤解しないでくれ!」
「ですから、私はまだ何も……」
「浮気じゃない! そんなつもりじゃなかったんだ!」
私は浮気だなんて言っていません。それなのに自ら浮気でないなどと言うのですから、おかしな話です。なぜ、何も言われていないのに、そんなに慌てて言い訳しようとするのでしょうか。そのことが既に、罪の意識を持っていることを証明してしまっているではありませんか。
「これは愛なんだ! 真実の愛! 君だって分かるだろう? 僕たちの結婚は本当の結婚ではなかった、親が勝手に決めただけで……。そんな中、僕は、真実の愛に出会ってしまったんだ! 理解してくれ、ただそれだけなんだよ!」
彼の言うことが分からないわけではありません。
けれどもそれは妻となった人に向けて放つべき言葉でしょうか。
ただ、今この目の前で繰り広げられている光景には、正直唖然とするほかありません。
なんせ、私の夫となった人が、見知らぬ女と重なっているのですから。
「あの、これは一体……」
私が唇を開きかけた瞬間、女に馬乗りになっていた夫は急に慌て出します。
「待ってくれ! 違う! これは違うんだ!」
私はまだ何も言っていません。それなのにいきなり「これは違う」なんて言い出すなんて、自らの罪を自ら明かすようなもの。情けないとしか言い様がありません。
「違う? 何の話をなさっているのですか……?」
「誤解しないでくれ!」
「ですから、私はまだ何も……」
「浮気じゃない! そんなつもりじゃなかったんだ!」
私は浮気だなんて言っていません。それなのに自ら浮気でないなどと言うのですから、おかしな話です。なぜ、何も言われていないのに、そんなに慌てて言い訳しようとするのでしょうか。そのことが既に、罪の意識を持っていることを証明してしまっているではありませんか。
「これは愛なんだ! 真実の愛! 君だって分かるだろう? 僕たちの結婚は本当の結婚ではなかった、親が勝手に決めただけで……。そんな中、僕は、真実の愛に出会ってしまったんだ! 理解してくれ、ただそれだけなんだよ!」
彼の言うことが分からないわけではありません。
けれどもそれは妻となった人に向けて放つべき言葉でしょうか。
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