2 / 2
後編
しおりを挟む
ウェールストンとの関係は終わった。
餅を食べている最中ではあったけれど、私は彼の前から去った。
こんな展開になるとは思わなかったけれど、だから何か大きな悲しみがあるかと聞かれればあるとは答えないだろう。正直、彼への思い入れはそこまでない。彼に嫌われながら結婚し夫婦として生きていくくらいなら、別々の人生を歩む方が良いと思う。
◆
数日後、私はウェールストンの死を知った。
彼はあの後実は仲が良かった女性を複数呼んで皆で餅を食べる会を開催したそうだ。だが、酔っ払っていたこともあって調子に乗って大量の餅を一気食いしようとしてしまい、うっかり餅を喉に詰めてしまったらしくて。それによって落命してしまったそうだ。
よく噛んで食べましょう。
小さくして食べましょう。
そう言われていた意味がよく分かった。
◆
「昔私に一方的に婚約破棄を告げてきた彼はね、餅を喉に詰まらせて死んだのよ」
「それは恐ろしいね」
「あなたも気をつけて」
「もちろん! 一気に大量に食べるのは避けるとも!」
あれから数年が経った春、私はとある男性と結婚した。
そして今は夫婦で一つの家に住んでいる。
窓から柔らかな日差しが降り注ぐ、暖かく穏やかな家。
都市部までは距離があるが、自然に囲まれていて、ゆっくり暮らすぶんにはまったく問題ない。
私はこれからもここで過ごす。
幸せに、ね。
◆終わり◆
餅を食べている最中ではあったけれど、私は彼の前から去った。
こんな展開になるとは思わなかったけれど、だから何か大きな悲しみがあるかと聞かれればあるとは答えないだろう。正直、彼への思い入れはそこまでない。彼に嫌われながら結婚し夫婦として生きていくくらいなら、別々の人生を歩む方が良いと思う。
◆
数日後、私はウェールストンの死を知った。
彼はあの後実は仲が良かった女性を複数呼んで皆で餅を食べる会を開催したそうだ。だが、酔っ払っていたこともあって調子に乗って大量の餅を一気食いしようとしてしまい、うっかり餅を喉に詰めてしまったらしくて。それによって落命してしまったそうだ。
よく噛んで食べましょう。
小さくして食べましょう。
そう言われていた意味がよく分かった。
◆
「昔私に一方的に婚約破棄を告げてきた彼はね、餅を喉に詰まらせて死んだのよ」
「それは恐ろしいね」
「あなたも気をつけて」
「もちろん! 一気に大量に食べるのは避けるとも!」
あれから数年が経った春、私はとある男性と結婚した。
そして今は夫婦で一つの家に住んでいる。
窓から柔らかな日差しが降り注ぐ、暖かく穏やかな家。
都市部までは距離があるが、自然に囲まれていて、ゆっくり暮らすぶんにはまったく問題ない。
私はこれからもここで過ごす。
幸せに、ね。
◆終わり◆
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
記憶喪失の婚約者は私を侍女だと思ってる
きまま
恋愛
王家に仕える名門ラングフォード家の令嬢セレナは王太子サフィルと婚約を結んだばかりだった。
穏やかで優しい彼との未来を疑いもしなかった。
——あの日までは。
突如として王都を揺るがした
「王太子サフィル、重傷」の報せ。
駆けつけた医務室でセレナを待っていたのは、彼女を“知らない”婚約者の姿だった。
「輝きがない」と言って婚約破棄した元婚約者様へ、私は隣国の皇后になりました
有賀冬馬
恋愛
「君のような輝きのない女性を、妻にするわけにはいかない」――そう言って、近衛騎士カイルは私との婚約を一方的に破棄した。
私は傷つき、絶望の淵に落ちたけれど、森で出会った傷だらけの青年を助けたことが、私の人生を大きく変えることになる。
彼こそ、隣国の若き皇子、ルイス様だった。
彼の心優しさに触れ、皇后として迎え入れられた私は、見違えるほど美しく、そして強く生まれ変わる。
数年後、権力を失い、みすぼらしい姿になったカイルが、私の目の前に現れる。
「お久しぶりですわ、カイル様。私を見捨てたあなたが、今さら縋るなんて滑稽ですわね」。
今さら泣きついても遅いので、どうかお静かに。
有賀冬馬
恋愛
「平民のくせに」「トロくて邪魔だ」──そう言われ続けてきた王宮の雑用係。地味で目立たない私のことなんて、誰も気にかけなかった。
特に伯爵令嬢のルナは、私の幸せを邪魔することばかり考えていた。
けれど、ある夜、怪我をした青年を助けたことで、私の運命は大きく動き出す。
彼の正体は、なんとこの国の若き国王陛下!
「君は私の光だ」と、陛下は私を誰よりも大切にしてくれる。
私を虐げ、利用した貴族たちは、今、悔し涙を流している。
姉が私の振りして婚約者に会ってたので、罠に嵌めました。
coco
恋愛
姉は私の振りをして、婚約者を奪うつもりらしい。
以前から、私の婚約者とデートを繰り返していた姉。
今まで色んな物をあなたに奪われた…もう我慢の限界だわ!
私は姉を罠に嵌め、陥れることにした。
闇から立ち上がった私の、復讐劇が始まる─。
聖女の身代わりとして捨てられた私は、隣国の魔王閣下に拾われて溺愛される
紅葉山参
恋愛
アステリア王国の伯爵令嬢レティシアは、生まれながらに強大な魔力を持つ双子の姉・エルヴィラの「影」として生きてきた。美しい金髪と魔力を持つ姉は「聖女」として崇められ、地味な茶髪で魔力を持たないレティシアは、家族からも使用人からも蔑まれ、姉の身代わりとして汚れ仕事を押し付けられていた。
ある日、国境付近の森に強力な魔物が出現する。国王は聖女の派遣を命じるが、死を恐れたエルヴィラは、レティシアに聖女の服を着せ、身代わりとして森へ置き去りにした。 「お前のような無能が、最後に国の役に立てるのだから光栄に思いなさい」 父の冷酷な言葉を最後に、レティシアは深い森の闇に沈む。
死を覚悟した彼女の前に現れたのは、隣国・ノクティス帝国の皇帝、ヴォルデレードだった。彼は漆黒の翼を持ち、「魔王」と恐れられる存在。しかし、彼は震えるレティシアを抱き上げ、驚くほど優しい声で囁いた。 「ようやく見つけた。私の魂を繋ぎ止める、唯一の光……。もう二度と、君を離さない」
彼はレティシアが「無能」ではなく、実は姉を上回る浄化の力を、姉に吸い取られ続けていたことに気づく。帝国へと連れ帰られた彼女は、これまで受けたことのないほどの溺愛を彼から受けることになる。一方、本物の聖女(レティシア)を失ったアステリア王国は、急速に衰退を始め……。
勝手にしろと言われたので、勝手にさせていただきます
結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売
恋愛
子爵家の私は自分よりも身分の高い婚約者に、いつもいいように顎でこき使われていた。ある日、突然婚約者に呼び出されて一方的に婚約破棄を告げられてしまう。二人の婚約は家同士が決めたこと。当然受け入れられるはずもないので拒絶すると「婚約破棄は絶対する。後のことなどしるものか。お前の方で勝手にしろ」と言い切られてしまう。
いいでしょう……そこまで言うのなら、勝手にさせていただきます。
ただし、後のことはどうなっても知りませんよ?
* 他サイトでも投稿
* ショートショートです。あっさり終わります
見捨ててくれてありがとうございます。あとはご勝手に。
有賀冬馬
恋愛
「君のような女は俺の格を下げる」――そう言って、侯爵家嫡男の婚約者は、わたしを社交界で公然と捨てた。
選んだのは、華やかで高慢な伯爵令嬢。
涙に暮れるわたしを慰めてくれたのは、王国最強の騎士団副団長だった。
彼に守られ、真実の愛を知ったとき、地味で陰気だったわたしは、もういなかった。
やがて、彼は新妻の悪行によって失脚。復縁を求めて縋りつく元婚約者に、わたしは冷たく告げる。
『胸の大きさで婚約破棄する王太子を捨てたら、国の方が先に詰みました』
鷹 綾
恋愛
「女性の胸には愛と希望が詰まっている。大きい方がいいに決まっている」
――そう公言し、婚約者であるマルティナを堂々と切り捨てた王太子オスカー。
理由はただ一つ。「理想の女性像に合わない」から。
あまりにも愚かで、あまりにも軽薄。
マルティナは怒りも泣きもせず、静かに身を引くことを選ぶ。
「国内の人間を、これ以上巻き込むべきではありません」
それは諫言であり、同時に――予告だった。
彼女が去った王都では、次第に“判断できる人間”が消えていく。
調整役を失い、声の大きな者に振り回され、国政は静かに、しかし確実に崩壊へ向かっていった。
一方、王都を離れたマルティナは、名も肩書きも出さず、
「誰かに依存しない仕組み」を築き始める。
戻らない。
復縁しない。
選ばれなかった人生を、自分で選び直すために。
これは、
愚かな王太子が壊した国と、
“何も壊さずに離れた令嬢”の物語。
静かで冷静な、痛快ざまぁ×知性派ヒロイン譚。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる