餅という異国の食べ物を食べながら婚約破棄を告げてきた婚約者でしたが……。

四季

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後編

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 ウェールストンとの関係は終わった。
 餅を食べている最中ではあったけれど、私は彼の前から去った。

 こんな展開になるとは思わなかったけれど、だから何か大きな悲しみがあるかと聞かれればあるとは答えないだろう。正直、彼への思い入れはそこまでない。彼に嫌われながら結婚し夫婦として生きていくくらいなら、別々の人生を歩む方が良いと思う。


 ◆


 数日後、私はウェールストンの死を知った。

 彼はあの後実は仲が良かった女性を複数呼んで皆で餅を食べる会を開催したそうだ。だが、酔っ払っていたこともあって調子に乗って大量の餅を一気食いしようとしてしまい、うっかり餅を喉に詰めてしまったらしくて。それによって落命してしまったそうだ。

 よく噛んで食べましょう。
 小さくして食べましょう。

 そう言われていた意味がよく分かった。


 ◆


「昔私に一方的に婚約破棄を告げてきた彼はね、餅を喉に詰まらせて死んだのよ」
「それは恐ろしいね」
「あなたも気をつけて」
「もちろん! 一気に大量に食べるのは避けるとも!」

 あれから数年が経った春、私はとある男性と結婚した。

 そして今は夫婦で一つの家に住んでいる。

 窓から柔らかな日差しが降り注ぐ、暖かく穏やかな家。
 都市部までは距離があるが、自然に囲まれていて、ゆっくり暮らすぶんにはまったく問題ない。

 私はこれからもここで過ごす。

 幸せに、ね。


◆終わり◆
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