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2話「本当に酷いことを言っているのは誰?」
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わざとらしくしくしく泣くロロルレニアをガインスは強く抱き締めた。そして、涙で濡れた頬を一本の指でなぞる。火照ったようにほのかに赤らんだ頬を、まるで可愛い小動物を愛でるかのように、愛おしそうに見つめるガインス。誰の目にも明らかなほどに、彼の瞳には愛が宿っていた。
「とにかく、マリー、お前との婚約は本日をもって破棄とする」
やがてガインスはそんなことを言い放ってきた。
「浮気しておいて……よくそんなことが言えるわね」
「それ以上の問題が判明したからだろ!」
「意味が分からないわ」
「とぼけるなよ! お前は義理とはいえ妹となったロロルレニアを虐めていた。それだけで婚約破棄の理由になる! そんな性格の悪い女と結婚するほど俺は馬鹿ではない!」
馬鹿ではない? ……笑わせないでほしい。
既にすっかり騙されているではないか、目の前の嘘つきに。
それで、馬鹿ではない、なんて、よく言えたものだ。
……まぁ、彼は本気で彼女の嘘を信じているから、だからこそ自信を持ってそういうことを言えるのだろうけれど。
「そんな話、嘘よ」
「嘘じゃない」
「どうしてそんなに頑なに彼女の言葉だけを信じるの」
「ロロルレニアの言葉に嘘はないから、そうに決まってるだろ!」
「だから、そもそも、それがおかしいって言っているのよ」
「おかしいだと? ふざけるな! 俺のことも、ロロルレニアのことも、どれだけ馬鹿にすれば気が済むんだ!」
きっと何を言っても無駄なのだろう。
彼には私の言葉は届かない。
たとえどれほど努力しても。
どうしてこんなことになってしまったのだろう、なんて考えて、悲しくなる。
ここまでは順調だったはず。それなのに一瞬にしてすべてが壊れた。明るい未来は閉ざされ、希望を抱くことすらもう叶わない。
「おかしいのはお前だろ!!」
すべて、すべてが、崩れ去ってゆく……。
「ロロルレニアを虐めておいて! その罪を認めもせず! 何ならロロルレニアが嘘をついているなどと愚かな嘘をつき! さらに罪を重ねて! それでもまだ自分に非はないと言い張る! そしてしまいには俺におかしいなどと暴言を吐き! ロロルレニアの人格のみならず俺の人格まで否定する!」
ガインスは激怒していた。
「そんな女、地獄に堕ちればいい!!」
彼は気づいていない。
すぐ傍で護られているふりをしているロロルレニアがその唇にうっすらと黒い笑みを滲ませていることに。
「……酷いわ、ガインス」
「酷いのはお前だろうが! まだ分からないのかよ? 酷いのは俺じゃない! そしてロロルレニアでもない! 酷いのはお前! お前一人だけ! お前のせいで俺も彼女も傷ついている! それで俺に対して酷いなんて言うのか? まだ言うのか? だとしたらお前は異常だ!」
「それじゃ会話になっていないわよ……」
「ふざけるな! それもこっちのせりふだ! 俺の方こそ、お前みたいなどうかしている女に関わらされて困りきっている!」
その時のガインスは興奮しきってしまっていて、それゆえ、他者の発言をまともな意味で聞くことは一切なかった。
「お前は存在が迷惑の極み!! ……お前みたいなやつと一緒にいた時間が少しでもあったというだけで俺は恥ずかしい。見る目がなかった、と、今は自身を恥じている。そういう苦しみも与えているんだ、お前は!!」
きっとこれはロロルレニアが望んだ最高の展開なのだろう。
なんせ彼女は私を傷つけることが楽しくて仕方ないようだったから。
「マリー、お前は、これから償いのために生きろ」
「そもそものところが間違っているわ……」
「反省しろ! 生まれたことを! そして今日まで生き延びたことを!」
「……やめて。それ以上言わないで。どうしてそんな酷いことばかり言うの。暴言を吐いているのは私ではなくガインスじゃない。生まれたことを反省しろ、なんて……そんな言い方ないわよ」
ロロルレニアは今きっと心の中で大喜びしているのだろう。
「ま、もういい。話すことはない。マリー、お前とは永遠にさよならだ」
こうして私たちの関係は終わりを迎えたのだった。
「とにかく、マリー、お前との婚約は本日をもって破棄とする」
やがてガインスはそんなことを言い放ってきた。
「浮気しておいて……よくそんなことが言えるわね」
「それ以上の問題が判明したからだろ!」
「意味が分からないわ」
「とぼけるなよ! お前は義理とはいえ妹となったロロルレニアを虐めていた。それだけで婚約破棄の理由になる! そんな性格の悪い女と結婚するほど俺は馬鹿ではない!」
馬鹿ではない? ……笑わせないでほしい。
既にすっかり騙されているではないか、目の前の嘘つきに。
それで、馬鹿ではない、なんて、よく言えたものだ。
……まぁ、彼は本気で彼女の嘘を信じているから、だからこそ自信を持ってそういうことを言えるのだろうけれど。
「そんな話、嘘よ」
「嘘じゃない」
「どうしてそんなに頑なに彼女の言葉だけを信じるの」
「ロロルレニアの言葉に嘘はないから、そうに決まってるだろ!」
「だから、そもそも、それがおかしいって言っているのよ」
「おかしいだと? ふざけるな! 俺のことも、ロロルレニアのことも、どれだけ馬鹿にすれば気が済むんだ!」
きっと何を言っても無駄なのだろう。
彼には私の言葉は届かない。
たとえどれほど努力しても。
どうしてこんなことになってしまったのだろう、なんて考えて、悲しくなる。
ここまでは順調だったはず。それなのに一瞬にしてすべてが壊れた。明るい未来は閉ざされ、希望を抱くことすらもう叶わない。
「おかしいのはお前だろ!!」
すべて、すべてが、崩れ去ってゆく……。
「ロロルレニアを虐めておいて! その罪を認めもせず! 何ならロロルレニアが嘘をついているなどと愚かな嘘をつき! さらに罪を重ねて! それでもまだ自分に非はないと言い張る! そしてしまいには俺におかしいなどと暴言を吐き! ロロルレニアの人格のみならず俺の人格まで否定する!」
ガインスは激怒していた。
「そんな女、地獄に堕ちればいい!!」
彼は気づいていない。
すぐ傍で護られているふりをしているロロルレニアがその唇にうっすらと黒い笑みを滲ませていることに。
「……酷いわ、ガインス」
「酷いのはお前だろうが! まだ分からないのかよ? 酷いのは俺じゃない! そしてロロルレニアでもない! 酷いのはお前! お前一人だけ! お前のせいで俺も彼女も傷ついている! それで俺に対して酷いなんて言うのか? まだ言うのか? だとしたらお前は異常だ!」
「それじゃ会話になっていないわよ……」
「ふざけるな! それもこっちのせりふだ! 俺の方こそ、お前みたいなどうかしている女に関わらされて困りきっている!」
その時のガインスは興奮しきってしまっていて、それゆえ、他者の発言をまともな意味で聞くことは一切なかった。
「お前は存在が迷惑の極み!! ……お前みたいなやつと一緒にいた時間が少しでもあったというだけで俺は恥ずかしい。見る目がなかった、と、今は自身を恥じている。そういう苦しみも与えているんだ、お前は!!」
きっとこれはロロルレニアが望んだ最高の展開なのだろう。
なんせ彼女は私を傷つけることが楽しくて仕方ないようだったから。
「マリー、お前は、これから償いのために生きろ」
「そもそものところが間違っているわ……」
「反省しろ! 生まれたことを! そして今日まで生き延びたことを!」
「……やめて。それ以上言わないで。どうしてそんな酷いことばかり言うの。暴言を吐いているのは私ではなくガインスじゃない。生まれたことを反省しろ、なんて……そんな言い方ないわよ」
ロロルレニアは今きっと心の中で大喜びしているのだろう。
「ま、もういい。話すことはない。マリー、お前とは永遠にさよならだ」
こうして私たちの関係は終わりを迎えたのだった。
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