義妹に虐められていても婚約者である彼さえ味方でいてくれれば大丈夫、そう思っていたのですが……。

四季

文字の大きさ
3 / 25

3話「家を飛び出す」

しおりを挟む
 私は家を飛び出した。

 行く先なんてないけれど。
 あんな二人がいるところにはいたくなかったから。

 ……どのみちあそこには味方はいない。

 あの家は義母と義妹に支配されきっている。

 本来唯一味方となってくれる存在であるはずの父はすべて見て見ぬふり。私がどんなことをされていても彼は割って入ってきてはくれない。護ろうとする、なんて、夢のまた夢で。目の前で事が起こっていた時でさえ、父は完全に流していた。義妹らの行動に苦言を呈すことすらしてくれなかった。

 本当はもっと早くにこうするべきだったのかもしれない、なんて、今になって思った。

 あの頃は信じていた。

 婚約者ガインスだけは私の味方でいてくれる、と。
 味方でいてくれるはずだ、と。

 愚かにもそんな夢をみていた。

 だから、家のことを大事にしたくなくて、ただひたすらに耐えていた。

 いずれ終わりは来るのだからあと少しだけ頑張ろう、そんな風に思っていたのだ。

 ……ああ、私、とことん馬鹿だったな。

 信じても何の意味もないものを信じていた。
 最も縋るべきではないものに縋ろうとしていた。

 でも結局すべてが敵だった。

 信じるべきではなかったのだ、誰も。最初から。そうすれば裏切られた気になることはなかった。期待するから、信じるから、裏切られるだけで。最初から何もなければ、相手が心ないことをしてきたところでどうということはない。ああやっぱり、と思うだけで済む。

 過ちはそこにあったのだろう。

「……雨」

 やがて雨が降り出した。

 冷たい雫が髪に触れる。

 色々考えていたから気づいてはいなかったけれど、いつの間にか空は厚い雲に覆われていた。

「泣きたいのは私の方よ」

 灰色の空が泣いているよう。

 だから敢えて一言呟いてやった。

 誰も私の言葉を聞いてはくれないけれど、空に対して呟くくらいは自由だろう。その程度のことを責める者はさすがにいないはずだ。なんせ、空への言葉でしかないのだから。誰に対しても発言でもないのだから。相手のいない言葉にまで目を向けてあれこれ言うような人間はさすがにいないはず。

 ……ある意味、今は、どこまでも自由なのかもしれない。

 そんなことを考えながら雨の中を歩いていると。

「あの、すみません」

 背後から声をかけられた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

義妹のせいで、婚約した相手に会う前にすっかり嫌われて婚約が白紙になったのになぜか私のことを探し回っていたようです

珠宮さくら
恋愛
サヴァスティンカ・メテリアは、ルーニア国の伯爵家に生まれた。母を亡くし、父は何を思ったのか再婚した。その再婚相手の連れ子は、義母と一緒で酷かった。いや、義母よりうんと酷かったかも知れない。 そんな義母と義妹によって、せっかく伯爵家に婿入りしてくれることになった子息に会う前にサヴァスティンカは嫌われることになり、婚約も白紙になってしまうのだが、義妹はその子息の兄と婚約することになったようで、義母と一緒になって大喜びしていた 。

妹のことを長年、放置していた両親があっさりと勘当したことには理由があったようですが、両親の思惑とは違う方に進んだようです

珠宮さくら
恋愛
シェイラは、妹のわがままに振り回される日々を送っていた。そんな妹を長年、放置していた両親があっさりと妹を勘当したことを不思議に思っていたら、ちゃんと理由があったようだ。 ※全3話。

他人の婚約者を誘惑せずにはいられない令嬢に目をつけられましたが、私の婚約者を馬鹿にし過ぎだと思います

珠宮さくら
恋愛
ニヴェス・カスティリオーネは婚約者ができたのだが、あまり嬉しくない状況で婚約することになった。 最初は、ニヴェスの妹との婚約者にどうかと言う話だったのだ。その子息が、ニヴェスより年下で妹との方が歳が近いからだった。 それなのに妹はある理由で婚約したくないと言っていて、それをフォローしたニヴェスが、その子息に気に入られて婚約することになったのだが……。

婚約者とその幼なじみがいい雰囲気すぎることに不安を覚えていましたが、誤解が解けたあとで、その立ち位置にいたのは私でした

珠宮さくら
恋愛
クレメンティアは、婚約者とその幼なじみの雰囲気が良すぎることに不安を覚えていた。 そんな時に幼なじみから、婚約破棄したがっていると聞かされてしまい……。 ※全4話。

聖女になることを望んでいない私を聖女にしたのは、義妹の八つ当たりでした。それを手本にしてはいけないことをわかってほしいのですが……

珠宮さくら
恋愛
アディラ・グジャラは、ひょんなことから聖女となった。聖女になりたがっていたのは、彼女の義妹であり、娘こそ聖女だと義母も父も、周りの誰もが思ってきた。それを応援する気はアディラにはなかったが、邪魔する気もなかった。 それなのに義妹は自分が聖女ではないとわかって、アディラに八つ当たりをしたことで、アディラが聖女となってしまうのだが、そこからが問題だらけだった。 最も聖女にするには相応しくない者が選ばれたかのように世界が、混乱と混沌の世界にどんどん向かってしまったのだ。 だが、それが結果的にはよかったようだ。

婚約者の私には何も買ってはくれないのに妹に好きな物を買い与えるのは酷すぎます。婚約破棄になって清々しているので付き纏わないで

珠宮さくら
恋愛
ゼフィリーヌは、婚約者とその妹に辟易していた。どこに出掛けるにも妹が着いて来ては兄に物を強請るのだ。なのにわがままを言って、婚約者に好きな物を買わせていると思われてしまっていて……。 ※全5話。

義妹に婚約者を取られて、今日が最後になると覚悟を決めていたのですが、どうやら最後になったのは私ではなかったようです

珠宮さくら
恋愛
フェリシティーは、父や義母、義妹に虐げられながら過ごしていた。 それも、今日で最後になると覚悟を決めていたのだが、どうやら最後になったのはフェリシティーではなかったようだ。 ※全4話。

とある令嬢の勘違いに巻き込まれて、想いを寄せていた子息と婚約を解消することになったのですが、そこにも勘違いが潜んでいたようです

珠宮さくら
恋愛
ジュリア・レオミュールは、想いを寄せている子息と婚約したことを両親に聞いたはずが、その子息と婚約したと触れ回っている令嬢がいて混乱することになった。 令嬢の勘違いだと誰もが思っていたが、その勘違いの始まりが最近ではなかったことに気づいたのは、ジュリアだけだった。

処理中です...