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3話「家を飛び出す」
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私は家を飛び出した。
行く先なんてないけれど。
あんな二人がいるところにはいたくなかったから。
……どのみちあそこには味方はいない。
あの家は義母と義妹に支配されきっている。
本来唯一味方となってくれる存在であるはずの父はすべて見て見ぬふり。私がどんなことをされていても彼は割って入ってきてはくれない。護ろうとする、なんて、夢のまた夢で。目の前で事が起こっていた時でさえ、父は完全に流していた。義妹らの行動に苦言を呈すことすらしてくれなかった。
本当はもっと早くにこうするべきだったのかもしれない、なんて、今になって思った。
あの頃は信じていた。
婚約者ガインスだけは私の味方でいてくれる、と。
味方でいてくれるはずだ、と。
愚かにもそんな夢をみていた。
だから、家のことを大事にしたくなくて、ただひたすらに耐えていた。
いずれ終わりは来るのだからあと少しだけ頑張ろう、そんな風に思っていたのだ。
……ああ、私、とことん馬鹿だったな。
信じても何の意味もないものを信じていた。
最も縋るべきではないものに縋ろうとしていた。
でも結局すべてが敵だった。
信じるべきではなかったのだ、誰も。最初から。そうすれば裏切られた気になることはなかった。期待するから、信じるから、裏切られるだけで。最初から何もなければ、相手が心ないことをしてきたところでどうということはない。ああやっぱり、と思うだけで済む。
過ちはそこにあったのだろう。
「……雨」
やがて雨が降り出した。
冷たい雫が髪に触れる。
色々考えていたから気づいてはいなかったけれど、いつの間にか空は厚い雲に覆われていた。
「泣きたいのは私の方よ」
灰色の空が泣いているよう。
だから敢えて一言呟いてやった。
誰も私の言葉を聞いてはくれないけれど、空に対して呟くくらいは自由だろう。その程度のことを責める者はさすがにいないはずだ。なんせ、空への言葉でしかないのだから。誰に対しても発言でもないのだから。相手のいない言葉にまで目を向けてあれこれ言うような人間はさすがにいないはず。
……ある意味、今は、どこまでも自由なのかもしれない。
そんなことを考えながら雨の中を歩いていると。
「あの、すみません」
背後から声をかけられた。
行く先なんてないけれど。
あんな二人がいるところにはいたくなかったから。
……どのみちあそこには味方はいない。
あの家は義母と義妹に支配されきっている。
本来唯一味方となってくれる存在であるはずの父はすべて見て見ぬふり。私がどんなことをされていても彼は割って入ってきてはくれない。護ろうとする、なんて、夢のまた夢で。目の前で事が起こっていた時でさえ、父は完全に流していた。義妹らの行動に苦言を呈すことすらしてくれなかった。
本当はもっと早くにこうするべきだったのかもしれない、なんて、今になって思った。
あの頃は信じていた。
婚約者ガインスだけは私の味方でいてくれる、と。
味方でいてくれるはずだ、と。
愚かにもそんな夢をみていた。
だから、家のことを大事にしたくなくて、ただひたすらに耐えていた。
いずれ終わりは来るのだからあと少しだけ頑張ろう、そんな風に思っていたのだ。
……ああ、私、とことん馬鹿だったな。
信じても何の意味もないものを信じていた。
最も縋るべきではないものに縋ろうとしていた。
でも結局すべてが敵だった。
信じるべきではなかったのだ、誰も。最初から。そうすれば裏切られた気になることはなかった。期待するから、信じるから、裏切られるだけで。最初から何もなければ、相手が心ないことをしてきたところでどうということはない。ああやっぱり、と思うだけで済む。
過ちはそこにあったのだろう。
「……雨」
やがて雨が降り出した。
冷たい雫が髪に触れる。
色々考えていたから気づいてはいなかったけれど、いつの間にか空は厚い雲に覆われていた。
「泣きたいのは私の方よ」
灰色の空が泣いているよう。
だから敢えて一言呟いてやった。
誰も私の言葉を聞いてはくれないけれど、空に対して呟くくらいは自由だろう。その程度のことを責める者はさすがにいないはずだ。なんせ、空への言葉でしかないのだから。誰に対しても発言でもないのだから。相手のいない言葉にまで目を向けてあれこれ言うような人間はさすがにいないはず。
……ある意味、今は、どこまでも自由なのかもしれない。
そんなことを考えながら雨の中を歩いていると。
「あの、すみません」
背後から声をかけられた。
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