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後編
しおりを挟む「では、解放していただけるのですね?」
「ああもう用済みだ」
用済み、なんてよく言えるわね。私を何だと思っているの。……いいえ、私だからではない。私でなくても同じこと、他人をこんな風に扱って必要なくなった途端ごみのように捨てられるなんて。どうかしている、失礼だとしてもそう思ってしまう。
「じゃあな、ばいばい」
彼は最後そう言っただけだった。
こうして私たちの関係は呆気なく砕け散ってしまったのであった。
◆
あの後モルトネーギルは狙っていた女性にふられたそうだ。
何でも他の女性たちとの関係性を知られてしまったそうで、それで、信頼できないと言われ切り捨てられたのだそう。
……ま、自業自得ね。
そしてその直後に奇病を貰ってしまい、それによって容姿が大きく変化してしまった彼は次第に誰からも愛されなくなっていったそうだ。
今ではほぼすべての女性から拒否され無視されているらしい。
もしもモルトネーギルが誠実な男であったなら、きっと、仮に病で容姿が変化したとしても皆気を遣ってくれたことだろう。心配してくれる人や容姿なんて関係ないと言ってくれる人もいたに違いない。でもそれがなかった、それはつまり、彼は誰に対しても身勝手だったということだ。人望がなかったのだろう。だからこそ病による容姿の変化であっても皆に逃げられるという結末を迎えたのだ。
……そうとしか思えない。
ちなみに私はというと、あれからしばらく近所の本屋で働いた後に資産家の青年と結婚した。
既に第一子も誕生。
今は家族三人で穏やかに生活できている。
晴れの日には太陽光を浴びたり、雨の日には家の中で窓越しに降雨を眺めたり、休日には三人揃ってのんびりと寝転がったり――刺激的なことはないけれど、それでも毎日はとても楽しい。
◆終わり◆
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