泣いている女性を家へ連れ帰り励ましたのですが、翌朝彼女は消えていました。~恩返しは唐突に~

四季

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前編

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 その夕暮れ、家からそう離れていない山道を歩いていると。

「あの……大丈夫ですか?」

 砂利道に座り込んで泣いている女性がいて、どうしてかほぼ無意識のうちに声をかけてしまっていた。

 小さな身体、美しい金の絹のような髪、可憐な目鼻立ち――愛らしい、少女のような女性だ。

「なぜ泣いているのですか?」
「……ぅ、ううっ」

 泣きながらこちらを見て、けれども言葉を発せずにいる彼女。
 きっと辛いことや悲しいことがあったのだろう。
 こんな愛らしい女性を道に放置しているわけにはいかない、と思って。

「よければうちへ来ませんか?」

 気づけば私は誘っていた。

 こんなのまるで弱っているところに付け込む怪しい人みたいではないか――そう思い不安になったけれど、意外にも、彼女はこくんと頷いた。

「良かった! ではうちへ来てください! ええと、立てます?」

 すると彼女はまたこくんと頷いた。


 ◆


 道で遭遇し連れ帰った女性は、名をルミーといった。

 彼女は私が淹れたハーブティーをちみちみ飲んでいる。

「あの……これ、美味しい、です……」
「そうですか? なら良かった!」
「お茶……これ、は……何という、ハーブティー、ですか……?」
「ああそれは近所の茶葉屋で日替わり人気商品として出ているブレンドノーマルですよ!」
「そ、そう……ですか……」

 ルミーは大人しい人だった。

 で、何があったのかというと、フールルという婚約者から終わりを告げられたそうだ。
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