泣いている女性を家へ連れ帰り励ましたのですが、翌朝彼女は消えていました。~恩返しは唐突に~

四季

文字の大きさ
2 / 2

後編

しおりを挟む

 裏で他の女性と深く付き合っていたルミーの婚約者は、ルミーにそのことについて言われると急に逆ギレして婚約の破棄を宣言したらしい。

「本当に、話をしたい、だけだったんです……怒らせる、気、なんて……ちっとも、なくて……ただ話を、聞いて、ほしかっただけで……」

 婚約者の話をするたびルミーはその大きな瞳から涙の粒をこぼす。
 その姿はあまりに可哀想で。
 そんな彼女を見ていると、つい先ほどまで赤の他人だった私までも同じように悲しくなってくる。

「そうですよね、それは辛かったですね……」
「はい……」

 その日ルミーは私の家に泊まることになった。

 一応同居している両親にも良いかどうか聞いておいたが、良い返事を貰えた。

「おやすみなさい、ルミーさん」
「はい……おやすみ、なさい……」

 思えば、誰かと隣り合って眠るのは久々だ。


 ◆


 翌朝、私が目を覚ますと、ルミーはいなくなっていた。

 どこか家の中の別のところへ行ったのかもと思い探してみたけれど見つからず――その後気づいた、枕もとに置き手紙が置かれていたことに。

『昨日は本当にありがとうございました、おかげで救われました。優しいお方、感謝します。私はもう大丈夫です、進めます。玄関にお礼の品を置いておきますね。 ルミー』

 そんな手紙だった。

 驚いて玄関へ行ってみると――。

「ええっ、何これ!」

 そこには、大量の金塊とフルーツが置かれていた。

「どうしたの――って、えええ!!」

 続いてそれを発見した母もかなり派手に驚いていた。

 私とその家族は、金塊を売ることで、莫大な資産を築くことができた。

 もう生活に困ることはない。

 そしてこれはその後流れてきた噂によって知った話だが、フールルという男性は愛し合っていた女性が記憶喪失になってしまったそうで、記憶を失った女性から「馴れ馴れしくしないで、気持ち悪い」というようなことを数時間にわたって心なく言われ続けたために心が壊れてしまい――今は自宅に引きこもることしかできなくなっているそうだ。

 ルミーは幸せになれただろうか?

 いや、きっと、なれているはず。

 彼女のことは詳しくは知らないけれど、悪そうな人ではなかった。容姿も中身も美しい人だった。

 だからきっと幸せになれるはずだ。


◆終わり◆
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

明日結婚式でした。しかし私は見てしまったのです――非常に残念な光景を。……ではさようなら、婚約は破棄です。

四季
恋愛
明日結婚式でした。しかし私は見てしまったのです――非常に残念な光景を。……ではさようなら、婚約は破棄です。

婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました

kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」 王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。

【完結】姉は聖女? ええ、でも私は白魔導士なので支援するぐらいしか取り柄がありません。

猫屋敷 むぎ
ファンタジー
誰もが憧れる勇者と最強の騎士が恋したのは聖女。それは私ではなく、姉でした。 復活した魔王に侯爵領を奪われ没落した私たち姉妹。そして、誰からも愛される姉アリシアは神の祝福を受け聖女となり、私セレナは支援魔法しか取り柄のない白魔導士のまま。 やがてヴァルミエール国王の王命により結成された勇者パーティは、 勇者、騎士、聖女、エルフの弓使い――そして“おまけ”の私。 過去の恋、未来の恋、政略婚に揺れ動く姉を見つめながら、ようやく私の役割を自覚し始めた頃――。 魔王城へと北上する魔王討伐軍と共に歩む勇者パーティは、 四人の魔将との邂逅、秘められた真実、そしてそれぞれの試練を迎え――。 輝く三人の恋と友情を“すぐ隣で見つめるだけ”の「聖女の妹」でしかなかった私。 けれど魔王討伐の旅路の中で、“仲間を支えるとは何か”に気付き、 やがて――“本当の自分”を見つけていく――。 そんな、ちょっぴり切ない恋と友情と姉妹愛、そして私の成長の物語です。 ※本作の章構成:  第一章:アカデミー&聖女覚醒編  第二章:勇者パーティ結成&魔王討伐軍北上編  第三章:帰郷&魔将・魔王決戦編 ※「小説家になろう」にも掲載(異世界転生・恋愛12位) ※ アルファポリス完結ファンタジー8位。応援ありがとうございます。

妻よりも幼馴染が大事? なら、家と慰謝料はいただきます

ぱんだ
恋愛
公爵令嬢セリーヌは、隣国の王子ブラッドと政略結婚を果たし、幼い娘クロエを授かる。結婚後は夫の王領の離宮で暮らし、義王家とも程よい関係を保ち、領民に親しまれながら穏やかな日々を送っていた。 しかし数ヶ月前、ブラッドの幼馴染である伯爵令嬢エミリーが離縁され、娘アリスを連れて実家に戻ってきた。元は豊かな家柄だが、母子は生活に困っていた。 ブラッドは「昔から家族同然だ」として、エミリー母子を城に招き、衣装や馬車を手配し、催しにも同席させ、クロエとアリスを遊ばせるように勧めた。 セリーヌは王太子妃として堪えようとしたが、だんだんと不満が高まる。

お前は要らない、ですか。そうですか、分かりました。では私は去りますね。あ、私、こう見えても人気があるので、次の相手もすぐに見つかりますよ。

四季
恋愛
お前は要らない、ですか。 そうですか、分かりました。 では私は去りますね。

【完結】仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが

ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。 定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──

もう好きと思えない? ならおしまいにしましょう。あ、一応言っておきますけど。後からやり直したいとか言っても……無駄ですからね?

四季
恋愛
もう好きと思えない? ならおしまいにしましょう。あ、一応言っておきますけど。後からやり直したいとか言っても……無駄ですからね?

処理中です...