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前編
しおりを挟む「婚約破棄された……」
婚約者アンドリューから散々悪いところを言われたうえ婚約破棄宣言までされてしまった日の夜、私は、異性の幼馴染みティティに話を聞いてもらうことにした。
「え!? ちょ、どういうこと、婚約破棄!?」
「うん……」
「ええっ……そんなことって……」
「しかも悪口をたくさん言われてしまって、さすがに傷ついたわ」
「そ、そっか」
ティティとはもうしばらく会っていなかった。
昔はよく一緒に遊んだ仲だけれど、ある程度の年齢になってからはほぼ関わりはなかったのだ。
「話、聞いてくれない……?」
「いいけど」
「本当!?」
「うん。取り敢えず入って。親もいるけど大丈夫だから」
「ありがとう……」
これがティティとの関わりの再開となった。
婚約者がいる身では幼馴染みとはいえ異性とは会いづらい。でも今はもう一人だから。異性とでも会えるし異性と話したり関わったりしていてもさほど大きな問題はないだろう。
幸い、相手もまだ一人のようだし。
「――そっか、それは大変だったね」
「さすがに酷すぎるわ……」
「でもさ、振り返ってばかりいても無意味なんじゃないの?」
「どうしてそんなこと言うのよ」
「だってその人は帰ってこないでしょ?」
「それは……まぁ、そうだけれど……」
しゅんとしていると、ティティは明るい笑みを浮かべる。
懐かしい笑顔だ。
枯れてしまった心にしみる。
「だから! 前向きなことを考えるっていうのはどうかな!」
「……何なの?」
「アンドリューさんのことはもう忘れて、これからしばらくは僕と遊ぼうよ!」
飛び出てくる、まさかの提案。
「え……で、でも、迷惑でしょう今さら」
困惑するけれど。
「ううん、そんなことないよ」
「本当に?」
「僕だって暇だしね」
「そう……じゃあ、まぁ、そうしましょうか。迷惑でないなら」
彼は常に笑顔で。
「うんうん! じゃあ早速、どこか行く予定決めよ!」
また、とても前向きであった。
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