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前編
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私には一年ほど前に婚約した婚約者がいるのだが。
「お前! ほんと使えないな!」
「そうねぇ、どうしようもないわぁ」
その婚約者アイドライは母親と共に私をこき使い虐めてくる。
「フェリーさん、貴女、本当にどうしようもないわねぇ。うちの息子と結婚するというのに、それでやっていけると思っているのかしら」
アイドライはいつも私を見下すような言葉を投げつけてくる。
そして彼の母親は私を指導するような嫌みを言ってくるのである。
「だとしたら甘いわよ。その程度の覚悟でアイドライと一緒に生きようだなんて。ねぇ? アイドライ、そうよね?」
「ああ」
私を虐める時、なぜか二人の息はぴったり。
親子だから、と言えばそれまでだろう。母息子と言っても親子だ。ただ、それについて考えると、どうしても何とも言えない気分になってしまう。そんな時に意気投合しなくても、と思ってしまうのだ。
どちらか一人だけにでも善良な心があれば少しは救われるのに。
「ちょっと! 聞いているの!? フェリーさん!!」
「はい、聞いております……」
特に、アイドライの母親のこうやって大きな声で圧をかけてくるところは嫌いだ。
「何よその顔、反抗的ね。我が家に嫁として来るのでしょう? ならば従うのが普通じゃないの」
「申し訳ありません……」
「ふん、いいわ。じゃ、今朝言った通り、すべての家事をしてもらうから。いいわね? できるわね? 全部言いなさい!」
「家の前の清掃、家の中の掃除、食器をもう一度洗う、花瓶の掃除、お茶の在庫確認、納屋の掃除、ベッドメイキングですよね」
「そうよ。じゃ、すぐにやってきて。一時間以内にね!!」
呆れた話だ、婚約者を家に閉じ込めて家事をすべてやらせるなんて。
だが、そんな人と婚約してしまった私にも非はある。
だから仕方ない、そう思って一つずつやっていくしかない。
――そんな風に思っていたのだが、ある日。
私は知ってしまった。
アイドライとその母親が違法薬物の売買に関与していることを。
これはチャンスでは!? と思った私は家事の合間にこそこそとその証拠となるものを集め、やがて、ある春の日の朝脱走した。
「お前! ほんと使えないな!」
「そうねぇ、どうしようもないわぁ」
その婚約者アイドライは母親と共に私をこき使い虐めてくる。
「フェリーさん、貴女、本当にどうしようもないわねぇ。うちの息子と結婚するというのに、それでやっていけると思っているのかしら」
アイドライはいつも私を見下すような言葉を投げつけてくる。
そして彼の母親は私を指導するような嫌みを言ってくるのである。
「だとしたら甘いわよ。その程度の覚悟でアイドライと一緒に生きようだなんて。ねぇ? アイドライ、そうよね?」
「ああ」
私を虐める時、なぜか二人の息はぴったり。
親子だから、と言えばそれまでだろう。母息子と言っても親子だ。ただ、それについて考えると、どうしても何とも言えない気分になってしまう。そんな時に意気投合しなくても、と思ってしまうのだ。
どちらか一人だけにでも善良な心があれば少しは救われるのに。
「ちょっと! 聞いているの!? フェリーさん!!」
「はい、聞いております……」
特に、アイドライの母親のこうやって大きな声で圧をかけてくるところは嫌いだ。
「何よその顔、反抗的ね。我が家に嫁として来るのでしょう? ならば従うのが普通じゃないの」
「申し訳ありません……」
「ふん、いいわ。じゃ、今朝言った通り、すべての家事をしてもらうから。いいわね? できるわね? 全部言いなさい!」
「家の前の清掃、家の中の掃除、食器をもう一度洗う、花瓶の掃除、お茶の在庫確認、納屋の掃除、ベッドメイキングですよね」
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だから仕方ない、そう思って一つずつやっていくしかない。
――そんな風に思っていたのだが、ある日。
私は知ってしまった。
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