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3話

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「あ! また来てくださったのですね、エンビフォウ様」
「様とか付けなくていいよ」
「え……で、でも、あなたは貴い方ですので……」
「いいんです、普通に接してくだされば」
「けれど……王子であるあなたに無礼なことを告げるというのは、ちょっと……」
「気軽な感じで話してくださいね」
「は、はい。そのように努力します」
「ああいや、無理のない範囲で、で大丈夫ですよ」

 そしてやがて、エンビフォウよりプロポーズを受ける。

 私はそれを受け入れた。

 彼と共に生きる道を選んだ。


 ◆


 妹はあの後発狂した。

 風邪をこじらせて長期間家で休んでいる間に婚約者エドランに浮気されたうえ、乗り換えようと考えた彼から回復後間もなく婚約破棄を告げられてしまい、それによって妹は壊れてしまったのであった。

 また、女としてずっと下だと思っていた姉である私が王子に見初められ結婚したということも、彼女の精神を壊す大きな原因となったようで。そのことを親から責められたこともあった。が、責められる筋合いはない、とはっきり言ってやった。

 だが実際そうだろう?
 ただ選ばれただけなのにどうして責められなければならないのか。

 おかしな話ではないか、そんなの。

 けれどももうどうでもいいことだ。
 だって私は家から出ていくから。
 たとえ親から嫌みを言われたって、今はもう怖くはないし畏縮なんてしない。


 ◆


 あれから数年、私は今も王子エンビフォウと仲良く暮らしている。

 城へ来てからはもうずっと実家へは戻っていない。
 もうあそこへ帰る気はないのだ。
 だってあそこには良い思い出がない、だからそんなところへ帰りたいとはちっとも思わないのである。

 ただ、耳にした噂によれば。
 妹は壊れ果てて何もできない状態にまでなってしまい、親はその介護疲れでやたらと喧嘩するようになってしまいやがて離婚したそうだ。
 で、離婚した二人は今、面倒臭い存在となった妹を押し付け合い擦り付け合いしているのだとか。


◆終わり◆
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