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3話
しおりを挟む「さよならミレイ。もう二度と会うことはない」
彼が私にかけた最後の言葉はそんなものだった。
あまりにも一方的で、あまりにも身勝手な、そんな婚約破棄。でも私にはそれに対して怒るような気力はなくて。もやもや感を胸の内に携えつつも静かにその場から離れた。この状況で彼に投げつけられる言葉など、その時の私には思いつけなかったのだ。
◆
「ああミレイ様、とてもお美しいお方ですわ」
「愛していますミレイ様!」
「我が国を守ってくださる聖女にして女神、どんな日も素晴らしい!」
あれから数年、私は突如覚醒し『国を護る聖女の力』なる特殊な力を手に入れた。
そして今、王子フェンリルと結婚し、王城にて穏やかに暮らせている。
「ミレイ、今日もとても綺麗だね」
「フェンリル王子……ありがとうございます、お気遣いを」
「気遣いとかじゃないよ」
「え」
「本心からの言葉だよ」
フェンリルはいつだって私を褒めてくれるし大切に扱ってくれる。そんな彼のことが私は大好きだ。彼が私へ真っ直ぐな愛を向けてくれるからこそ、私もまた迷いなく彼へ愛を向けられるのである。
ちなみにエジックはというと。
あの後恋人との川遊び中にすっぽんに似たモンスターであるスッポポロスに吸い付かれ、生命力をすべて吸いきられてしまい、その場で死亡したそうだ。
可愛そうなエジック。
災難、不幸なエジック。
でもそれも彼の人生。
だから私がそれに対してあれこれ思う必要はない。
もう縁は切れたのだ、同情など不要である。
私はこれから手に入れられたものを大事に抱えながら歩いていく。
愛する人のため、そして、国のため。
この国を皆が笑える世界にしたいからこそ、毎日私にできることを着実にやっていくつもりだ。
◆終わり◆
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