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3話
しおりを挟む「言っていた彼女にプロポーズしたのだが拒否されたんだ。それで君のところへ戻ることにした」
「……はい?」
「どうせ相手探しに困っているんだろう? 俺が結婚してやる」
「いえ、結構です」
「何だと?」
「必要ありません」
「何を言い出すんだ!」
眉尻を吊り上げるフィーダス。
「私にはもう良い感じの相手がいますので」
「嘘をつくな!」
「いえ、嘘ではありません」
「何だと!? じゃあ誰なんだ!!」
「それはまだ言えませんが……じきに分かるかと」
「はっ、言えないということは嘘だな」
「近く判明します」
「ふん! くだらん嘘は要らん! いいから俺と結婚しろ」
フィーダスはあまりにもしつこいので。
「通報しますよ」
切り札を出す。
「これ以上近づかないでください」
◆
数年後。
「アイリスさん、ここへ来るのは久しぶりですか?」
「はい、王城が長かったので」
「田舎へ帰るのはきっと感慨深いでしょうね」
「……アッシュさんとだからこそ、です」
私とアッシュは結婚した。
そして今も穏やかに仲良く一緒に暮らせている。
王子の妻になるなんて欠片ほども思っていなかったけれど、いざなってみれば案外すんなりと馴染めた。
無論、アッシュの協力あってこそだが。
私は今とても幸せ。
彼とならきっといつまでも幸福の中にあれる、そう思う。
ちなみにフィーダスはというと、あの後惚れた女性につきまとい結婚を迫るといった迷惑行為を繰り返しそのことで悪い意味で有名になってしまったそう。
そんな状態だから誰からも相手にされず。
結局彼は一人のままだそうだ。
本人は「女は見る目がない!」と憤慨していると聞くけれど、それに関しては女のせいではないと思う。
むしろ女性たちはまともだ。
おかしな行動を繰り返す者に近づこうとなんて普通はしないものだから。
ま、精々孤独に生きていってくれ。
◆終わり◆
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