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4話
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あれから二年半が経ち、私は無事結婚できた。
エーベルガートとの婚約破棄直後に行きつけの店にて客と店員として知り合った私たちは、毎日言葉を交わすようになり、やがて個人的にも会って喋ったり遊んだりするようになっていった。
そうして関係は進展。
やがて彼からプロポーズされ、結婚することとなった。
ちなみに夫となった彼は有名資産家の息子だった。
店員として働いていたのは社会勉強の一貫であって、あくまで目的は経験を積むことだけであったようだ。
つまり、経済的な問題は一切ないのである。
そんな彼と巡り会えて親しくなれて選んでもらえたことは信じられないほどの幸運であった。
ちなみにエーベルガートとティーナはというと一度婚約するも幸せにはなれなかったようだ。
というのも、いざ結婚に向けて動き出した頃に喧嘩が多発するようになってしまったそうで、そのあたりから関係が悪化していってしまい、やがて二人の関係は壊れてしまったのだそう。
しまいには会うたびお互いを睨み憎むほどになって。
そんな状態ではどうしようもないので、親の仲介もあり、最終的に婚約は破棄ということになったのだそうだ。
ティーナはエーベルガートに「股の緩いだらしない女」という噂を流されてしまい社会的に死んだそう。
エーベルガートはティーナに「すぐに怒るし暴力に訴える最低男」と嘘を流され近所の人たちから冷ややかな目で見られるようになってしまったそう。
――結局二人には幸せな未来などなかった。
いや、幸せどころか。
穏やかな日常すら二人は失ってしまったのだ。
でもそうであるべきだと私は思う。
だって誰かの犠牲の上に幸せを築くなんておかしな話ではないか。
そんなやり方で幸せになれるのならこの世界は地獄みたいなものだ。
そんなことできるわけがない、起こるわけがない。成り立つわけがないのだ、そんな方法で無理矢理作られた幸福など。たとえ一瞬は幸福に見えたとしても、それは所詮幻。束の間の夢、幻想でしかない。罪なき者を傷つけてまで作った未来など良いものであるわけがないのだ。
◆終わり◆
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