とろけるような口づけで

四季

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とろけるような口づけで


とろけるような口づけで
いつも目を覚ましていた
懐かしい景色
そこにはいつだって貴方が
そっと寄り添って
柔らかく微笑んでいる
貴方の肌の温もりを
今も時折思い出すほど

「愛してる」

その言葉が口から出るたびに
この胸は貴方に惹かれていって
単純だと
馬鹿げていると
そう分かっていながらも
深く沈みゆく
貴方という海に
そうやって私は貴方に惚れていった

貴方と共にあれば
何もかもが手に入る
満ち足りた心で
寄り添い合える幸せは確かに

「婚約、破棄するから」

いつだったか
貴方は冷たくそう言った
突き放すように
心なく
貴方はそう言って私を捨てた

あの頃は泣いてばかりだった
何度も消えてしまおうと
そう思ったことすらあって
生きている意味を見出せないほどに
心が絞られて
紅いものが溢れ出しそう

貴方が二度と私を忘れられないよう
溢れた紅を塗った唇で
最後に一度口づけしようか
貴方の肌に紅を遺して
消えてしまおうかなんて
考えたほど

それでも今はもう
死を望みはしない
生きている限り明日はあると
そう信じ歩む

すべてはいずれ過去となり
徐々に遠ざかる
光も闇もそれ以外の全部も
そうよ
過去という海に沈みゆく

囚われはしないわ

「さようなら、貴方」

とろけるような口づけで
いつも目を覚ましていた
懐かしい景色
そこにはいつだって貴方が
そっと寄り添って
柔らかく微笑んでいる
貴方の肌の温もりを
今も時折思い出すほど
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