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前編
しおりを挟む二つ年上の婚約者モルトルハーネスが浮気した。
その日私は街へ出掛けていたのだが、そこで偶然見てしまったのだ――彼が子猫のような女性と腕を絡め合いながら凄まじく近い距離感で歩いているところを。
そして今。
私とその親、彼とその両親、そして女性――合計七人にて話し合いの場が設けられている。
「このたびはうちの馬鹿息子が迷惑をかけて申し訳ない」
そう謝罪するのはモルトルハーネスの父親だ。
「婚約者がいる身で他の女と繁華街をいちゃつきつつ歩くなど、男として絶対に許されない行為。よって謝罪します」
モルトルハーネスと相手女性は悪いことはしていないとでも言いたげな顔をしているけれど、それとは対照的にモルトルハーネスの両親は申し訳なさを感じてくれている様子だ。
「ごめんなさいね、可哀想なことをしてしまって……うちの息子が、申し訳ありませんでした」
彼の母親も謝罪してくれた。
「ということで、婚約は破棄とさせてもらいますので」
父がそう言えば。
「仕方ないことだと思っている。これは明らかにモルトルハーネスが悪い、馬鹿だ。ですから受け入れることとします」
「わたしも夫と同じ思いです」
モルトルハーネスの両親はすんなりと終わりを受け入れた。
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