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3話「両親の本心」

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 その日の晩、少し水を飲みたくなって自室から出た私は、両親が私について話しているところを見てしまう。

「あの長女、やっと出ていきそうだな」
「そうね、鬱陶しかったから嬉しいわ」

 あぁ、そんなことを思っていたんだ……。

 怒りも悲しみも胸の内にしまっておく。

 でも……辛いな、ちょっと。


 ◆


 それからすぐに私は家を出た。

 両親は笑顔で見送ってくれたけれど、正直、嬉しさなんてまったくなかった。
 だって私はもう二人の本心を知ってしまっている。
 だから笑顔には騙されないし、見送ってもらえた嬉しさも取り戻すことなんてできない。

 ただ、良いこともある。

 これからは私の人生。
 私のために生きてゆける。

 きっと辛いこともあるだろう。

 でも、妹に奪われるだけの人生からは逃れられるのだ。

 良いこともあるのだから、前を向いて生きようと思う。


 ◆


 私が都市部に移り住んでから、早いものでもう数年が経つ。

 私は今、一人の青年と同居している。

 二人で過ごすには若干狭い部屋だが、彼といられる時間はとても尊い。

 何より妹に奪われない。
 それが嬉しい。

 私が手にしたものは私のもの、そんな当たり前の保証さえこれまではなかったから。
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