僕たちはもう共には歩めない。愛し合っていたけれど。~切ないさよなら~

四季

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僕たちはもう共には歩めない。愛し合っていたけれど。~切ないさよなら~

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 僕たちはもう共には歩めない。
 愛し合っていたけれど。
 彼女と僕が婚約したままでいたら、彼女は近く殺されてしまう。

 だから、決意した。

 彼女とはもうおしまいにする――そう心を決めた。


 ◆


「婚約は破棄する」

 告げた。
 本当に口から出してしまった。

 もう引き返すことはできない。

「そんな……どうして……」
「ごめん」
「ごめんって! どうしてよ! そんな、急に……」

 彼女はその場で泣き崩れる。

 ごめん。それしか言えない。だって僕は彼女を裏切ったんだ、たとえどんな理由があるとしてもそれは許されることじゃない。分かっていた、こうなるって。でもそれでも僕は彼女を護りたい。殺されてほしくない。だから、こうするしかないんだ。

 許して、なんて言わない。

「ごめん、もう無理なんだ」
「酷いわ!」
「そうだね……酷いよ、僕は。じゃあ、これで」
「嫌! 別れたくない! 嫌よ、離れるのは!」

 冷ややかな目を向ける。

 彼女は顔を腫らしていた。

 気の毒だけど、彼女には生きてほしいから。

「さよなら」

 ――告げるんだ、別れを。


◆終わり◆
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