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3話「お二人でお出掛けですか?」
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別の日、私はまたセインに話がしたいと言ってみたのだが、彼は断った。
何でもその日は予定が入っていたらしい。その予定というのは、港の方へ行って街の様子を確認する仕事だそうだ。
だが私はその話を信じられなかった。
ミレニアと遊ぶのでは、などと考えてしまったのだ。
そこで、もしよければ一緒に行ってみたい、と言ってみた。が、セインはそれを頑なに拒む。それにより、私の疑いの心はさらに強まる。婚約者である私をそんなに激しく拒む理由なんてないはずだからだ。
私は「分かった」と言って、一旦引き下がった。
だがそれはあくまで演技である。大人しく諦めるふりをしただけのこと。探ることをやめる気になったというわけではない。
そうして訪れた港視察の日。
私はこっそりセインを尾行することにした。
「お待たせ! ミレニアちゃん!」
「待ってないわぁ。楽しみすぎてぇ、少し早く着いてしまっただけなのぅ」
セインはやはりミレニアと会っていた。
港街が目的地であるということは偽りではなかったが、街の様子を確認する仕事という部分は嘘だったようだ。
「今日も可愛いなぁ!」
言いながら、ミレニアの身体を抱き寄せるセイン。
恋愛感情がないなんて嘘だ。私には分かる、二人は想い合っていると。恋愛感情もない相手と屋外で抱き締め合うなんて、とてつもなくおかしな行動ではないか。
「うふふ。ありがとぉ」
私は物陰からその姿を撮影する。
「待って。今、何か写真を撮られたような……?」
ミレニアは撮影に気づいたようだ。
私は一旦物陰に隠れる。
「気のせいじゃないかい?」
「うぅん。間違いない、音がしたわぁ」
「僕は写真を撮られるような有名人ではないけど……ミレニアちゃん狙いかな。だとしたら許せない! そんなストーカーみたいなことをする男を許すことはできないよ!」
セインの思考はぶっ飛んでいた。
撮影した人間が私であるとは欠片ほども考えていないようだ。
「とにかくどこかに入ろうか。外だと危ないよね」
「いいのぅ……? でもでもぉ……セイン様には婚約者が……」
「いいんだ。不審者から逃れるためにも、近くのホテルにでも入ろう」
何でもその日は予定が入っていたらしい。その予定というのは、港の方へ行って街の様子を確認する仕事だそうだ。
だが私はその話を信じられなかった。
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そこで、もしよければ一緒に行ってみたい、と言ってみた。が、セインはそれを頑なに拒む。それにより、私の疑いの心はさらに強まる。婚約者である私をそんなに激しく拒む理由なんてないはずだからだ。
私は「分かった」と言って、一旦引き下がった。
だがそれはあくまで演技である。大人しく諦めるふりをしただけのこと。探ることをやめる気になったというわけではない。
そうして訪れた港視察の日。
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「待ってないわぁ。楽しみすぎてぇ、少し早く着いてしまっただけなのぅ」
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「今日も可愛いなぁ!」
言いながら、ミレニアの身体を抱き寄せるセイン。
恋愛感情がないなんて嘘だ。私には分かる、二人は想い合っていると。恋愛感情もない相手と屋外で抱き締め合うなんて、とてつもなくおかしな行動ではないか。
「うふふ。ありがとぉ」
私は物陰からその姿を撮影する。
「待って。今、何か写真を撮られたような……?」
ミレニアは撮影に気づいたようだ。
私は一旦物陰に隠れる。
「気のせいじゃないかい?」
「うぅん。間違いない、音がしたわぁ」
「僕は写真を撮られるような有名人ではないけど……ミレニアちゃん狙いかな。だとしたら許せない! そんなストーカーみたいなことをする男を許すことはできないよ!」
セインの思考はぶっ飛んでいた。
撮影した人間が私であるとは欠片ほども考えていないようだ。
「とにかくどこかに入ろうか。外だと危ないよね」
「いいのぅ……? でもでもぉ……セイン様には婚約者が……」
「いいんだ。不審者から逃れるためにも、近くのホテルにでも入ろう」
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