婚約者がいるのに他の女性といちゃつくのはどうかと思いますが……。

四季

文字の大きさ
3 / 8

3話「お二人でお出掛けですか?」

しおりを挟む
 別の日、私はまたセインに話がしたいと言ってみたのだが、彼は断った。

 何でもその日は予定が入っていたらしい。その予定というのは、港の方へ行って街の様子を確認する仕事だそうだ。

 だが私はその話を信じられなかった。
 ミレニアと遊ぶのでは、などと考えてしまったのだ。

 そこで、もしよければ一緒に行ってみたい、と言ってみた。が、セインはそれを頑なに拒む。それにより、私の疑いの心はさらに強まる。婚約者である私をそんなに激しく拒む理由なんてないはずだからだ。

 私は「分かった」と言って、一旦引き下がった。

 だがそれはあくまで演技である。大人しく諦めるふりをしただけのこと。探ることをやめる気になったというわけではない。

 そうして訪れた港視察の日。
 私はこっそりセインを尾行することにした。

「お待たせ! ミレニアちゃん!」
「待ってないわぁ。楽しみすぎてぇ、少し早く着いてしまっただけなのぅ」

 セインはやはりミレニアと会っていた。
 港街が目的地であるということは偽りではなかったが、街の様子を確認する仕事という部分は嘘だったようだ。

「今日も可愛いなぁ!」

 言いながら、ミレニアの身体を抱き寄せるセイン。
 恋愛感情がないなんて嘘だ。私には分かる、二人は想い合っていると。恋愛感情もない相手と屋外で抱き締め合うなんて、とてつもなくおかしな行動ではないか。

「うふふ。ありがとぉ」

 私は物陰からその姿を撮影する。

「待って。今、何か写真を撮られたような……?」

 ミレニアは撮影に気づいたようだ。
 私は一旦物陰に隠れる。

「気のせいじゃないかい?」
「うぅん。間違いない、音がしたわぁ」
「僕は写真を撮られるような有名人ではないけど……ミレニアちゃん狙いかな。だとしたら許せない! そんなストーカーみたいなことをする男を許すことはできないよ!」

 セインの思考はぶっ飛んでいた。
 撮影した人間が私であるとは欠片ほども考えていないようだ。

「とにかくどこかに入ろうか。外だと危ないよね」
「いいのぅ……? でもでもぉ……セイン様には婚約者が……」
「いいんだ。不審者から逃れるためにも、近くのホテルにでも入ろう」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

妹の方が大切なら私は不要ですね!

うさこ
恋愛
人の身体を『直す』特殊なスキルを持つ私。 毒親のせいで私の余命はあと僅か。 自暴自棄になった私が出会ったのは、荒っぽい元婚約者。

あなただけが頼りなの

こもろう
恋愛
宰相子息エンドだったはずのヒロインが何か言ってきます。 その時、元取り巻きはどうするのか?

[完結]姉の専属騎士様が好きなのです。

くみたろう
恋愛
マリアベルの双子の姉、ナターシャには常にそばに居る専属騎士がいる。 その人は実家も侯爵家で見目麗しく優しく、そして強い。 そんな姉の専属騎士に恋するマリアベルだが、あと1年で婚約者と結婚する。 真逆の姉妹と専属騎士のお話。 ふわふわ設定です。 これおかしいよー、とかあっても優しく見守ってくださると嬉しいです。 9話完結。

私の愛すべきお嬢様の話です。

Ruhuna
恋愛
私はメアリー。シェリル・サマンサ・リース・ブリジット侯爵令嬢であるお嬢様に使える侍女でございます。 これは最近巷を騒がせている婚約破棄事件を侍女の目線からお話しさせて頂いた物語です。 *似たような話があるとは思いますが、関係はありません。 *誤字脱字、あるかと思いますがおおらかなお気持ちでお読み頂けると幸いです。 *ゆるふわ設定です。矛盾は沢山あるかと思います。

(完結)伯爵家嫡男様、あなたの相手はお姉様ではなく私です

青空一夏
恋愛
私はティベリア・ウォーク。ウォーク公爵家の次女で、私にはすごい美貌のお姉様がいる。妖艶な体つきに色っぽくて綺麗な顔立ち。髪は淡いピンクで瞳は鮮やかなグリーン。 目の覚めるようなお姉様の容姿に比べて私の身体は小柄で華奢だ。髪も瞳もありふれたブラウンだし、鼻の頭にはそばかすがたくさん。それでも絵を描くことだけは大好きで、家族は私の絵の才能をとても高く評価してくれていた。 私とお姉様は少しも似ていないけれど仲良しだし、私はお姉様が大好きなの。 ある日、お姉様よりも早く私に婚約者ができた。相手はエルズバー伯爵家を継ぐ予定の嫡男ワイアット様。初めての顔あわせの時のこと。初めは好印象だったワイアット様だけれど、お姉様が途中で同席したらお姉様の顔ばかりをチラチラ見てお姉様にばかり話しかける。まるで私が見えなくなってしまったみたい。 あなたの婚約相手は私なんですけど? 不安になるのを堪えて我慢していたわ。でも、お姉様も曖昧な態度をとり続けて少しもワイアット様を注意してくださらない。 (お姉様は味方だと思っていたのに。もしかしたら敵なの? なぜワイアット様を注意してくれないの? お母様もお父様もどうして笑っているの?)  途中、タグの変更や追加の可能性があります。ファンタジーラブコメディー。 ※異世界の物語です。ゆるふわ設定。ご都合主義です。この小説独自の解釈でのファンタジー世界の生き物が出てくる場合があります。他の小説とは異なった性質をもっている場合がありますのでご了承くださいませ。

 それが全てです 〜口は災の元〜

一 千之助
恋愛
   主人公のモールドレにはヘンドリクセンという美貌の婚約者がいた。  男女の機微に疎く、誰かれ構わず優しくしてしまう彼に懸想する女性は数しれず。そしてその反動で、モールドレは敵対視する女性らから陰湿なイジメを受けていた。  ヘンドリクセンに相談するも虚しく、彼はモールドレの誤解だと軽く受け流し、彼女の言葉を取り合ってくれない。  ……もう、お前みたいな婚約者、要らんわぁぁーっ!  ブチ切れしたモールドと大慌てするヘンドリクセンが別れ、その後、反省するお話。  ☆自業自得はありますが、ざまあは皆無です。  ☆計算出来ない男と、計算高い女の後日談つき。  ☆最終的に茶番です。ちょいとツンデレ風味あります。  上記をふまえた上で、良いよと言う方は御笑覧ください♪

【完結】死に戻り王女カレンデュラの地獄〜死に戻るのは処刑の一時間前、紅茶の時間〜

海崎凪斗
恋愛
革命が起きて共和国になった国の「元王女」、カレンデュラは、処刑によって死ぬと「処刑の一時間前、最期の紅茶の時間」に死に戻り、自分の処刑人である元婚約者と紅茶を飲む。 地獄のループに囚われた元王女は、やがて静かに、独白を始めるのだった。 ※シリアス、革命、復讐要素あり。バッドエンド作品なのでご注意ください。

お金に目の眩んだ最低な婚約者サマ。次は50年後にお会いしましょう

ちくわぶ(まるどらむぎ)
恋愛
《魔法を使う》と言われる商会の一人娘アイラは幼馴染の婚約者エイデンの裏切りを知る。 それをエイデンの父母も認めていることも。 許せるはずはない!頭にきたアイラのとった行動は? ざまあが書きたかったので書いてみたお話です。

処理中です...