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前編
しおりを挟む「ねぇ~え、お姉さま、婚約者交換し~ましょっ!」
妹ルルがそんなことを言ってきたのは、ある日の昼下がりだった。
私は顔が整った青年アルフェと、ルルはおっとり系青年モータルと、それぞれ婚約しているのだが――ルルは以前からずっとモータルのことを気に入っていないようだった。
だからこんな提案を思いついたのだろう、恐らく。
「何を言っているの?」
「だ、か、らぁ、婚約者を交換するのっ」
最初は理解できなかった。
そんな身勝手アイデア、画期的過ぎて。
「え……駄目よそんなこと、勝手にはできないわ」
「アルフェ様を渡したくないだけでしょ!?」
だがルルは本気でそうしたいと考えているようであった。
「いや、そういう話じゃなくて」
「そうとしか思えないわ! かっこいい殿方が相手だからって生意気!」
思い通りになりそうにない、となると、急に機嫌が悪くなる。
「怒らないでちょうだい」
「じゃあアルフェ様を譲って! あたし、あんなぼさっとした男と結婚するのは絶対に嫌よ!」
「……相手の二人に相談してみなくちゃ決められないわ」
「あくまで渡さない気!? このあたしをあんなやつと結婚させるっていうの!?」
ルルはやたらと好戦的だ。
面倒臭いなぁ、もう……。
「違うわよ、相談してから決めなくちゃって言っているだけよ」
「あらそ。じゃ、あちらに伝えておくわねっ」
「ええ、話し合いになら私も行くから、その時には言って」
「はぁ~い!」
ルルは少し機嫌を戻して去っていった。
――その後ルルは本当にモータルとの婚約を破棄した。
そして私もまたアルフェとの婚約を破棄することとなってしまう――そうしなければルルに怒られるからだ。
そうして、婚約者交換が成立。
私はモータルと、ルルはアルフェと、それぞれ婚約することとなった。
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