愛し、愛せよ、婚約破棄。~私はとにかくどんどん婚約破棄されたいのです~

四季

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後編

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 ◆


「貴女、カオロス様から離れてちょうだい! 貴女の存在が邪魔なのよ!」

 女に絡まれた。
 ただカオロスと婚約しているだけなのに。

「ではカオロス様に婚約破棄宣言するよう頼んできてください」
「はぁっ……!? 何言ってんのよ。貴女から辞退しなさいよ……!!」

 いちいち上から目線、感じの悪い女だ。

「いえ、それはできません」
「何よそれ……感じ悪い女ね……」
「すみません。でも、そこだけは譲れないのです」
「ふん! いいわ! 言ってやる、言ってやるわよ! 本当に頼むから! 覚悟してなさい、じきに捨てられるわ」

 後日、婚約破棄を告げる手紙がカオロスから届いた。

 これにて終了!

 また一つ、進んだ。


 ◆


 ――これで百回目だ。

 ついに来た、この時が。

「お前……やはり俺はどうしても受け入れきれない。しっくりこない。悪いが……婚約は破棄とする!!」

 婚約者デーモスは片手を差し出して凛々しく言い放つ。

 その瞬間、私は光に包まれた。


 ◆


『よく頑張りましたね。これで百回婚約破棄されました。よって、貴女は幸せになれます』

 白い世界で、女神に会う。

 ここには何もない。
 ここは不思議な空間。

 女神と会うための、限りなく無に近い場所だ。

「本当に……なれますか?」

 今はまだ信じられない、全部が上手くいくなんて。

 でもここまで来たのは期待していたからだ。

『ええ、今後貴女の望みはすべて叶うのです』
「それは本当なのですか……?」
『そうです。しかし今はまだ信じられないでしょうね。ただ、今後分かるはずです』
「そう、ですか……はい、分かりました」

 そしてまた光に包まれる。


 ◆


「……母さんの病が治りますように」

 それが私の願いだった。

 そして気づけば。

「アイゼリア! 聞いて! 急に治ったの、病気が!」
「え……う、うそ」
「お医者さんも言っていたわ、回復し始めているって!」
「えええ!!」

 願いは叶った。
 本当に。


◆終わり◆
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