ざまぁ！〜アルマニア家は暴走し過ぎ〜

１話

　私が婚約したカイルがいるアルマニア家は、子沢山で有名な家。カイルは十人兄弟の上から三番目。彼には、兄二人と弟七人がいる。カイルと婚約した私は、そんな多くの人が出入りする屋敷に住むことになった。

　しかし、それが間違いだった。

　カイルたちの母親は物凄くプライドが高い。塔のような髪の盛り方も凄まじいが、それ以上に性格が凄まじい。彼女は自分をとてつもなく偉いと思い込んでいて、息子の婚約者である私のことも人とは思っていないようだ。彼女は私の存在を、奴隷か何かと勘違いしているのかもしれない。

　屋敷に住み始めた私を、カイルたちの母親は奴隷のように扱った。

　廊下や部屋の床に小さな埃が一つでもあれば怒鳴るように呼びつける。そして、即座に片付け始めないと、一方的に叱りつけてくる。料理のメニューに気に入らないところがあれば愚痴を長々と聞かされるし、時には夜遅くまで話に付き合わされる。しかも、そういう時の話というのは大抵、自分が若かった頃はもっと優秀だったという話だ。

　ちなみに、カイルたちの父親は海外で仕事をしている。

　彼は昔から稼ぎは多いが滅多に帰ってこないらしい。しかも、帰ってきた時も息子たちと関わることはほとんどせず、妻と寝室にこもるだけだとか。息子たちと積極的に関わることを望んではいないらしい。

「マルシェさん！　布団の端に糸切れがついているわよ！」

　今日もまた、カイルたちの母親に絡まれる。

「……なぜ私に、なのですか？」
「なぜですって!?　無礼者!!　何という口の利き方をするの！」

　彼女は来る日も来る日もこんな風にして私に怒りをぶつけてくる。

　まともな理由なんてないよく分からない怒りだから、なおさらたちが悪い。

　原因があるならまだ対処はできる。何とか怒らせないようにすることも可能かもしれない。が、理由なく怒られるとなるとどうしようもない。改善のしようがない。