ざまぁ！〜アルマニア家は暴走し過ぎ〜

２話

「私は寝室の清掃はしていません」
「コラ！　いい加減になさい!　!……またそんな言い訳をして」

　何が言い訳だ。馬鹿らしい。おかしいのはそちらだろう。私は奴隷ではない、それを分かっているのか。私は屋敷で働くためにここへ来たわけではないのだから、そこを勘違いしないでほしい。

　けれども、私がそんな本心を言ってしまったら、発狂するに違いない。

　だから黙っておくしかない。

「マルシェさん、分かっているのかしら？　わたくしの腹には次の子がいるのよ、イライラさせないで。貴女のせいでこの子に影響があったらどうするつもり？」

　知りませんよ、そんなこと。

「清掃に関することは、清掃係の方にお伝えください」
「はぁ!?　馬鹿にしているの!?　貴女がきちんとしていないのが駄目なのよ！　もうすぐ妻になるのよ、しっかりしてちょうだい！」

　怒鳴り散らせば言いなりになると思っているなら、それは間違いだ。

　今はまだ反撃しない。けれどもそれは、さらにややこしいことになるのを避けるため。屈服させられているからではない。あくまで戦略的に退いているだけなのだ。もっとも、向こうがそれに気づいているかは不明だけれど。


　◆


　そんなある日のこと、カイルから告げられる。

「マルシェさん、ごめん。申し訳ないけど、婚約破棄してほしいんだ」

　唐突なことに戸惑う。

「婚約破棄……どうして？　何か理由があるの？」
「うん。実は、女友だちに子どもができたんだ」
「えっ……」

　露骨に嫌な顔をしてしまったかもしれない。

　しかしカイルは私の表情に関しては何も言ってこなかった。