婚約破棄、秋と共に私もまた。

四季

文字の大きさ
1 / 1

婚約破棄、秋と共に私もまた。

しおりを挟む
 秋は好きな季節だった。
 吹く風は心地よく、過ごしやすい気候で、実りもあって。

 でも。

「おまえんとはもうやってんいけんので婚約は破棄とするんなん」

 婚約者から終わりを告げられたことで。
 今年の秋は悲しいものとなってしまった。

 彼のことは嫌いでなかった。
 否、むしろ好きだった。
 彼と一緒に生きていけるなら嬉しい、素直にそう思っていたのだ。

 けれども彼はそうではなくて。

「もうおまえんの顔は見たくないんでん、とっとと去ってほしいんだよん。これでお別れんなのでいいな?」

 彼はそう言って、私との関わりを強制的に終わらせたのである。

 私はただただ辛かった。どこまでも悲しかった。この悲しみは海みたいだと思った。どこまでも暗く、どこまでも深い。あの大海のような悲しみの中では、人などちっぽけで、何もできない。どれだけ技術が発展しても人の心までは強くはならない、ということなのだろう。

 ならばもう、すべてを終わりにしてしまおう。

 好きな秋と共に終わろう。
 心は決まった。

 もう迷わない。


 ◆


 美しい秋。
 それの終わりと共に、私は長くはない生涯を終えた。


◆終わり◆
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

貴方が望むなら死んであげる。でも、後に何があっても、後悔しないで。

四季
恋愛
私は人の本心を読むことができる。 だから婚約者が私に「死んでほしい」と思っていることも知っている。

お前は要らない、ですか。そうですか、分かりました。では私は去りますね。あ、私、こう見えても人気があるので、次の相手もすぐに見つかりますよ。

四季
恋愛
お前は要らない、ですか。 そうですか、分かりました。 では私は去りますね。

好きな人ができたなら仕方ない、お別れしましょう

四季
恋愛
フルエリーゼとハインツは婚約者同士。 親同士は知り合いで、年が近いということもあってそこそこ親しくしていた。最初のうちは良かったのだ。 しかし、ハインツが段々、心ここに在らずのような目をするようになって……。

婚約破棄して支援は継続? 無理ですよ

四季
恋愛
領地持ちかつ長い歴史を持つ家の一人娘であるコルネリア・ガレットは、婚約者レインに呼び出されて……。

婚約者の座は譲って差し上げます、お幸せに

四季
恋愛
婚約者が見知らぬ女性と寄り添い合って歩いているところを目撃してしまった。

妻よりも幼馴染が大事? なら、家と慰謝料はいただきます

佐藤 美奈
恋愛
公爵令嬢セリーヌは、隣国の王子ブラッドと政略結婚を果たし、幼い娘クロエを授かる。結婚後は夫の王領の離宮で暮らし、義王家とも程よい関係を保ち、領民に親しまれながら穏やかな日々を送っていた。 しかし数ヶ月前、ブラッドの幼馴染である伯爵令嬢エミリーが離縁され、娘アリスを連れて実家に戻ってきた。元は豊かな家柄だが、母子は生活に困っていた。 ブラッドは「昔から家族同然だ」として、エミリー母子を城に招き、衣装や馬車を手配し、催しにも同席させ、クロエとアリスを遊ばせるように勧めた。 セリーヌは王太子妃として堪えようとしたが、だんだんと不満が高まる。

わたくしが代わりに妻となることにしましたの、と、妹に告げられました

四季
恋愛
私には婚約者がいたのだが、婚約者はいつの間にか妹と仲良くなっていたらしい。

あなたへの恋心を消し去りました

恋愛
 私には両親に決められた素敵な婚約者がいる。  私は彼のことが大好き。少し顔を見るだけで幸せな気持ちになる。  だけど、彼には私の気持ちが重いみたい。  今、彼には憧れの人がいる。その人は大人びた雰囲気をもつ二つ上の先輩。  彼は心は自由でいたい言っていた。  その女性と話す時、私には見せない楽しそうな笑顔を向ける貴方を見て、胸が張り裂けそうになる。  友人たちは言う。お互いに干渉しない割り切った夫婦のほうが気が楽だって……。  だから私は彼が自由になれるように、魔女にこの激しい気持ちを封印してもらったの。 ※このお話はハッピーエンドではありません。 ※短いお話でサクサクと進めたいと思います。

処理中です...