幼馴染みで婚約者だった彼に切り捨てられてしまいましたが、自分にできることをしながら生きていたところ意外な良縁に恵まれました。

四季

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17話「久々に」

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「お久しぶり!」

 城へ到着するとラムティクが迎えてくれた。

「お久しぶりです、殿下」

 嬉しさが迸りそうになってはいるが、ここは落ち着いて、冷静に。

 まずは一礼する。

「素敵なワンピースですね」
「え。あ、ありがとうございます」

 いきなり褒められたものだから若干戸惑ってしまったけれど。

「ではこちらへどうぞ。案内しますよ。ついてきてください」
「はい」

 話は順調に進んだ。
 共に歩き出す。

 城というのは特別な場所だ。基本的には限られた高貴な人しか踏み込むことのできない聖域。もちろん雑用や仕事でそこへ行く者はいるわけだが、それを除けば、大抵の者はそこへ足を踏み入れることはないまま一生を終える。貧困層に生まれたからとか、平民だからとか、そういう問題ではない。一般的にはそれなりに良い家と言われる家に生まれたとしても、それでも、王城へ入ることは容易ではないのだ。それほどに、そこは特別な場所なのである。

「移動お疲れさまでした」
「平気です」
「一旦お茶でもしましょうか」
「手間をかけてしまいすみません……」
「いえ。これまではそちらにばかり手間をかけていましたので。たまにはこちらが何かできればと思います」

 城内へと向かう道、心地よい風が吹いている。

「そういえばお手紙ありがとうございました。マリエさんからお返事が来て驚くと同時に大喜びしました」
「先にくださったのは殿下ですよね」
「あ、迷惑でした? もしそうだったらすみません」
「いえ! そんなことはありません! ……事件について聞いてから心配していたので、殿下の状況を知ることができて嬉しかったです」

 彼は歩き続けながらも「ご心配おかけしてすみませんでした」と謝る。
 それに対して私は慌てて数回首を横へ振った。
 責めるような形になってしまったことが少々申し訳なく感じられたのだ。

「そろそろティータイムの間に着きます」
「……ティータイムの間、ですか?」
「ええ。そうです。珍しい名称ですよね」
「初めて聞きました」
「確かに、社会において一般的に使われる名称ではありませんよね」
「素敵な呼び名ですね」
「マリエさんはお優しいですね。そのように言ってくださるとは。ありがたく思います。もう、本当に、いろんな意味で感謝しかありません」

 やがて到着したティータイムの間。
 そこは石造りの部屋だった。
 なんてことのない一室ではあるのだけれど、石でできた壁や天井には様々な彫刻が施されていて豪華な印象だ。

「そちらへどうぞ」
「ありがとうございます」

 二人だけで使うには広めの部屋だが今日は他の参加者はいないようだ。

「とても……素敵な部屋ですね」
「そうですか?」
「はい。彫刻が凄いですし、それでいて色みなどは落ち着いていて、とても魅力的です」

 着席から数分経つとメイドが入ってきた。その手にはティーカップやポットが乗っている銀のお盆。上品な歩き方をしている女性は音もなく移動してテーブルの傍へやって来ると器の準備をしてくれる。食事ではないので準備する物の数は多くはない、が、それでもそこそこややこしい準備。けれどもかなり慣れているようで、準備を進めるその手の動きに滞りは一切ない。

 やがてティーカップに紅茶を注ぎ終えたメイドは落ち着いた声で「こちらパールパパンジェッテパパンジェットという種類の紅茶でございます」と説明してくれる。
 しかし慣れない言葉についていけなくて、思わず「パー、ル……?」と呟くようにこぼしてしまった。
 するとメイドは「聞き取りづらく申し訳ございません、パールパパンジェッテパパンジェットです」と先ほどよりややゆっくりめにもう一度繰り返してくれた。
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