最強の女戦士ここにあり

田仲真尋

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荒ぶるキング

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フェイトフル・リアルムへ戻った僕たちは、すぐにその異変

に気づきました。

街は軽いパニック状態に陥っています。

どうやら、キリエス軍がフェイトフル・リアルムを包囲しているとのことで、人々は不安に駆られているようです。


僕らは、パークさんを訪ねるためフェイトフル・リアルムの心臓部、ジャスティス城へと急ぎました。


城へはテトラさんの案内で簡単に入城できました。

そしてパークさんとの再会を果たしました。


「おお、皆無事だったか。ん?もしやジャクリンか?」


「ゼロ様。お久しゅうございます。」


「大きくなったな。父上は元気か?」


「はい、お陰様で。」


そういえば二人共、同郷でしたね。


「それで、レジェスはどうしたのだ?」


ジャクリンさんは、レジェスのことやこれまでの経緯を、途中途中を省きながら簡単に説明しました。


「なんということだ。私には、よく理解できぬことだ。まさか、魔界という所がそんなものだとは想像もつかなかった。」


今回は、事前に話し合ってサーシャ様の父上、ディミトリさんの事については話すことを止めることにしました。

話がややこしくなってしまいますからね。


「それで、こちらの状況はどうなっているのでしょうか?」


「うむ……ついてきてくれ。」


パークさんは、僕らを連れて城の高い見張り台へと案内しました。


そこから見た風景は、まさに絶景でした。


「こ、これは……。」


皆が言葉を失うのも無理はありません。

このジャスティス城を囲むように、キリエスの大軍勢が展開しているではありませんか。


「以前、君らと会ったザラスとの国境の砦は、あっという間に陥落した。残すはこのジャスティス城だけだ。」


これはかなり窮地に追い込まれている状況のようですね。


「しかし、ジャスティス城の城壁といえば鉄壁と聞いてます。だ、大丈夫ですよね?」


僕は、おそるおそる訊ねてみました。


「いや、あれだけの軍勢だ。突破されるのは時間の問題だろう。だが簡単にはやらせない。城壁には我が軍の主力を配置しているし、魔法使い部隊も多く配置している。時間稼ぎは出来るだろう。だが――。」


「――敵の動きがどうも怪しい、だろ?」


突然、聞き慣れない声に、僕らは一斉に振り返りました。


「これは陛下。」


パークさんが頭を下げた相手はフェイトフル・リアルムの国王のようです。

これがレト大陸の巨熊と呼ばれた、オベリン国王ですか。

呼び名に相応しく、大きな体格です。

それに、老いてもなお健在という雰囲気ですね。

彼は、豪胆で勇猛な戦士としてもレト大陸では名を馳せていました。

相当な剣の腕の持ち主だということは、誰もが知っていますからね。


「はい。敵はどうして動かぬのか、それが分かりません。何かを待っている様な気がしてならないのです。」


あれだけの圧倒的な兵力がありながら、様子を見ている様な状況です。

確かに、何か変ですね。

ジャスティス城の城壁を攻略する戦略を練っているのでしょうかね。


「ふん、何を企んでおるのか知らんが、ふざけた連中だ。ところで、この者たちは――ん?お主の、その目はまさか……。」


「そうです陛下。この子はサーシャ、ディミトリの娘です。」


「ほう、ディミトリの子か。そうか、あやつにはこんなに美しい娘がおったのか。」


「父をご存知で?」


「ああ、知っとるも何も、あやつは儂に唯一、土をつけた男じゃからな。お前の父は残念じゃったな。生きておれば、このフェイトフル・リアルムに招き入れたかったんじゃが。」


サーシャ様はオベリンの言葉に苦笑いして、応えました。


「おお、そういえば陛下、彼が例のブラックエッジですよ。」


僕?何でしょう「例の」とは?

嫌な予感しかしません。


「なに!?そうか、お前さんがブラックエッジか。儂はな、お前さんのファンなんじゃ。」


「フ、ファン、ですか?」


「そうじゃ。お前さんは、あの憎っきキリエス兵を、次々と斬り捨てていたじゃろ。儂は、その噂を耳にするたびに愉快痛快でな。その後、噂を聞かなくなったから死んだのかと思っておったが、まさか、まだ生きておるとは。」


何だか喜んでいいのか、複雑な気分です。


「ところで陛下、私に御用でしょうか?」


「うむ。そのことだが、儂はこれより敵の本陣へ奇襲をかけようと思うてな。」


「な、なにを馬鹿なことを。無茶です。」


「大丈夫じゃ。共には二十名ほど連れて参るつもじゃから。」


「私は反対だ、オベリン。お前はいつも無茶苦茶を言い出す。」


「いいや、儂は行くぞ。例えゼロが止めてもな!」


突然、始まった国王の暴走にパークさんは怒りを顕にしました。

しかし、これは――。


「おっと、すまないな。見苦しい所を見せてしまった。実を言うと私とオベリンは旧知の仲でな、今でこそ主従関係なのだが、たまにこうやって昔の癖が出てしまうんだ。」


「だから儂が昔のままでいいと言っておるのだがな、こやつも、頑固でな。儂を陛下と呼ぶのが、もう気持ち悪くてな。」


なるほど。つまり二人は良い関係だということですね。

そんな関係性も面白そうです。


「儂はな、腹が立っているんじゃ。あのキリエス兵どもの余裕綽々な態度に。我が兵たちは城壁で毎日毎日神経を尖らせておる。魔法使いの部隊は結界を交代交代で張り続けて頑張っている。それを、何を考えてか知らんが、一向に攻めて来る気配が感じられん。あれだけの兵力がありながら、動かぬならこちらが先に仕掛けてやろうという腹づもりなんじゃ。」


それは、確かにそうですが、だからといって国王自ら赴かなくてもよいのではないでしょうか。


「ふーっ。確かにオベリンの言っていることには一理ある。圧倒的な戦力差があるならば、敵の大将首を狙うという手も間違ってはいない。だが、本当にやれるのか?」


パークさんの問いかけに国王オベリンは、にやりと笑いました。


「誰に言うておる。儂はフェイトフル・リアルムのオベリンだぞ。敵の本陣ごと潰してくれようぞ!」


「――分かった。私はもう止めやしない。だが、約束してくれ。必ず生きて戻ると。この国には、貴方が必要なのです、陛下。」


「任せておけ。おっ!そうだ、ブラックエッジよ。共に来ぬか?キリエス兵を思う存分斬れるぞ。」


行くわけありません。何を突然言い出すのでしょう。

この国王は頭がいかれています。


しかし、僕はふと考えました。

敵の本陣に奇襲をかけるということは、敵の大将が居る可能性が高い訳です。

そこに、アイスが居るのかどうかだけでも確認できれば、僕らの今後の動きに大きく役立つはずです。

それに、アイスの顔を知っているのは僕らの中では、他にサーシャ様くらいしかいません。

さすがにサーシャ様を行かせる訳にはいきませんからね。


まあ、あのオベリンと共に戦場を駆けるのも楽しそうですしね。


「いいですよ。僕も行きましょう。」


「ちょっと、ピート。」


「大丈夫ですよ、サーシャ様。ちょうど僕も、あのキリエスの軍を見てから、やつらを斬りたくて、うずうずしていたんです。」


「ガハハハ!よくぞ言った。さすがはブラックエッジだ。」


僕は、そう言った後、実は大きく後悔していたことを誰にも悟られないように、必死でした。


そして、「……何で、あんなこと言ったんだろう。」と、ぼそりと呟いたのでした。


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