最強の女戦士ここにあり

田仲真尋

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フォックスとジャクリンの信頼

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ジャクリンさんには何かしらの策があるのでしょうか。

そんなことを匂わせるような二人の会話でした。


「それで、どうすれば良いのでしょうか、ジャクリンさん。」


「敵との相性を考えれば、ナツメグを接近戦で、フェンネルを私の遠距離魔法で叩くのが理想的だと思うのですが。どうでしょうか、フォックス様。」


「ええ、そうできれば良いのですが、奴らも意識的に攻めてきているように思えます。だから、なかなか簡単には戦わせてはくれないでしょう。」


確かに、フェンネルとナツメグは常に二対一を意識しながら戦っているように見えます。

フォックスとジャクリンさんをなるだけ離しているようにも感じますね。


「そうです。なのでフォックス様は、あそこまで走って行ってください。私は上へ参ります。」


ジャクリンさんは敵の二人から少し離れた岩を指さし、そして自身は魔法で空高く舞い上がりました。

しかし、これでは先ほど言っていた作戦とは異なってしまいます。

近距離での戦いが得意なフォックスを宙へ飛ばすなりなんなりしないといけないはずですが……。


「ジャクリンさん、私は何を?」


「フォックス様、戦闘態勢!」


ジャクリンさんの言葉でフォックスは言われた通りにしました。


「この子、私に突っ込んでくるわ。フェンネル!」


ナツメグがフェンネルの名を呼んだ時には、既に彼は動き出していました。

ナツメグの元へ向かうジャクリンさんの背後に迫ろうとしていました。


「よし、今ね。スワップテレポート!」


ジャクリンさんが魔法を唱えると、なんとジャクリンさんとフォックスの位置が瞬時に変わりました。


「これは!チャンスだ!」


ナツメグは突然、目前の敵がジャクリンさんからフォックスに変わったことに驚き、一瞬反応が鈍りました。


「もらった、デスクロー!」


フォックスの爪がナツメグを捉えました。


「お、おのれ!」


しかし、フェンネルは未だ止まっていません。

そのままのスピードでフォックスへと斬りかかります。


「背中がガラ空きですわ、ファイアポットポム!」


ここで少し離れた位置からジャクリンさんの魔法攻撃がフェンネルを背後から襲いました。


「小賢しい!」


フェンネルは咄嗟に肩甲骨辺りから生えた二本の腕を背後にぐるりと回して防御しました。

なんとも器用な方ですね。

しかし、ジャクリンさんの奇襲は見事にはまり、フェンネルの命まではとれずとも四本の腕のうち二本を破壊することに成功しました。

こうなっては、もはや勝負はついたといえるでしょう。

当の本人のフェンネルからも戦意が失われていくのが見てとれます。


「――フェンネルよ。」


そんなフェンネルに対して声をかけたのは、ゼインでした。

これまでゼインは、ただ傍観しているだけでしたが、遂に戦況が悪くなりフェンネルにアドバイスでも与えるのでしょうか。

ですが、時既に遅しですよ。


「ゼイン殿……承知しております。」


ゼインは何も言いませんでしたが、フェンネルは何かを察したようでした。


この時、勝利を確信していたジャクリンさんとフォックスには、少しの油断がありました。

二人は近寄り、ジャクリンさんの特別な魔法について話していました。


「ジャクリンさん、あの魔法は凄いですね。あの魔法のおかげで我々は勝てたのですから。」


「いやですわ、そんなことよりフォックス様が私を信じてくださったからですわ。それに、あの魔法は魔力の消費が激しくて、そうそう使える代物ではありません。あれを使えるのは、信頼できる方とでないと無理なのです。」


そんなイチャイチャしている二人をよそに、フェンネルからは殺意剥き出しの凄まじい力が放たれていました。

そして、それにフォックスとジャクリンさんが気づいた時には、もう遅かったのです。


「スーサイドボンバー!」


フェンネルの体が激しい閃光に包まれた次の瞬間、彼は自分の体を大爆発させました。

その爆発力は凄まじいものでした。

僕らへ向かってきた爆風はシエルさんが咄嗟に張った魔法障壁で防ぎましたが、フォックスとジャクリンさんの安否は確認できません。


粉塵がしばらく辺りを包み、そして少しづつ晴れていきました。

その光景に僕らは唖然とさせられました。

さっきまでフォックスとジャクリンさんが戦っていたフィールドは、まるで隕石でも落ちてきたかのような凄い有り様だったのです。

そこに当然フェンネルの姿はありませんでした。

彼は二人を巻きぞいに自爆したものだと考えられます。

そして、よく目を凝らして辺りを見てみると、二つの人影を発見することができました。

もちろん、フォックスとジャクリンさんです。

しかし、どうも様子が変です。

一人は地面に横たわり、それをもう一人が抱きしめているよな状況でした。

僕らは、すぐにそこへ駆け寄りました。

そしてそこには、驚くべき光景が待っていました。

横たわっていたのは、フォックスでした。

事情を聞くと、ジャクリンさんはフェンネルの最後の自爆の時にシールドを魔法で張ろうとしてのですが、やはり魔力の損失が大きく、いつもよりも少し時間がかかってしまったそうです。

その時、フォックスがジャクリンさんの前に立ちはだかり身を挺してかばったということでした。


「フォックス、死ぬでないぞ。」


悲痛な叫びはディミトリさんでした。

フォックスは彼の右腕のような存在ですから、心配するのも仕方ありません。


「ジャクリンよ、無事か。」


レジェスも共に旅をしてきたジャクリンさんを気遣います。


「私は大丈夫です。しかし、フォックス様が――。」


僕ら一同は唖然としました。

気を失っている様子のフォックスの右腕が一本、肩辺りから無くなっていたのです。


「わ、私のせいでフォックス様の大事な腕が――。」


泣き崩れるジャクリンさんに、

「何を泣く必要がありますか。我々は勝ったんですよ、ジャクリンさん。」と、意識朦朧としながらフォックスが声をかけました。


「フォックス様、すぐに私が治療を致しますので。」


しかし、ジャクリンさんには、そんな魔力はもう残っていないでしょう。


「ジャクリン、私に任せて。」


ここでシエルさんの登場です。

これまでは役に立たない魔法使い、なんて思っていましたが、そんなことは全然ありませんでした。

彼女がいたおかげで、戦って傷ついた仲間が治療を受け、死なずにすんできたのですからね。


「シエルさん、お願いします。』


ジャクリンさんはフォックスをシエルさんに預けると、緊張の糸が切れたように、ふっと意識を失ってしまいました。


「役にたたん盗賊どもだ。」


そんな様子を見ていたゼインが剣を抜き、

「貴様ら全員ここで終わりだ。」と、凄みをきかせました。


こちらはフォックスとジャクリンさんも完全にリタイアです。

残るは僕も含め四人。


「私がいこう。」


名乗りをあげたのはサーシャ様でした。


「いや、私だ。」


負けじとレジェスも前へ出ます。


「待て。二人にはまだ力を使ってもらっては困る。ここは私が。」


ディミトリさんまで、この始末です。

このゼインを倒せたとしても、この後に控えるのは、敵の総大将の二人です。

彼らの力は、まだ未知数なところが多いですが、少なくとも強敵であることは間違いないでしょう。

この三人にはそこまで力を蓄えたまま挑んでいただきたいものです。

そうなると、残るのは僕だけです。

正直なところ勝てる気なんて微塵も感じません。

下手すれば命さえ奪われしまうでしょう。

ですが、そんな気持ちとは裏腹に僕の中では、ふつふつと何かたぎるものが確かにあります。

さっきのフォックスの姿が僕をそうさせているのでしょうか?

まあ、そんなことはもうどうでもいいのですが、自分でも驚く程にやる気になっていますよ、僕は。


「ここは、僕がやらせてもらえます。」

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