最強の女戦士ここにあり

田仲真尋

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モルドスの真の目的

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モルドスの発言には僕ら全員が驚きを隠せませんでした。

これまでの奴等の目的は人間界を掌握し、本当の目的であるフルガイアを征服することこそが真の目的だと、誰しもが考えていたからです。


「な、なんだと!それでは貴様は私利私欲の為、人間やフルガイアの民を巻き込んだというのか!?」


ディミトリさんが怒るのも無理はありません。

自分の目的の為にフルガイアを統一しようなんて狂っているとしか思えませんからね。


「我は神に仕える者ぞ。我の願いは神々の望み。貴様らごときが何をほざこうとも運命は変えられんのだ。」


出ました。またもや神の名を語り、自分を正当化しようとでもいうのでしょうか。

それとも本当に精神的にいかれているだけなのでしょうか。


モルドスの目的をアイスが知っていたのかも気になるところです。

知っていて手を貸していたのなら兄弟揃って下衆の極みですね。


「やはり兄上の目的はパープルアイズでしたか。」


「アイスよ。お前も知っていたのだな。モルドスがフルガイア統一などに興味がなかったことを。」


「いや、知ってはいない。ただそうなのではないかと勝手に思っていただけだ。」


「ならば知った今、お前はどう考えるのだ。」


「ディミトリよ。どんな思惑であれ我らは血の繋がった兄弟だ。私は死すまで兄上と共にある。」


ディミトリさんはそれ以上アイスに問いただすことはしませんでした。


「ではモルドス、お前に聞く。私やサーシャの目を奪ってどうするつもりだ。確かにお前の生い立ちや境遇には同情するところもあるが、私たちの目を奪ってもお前の目にはならぬぞ。」


「案ずることはない。我にはパープルアイズを我が目として使える術がある。」


これにはディミトリさんも驚きを隠せないようでした。

そして、それは嘘や偽りではないことも容易に想像がつきます。

このモルドスという男がこの期に及んで偽りを述べたりはしないでしょう。


「さて、では始めるとしようか。ディミトリの娘よ。」


「私の名はサーシャよ。いい加減覚えなさいよ!」


サーシャ様はもう一度先ほどの名の長い魔法剣を発動しました。

これには正直驚きました。

まさか、まだこんな力を残していたということにです。

この魔法剣を使えたということは、モルドスにだってきっと勝てるはずです。

これでこの戦いは終幕を迎えることでしょう。


「一撃で決めるわ。」


おそらくサーシャ様の今の発言からすると、一撃放つのがやっとということなのでしょう。

しかし、あの攻撃ならどんな相手でも一発でしとめられるはずです。

しかし、もしも外してしまったらサーシャ様になす術はなくなってしまうことでしょう。

一発勝負です。


「どこからでもいいぞ。かかってこい。」


ここでモルドスは驚きの行動に出ました。

なんと腕組みをして仁王立ちをしているではありませんか。

これは罠でしょうか。

しかし、サーシャ様は既に攻撃モーションに入っています。


「いけぇぇえ!」


サーシャ様の一撃がモルドスを襲います。

このタイミングなら外れることはないでしょう。

そして、今まさにモルドスへと刃が届きそうな瞬間、モルドスは腕組みを解き片腕を前へと出しました。


「ば、ばかなあれを受け止めるつもりか!?」


ディミトリさんの言葉は誰もが抱いたことでした。


「ぬぉぉお!」


「正気なの!?」


攻撃を放ったサーシャ様でさえも目を疑うような行動をモルドスはとりました。

しかしすぐに皆が言葉を失ってしまいました。

なんと本当にあの攻撃を素手で受け止めているではありませんか。

しかも、サーシャ様の魔法剣が少しずつ小さくなっていっています。

まるで魔力を吸いとられているようです。


「ま、まずい。」


サーシャ様は危険を察知し、魔法剣を解除して一旦下がりました。


「ほう、なかなか賢いではないかディミトリの娘。」


「だからサーシャだって言ってるでしょ。」


サーシャ様の瞳にパープルアイズは戻っていない様子です。

もう一度魔法剣を出すことは出来るのでしょうか。

いや、もし出せたとしてもまた片手で掴まれてしまってはどうすることも出来ません。

万事休す、ということでしょうか。

しかしながら、当の本人であるサーシャ様は諦める様子は微塵もありません。


「近づけばまた捕らえられるわね。だったら――フェニックス!」


サーシャ様はモルドスと距離をとり不死鳥フェニックスを放ちました。

この火の鳥も通常の真っ赤なものではなく紫に染まったものでした。

おそらく通常のフェニックスの十倍近くの威力があると思われます。


「そうこなくてはな、ディミトリの娘。」


モルドスは避けようともせず、またしても迎え撃つつもりです。


「ふんっ!」


モルドスはフェニックスが届くよりも数テンポ早くパンチを打ちます。

どういうつもりでしょうか?

やはり目が見えないのでタイミングがとれないのでしょうか。

しかし、そんな淡い思惑は簡単に打ち砕かれてしまいました。


モルドスの放ったパンチはまるで衝撃波のように空気を伝わり、フェニックスを一瞬にして消滅させてしまいました。

しかも、それだけでは止まらずサーシャ様までもそれは届いてしまったではありませんか。


サーシャ様はそれをまともに喰らってしまい大きく吹き飛ばされてしまいました。


「な、なんてことだ。まさかこれ程とは……我らの負けだ。」


ディミトリさんは意気消沈したように呟きました。


「――まだよ!私はまだやれる!」


そこにはボロボロになりながらも何とか立っていたサーシャ様の姿がありました。


「サーシャ!もう無理だ奴には勝てん。」


「冗談じゃないわ。まだよ、まだ戦える!」


サーシャ様は果敢にも再び魔法剣を発動し、モルドスへと立ち向かいます。


「そろそろ終りにしよう。その目さえ手に入れば命だけは助けてやっても構わんのだがな。どうだディミトリの娘。もしくはディミトリ、貴様の目でも構わんのだぞ。」


「サーシャ、挑発に乗るな。もはやルールなど意味はない。全員で何とか奴を止める。」


ディミトリさんの言い分は間違ってはいません。

これはゲームではありませんからね。

ただ、こちら側の陣営を見回してみてもまともに戦えるのはレジェスのみです。

手負いの僕らが束になってかかっても敵うはずがありません。


「奪えるものなら奪ってみなさいよ!」


サーシャ様は底力を見せ、もう一度刃折れの剣に魔法剣を発動させ紫の刃を出現させました。

そして無謀ともいえる突撃をしかけました。


「無駄なあがきだ。」


これではさっきと同じ様に魔力を吸い取られるだけです。

奴にはその魔法剣は通じません。

誰もがそう思った時でした。

サーシャ様の刃がモルドスに再び掴まれそうになった瞬間、サーシャ様は突然に魔法剣を解除しました。

サーシャ様の剣、スパロウティアズは元の刃折れのただの剣に戻ってしまいました。

やはりもう、まともに魔力が残っていなかったのでしょう。


「お前の力はそんなものだ、ディミトリの娘――。」


モルドスは剣を掴むモーションからパンチを打つ態勢に切り替え迎撃態勢に入りました。


「だ・か・ら!私はサーシャって言ってるでしょうが!」


サーシャ様は剣を投げ捨て、なんと驚くことにモルドスと同じ様にパンチを打つ態勢をとっていました。


「パンチャー!」


これはレジェスの十八番の低級魔法パンチャーではありませんか。

まあ、なんのことはない拳を強化する魔法です。

そんなものでモルドスが倒せるはずがありません。

しかし、よく見てみるとサーシャ様の瞳にパープルアイズが戻っています。

そうなってくると話は別です。

身体能力の飛躍的アップによりパワーも格段に上がっているはず。

倒せはしなくともダメージを与えることは可能なはずです。


バゴン!と低く鈍い音が響きます。

サーシャ様の渾身のパンチがモルドスの顔面にクリーンヒット。

さすがのモルドスも上半身が吹き飛びそうなほどのけ反りました。


「手応えあり。やったわ。」

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