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サーシャ様の一発がモルドスに完璧にヒットしました。
これで少しは弱ってくれていればまだチャンスはありそうです。
しかしまあ、サーシャ様の虚をつくフェイント攻撃には驚かされました。
やはり普段から素直じゃない人なので、そういう敵を騙すのに長けているのでしょう。
そんなことを考えているとサーシャ様からの恐ろしい視線を感じ、僕は目を背けるのでした。
「い、今のは効いたんじゃないか。」
ローラスの言葉を皆が信じたいと願いました。
しかし、そんな願いはすぐに砕かれてしまいました。
「なかなか良いパンチであったぞ、ディミトリの娘――いや、サーシャよ。」
「ようやく名前を覚えてくれたみたいね。満足だわ。」
「お前はおそらく父、ディミトリを越えている。やはりお前の目を貰い受けることにしよう。」
やっぱりダメージは、ほぼ無さそうです。
さすがにサーシャ様も全てを出し切った様子で、立っているのもやっとのようでした。
「サーシャ!逃げろ。ここはやはり全員でやるしかない!」
ディミトリさんの叫びにもサーシャ様は首を横に振りました。
「駄目よお父さん。最後まで諦めては。」
サーシャ様は何とか自分を奮い立たせようとしますが、やはり気合いだけでは何ともなりません。
その間にモルドスはサーシャ様の元へ歩み寄りサーシャ様の細い首に手をかけ掴み上げました。
「さて、どうするか。とどめを刺してから目玉を取るか、それとも生きたまま、くり抜くか。」
これはもはや一刻の猶予もありません。
サーシャ様が何と言おうとも助太刀に入るしかありません。
「やはり新鮮な方がよいだろう。サーシャよ、このままお前の目を戴く。命までは取らぬ故安心するがいい。」
「ぐっ!く、くっそ――。」
ついにモルドスの魔の手がサーシャ様の美しい瞳へと伸びていきます。
これは僕らが急いでも間に合いそうもありません。
「サーシャ様!」
僕が声を上げた瞬間でした。
僕の後方から涼しい風が勢いよく吹き抜けていきました。
突風でしょうか。
しかし、ここパンドラに風など吹いていません。
「では貰い受ける――ぬっ!?」
いつの間にかモルドスとサーシャ様の元にレジェスがいました。
その手はモルドスがサーシャ様へ伸ばした手をがっちりと掴んでいます。
「何だ、貴様は。」
「レ、レジェス。」
サーシャ様は苦しそうにしながらレジェスの名を呼びました。
「そうか貴様があのアシュベル・グレーを葬った人間か。」
それはキリエス城の地下でのことを指しています。
あの時、僕はレジェスとの久し振りの再会を果たしました。
「まだ私が残っている。私を倒してこそ本当の勝利になるのだ。」
「図にのるな人間。たかだかアシュベル・グレーを倒したくらいで我に勝てるとでも思っておるのか。」
「むろん、勝てる。貴様こそ調子にのるな。私こそが最強の戦士だ。」
こんな時、頼りになります。
もう僕らには彼しか頼れる人がいません。
だけど不安も少なからずあります。
あの真のパープルアイズを開眼したサーシャ様ですら太刀打ち出来なかったモルドスとレジェスがどれだけやれるのかという不安。
もちろんレジェスの強さは秀でています。
それだけに彼が敗れてしまった時、僕らは真の敗北を味わうことになります。
それはもちろん『死』を意味します。
「まあよかろう。時間はたっぷりとある。貴様らに生物としての格の差を見せてやろう。それまでそのパープルアイズと最後の別れでも済ませておくのだな。」
モルドスは、そう言ってサーシャ様を掴んでいた手を離しました。
「ゴホゴホッ。レ、レジェス。済まない助かった。ありがとう。」
「な、何を言っているのだ。私はただ強き者と戦いたいだけだ。」
やっぱり素直ではありませんね。
せっかくあのサーシャ様が素直に感謝をしているのに。
そう考えるとサーシャ様とレジェスはどことなく似ているような気がしてなりません。
「さあ来い、最強の戦士とやら。」
やはりモルドスは余裕の表情です。
こうなればサーシャ様だけでも連れて逃げるという手段も考えなくてはならないかもしれません。
もしもモルドスがパープルアイズの力を取り込むことに成功してしまえば、おそらく打つ手なし。
もはや奴を止めれる者などいなくなり、人間界もフルガイアも彼の手に落ちてしまうことでしょう。
だったらせめてパープルアイズを渡さずにこの場から逃亡する、という手もありです。
もちろんそうするということは、ディミトリさんも連れて行かねばなりません。
二人を連れて僕が行き、残りの皆で奴を食い止めるという方法しかありません。
何故、僕が一緒に行くのかですって?
だって僕は腕を一本失い剣をまともに振れないのですよ。
つまりモルドスを足止めするために戦うことすらできないのです。
だったら二人を連れて行くのは僕の役目。
決してここから逃げたいからではありませんよ……決してね。
「これはまずい。今の内にサーシャだけでも連れて逃げてくれないかピート君。」
僕が考えていたことをディミトリさんも考えていた様子に少し驚きました。
しかし、ご指名とあらば致し方ありませんね。
「分かりました――というかディミトリさんも一緒に行かなければどの道パープルアイズは奪われてしまいますよ。」
「大丈夫だ。私はレジェス君の戦いを見届けた後、必要あらば自分で目を潰す。」
なるほど、その覚悟があるのならばもう何も言うことはありません。
僕は僕の出来ることをしましょう。
サーシャ様と二人で逃げるのです。
「先に言っといてやろう。」
やばい!
モルドスに気付かれてしまったようです。
ここは急がなければ。
「このパンドラからは主らだけでは絶対に出ることは叶わぬ。どこへ逃げてもすぐに分かる。フルガイアへと戻りたくば我を倒すしか手はないぞ。」
な、なんということでしょう。
すっかり忘れていました。
ここはパンドラ、ここへ来る時もモルドスの案内なしでは来れませんでした。
万事休す。
あとはレジェスに頑張ってもらうしかない。
「レジェス。」
「な、なんだサーシャ。」
いつも以上に真剣な眼差しをするサーシャ様にレジェスは緊張したように答えました。
「この戦い、あんたに託す。」
これで少しは弱ってくれていればまだチャンスはありそうです。
しかしまあ、サーシャ様の虚をつくフェイント攻撃には驚かされました。
やはり普段から素直じゃない人なので、そういう敵を騙すのに長けているのでしょう。
そんなことを考えているとサーシャ様からの恐ろしい視線を感じ、僕は目を背けるのでした。
「い、今のは効いたんじゃないか。」
ローラスの言葉を皆が信じたいと願いました。
しかし、そんな願いはすぐに砕かれてしまいました。
「なかなか良いパンチであったぞ、ディミトリの娘――いや、サーシャよ。」
「ようやく名前を覚えてくれたみたいね。満足だわ。」
「お前はおそらく父、ディミトリを越えている。やはりお前の目を貰い受けることにしよう。」
やっぱりダメージは、ほぼ無さそうです。
さすがにサーシャ様も全てを出し切った様子で、立っているのもやっとのようでした。
「サーシャ!逃げろ。ここはやはり全員でやるしかない!」
ディミトリさんの叫びにもサーシャ様は首を横に振りました。
「駄目よお父さん。最後まで諦めては。」
サーシャ様は何とか自分を奮い立たせようとしますが、やはり気合いだけでは何ともなりません。
その間にモルドスはサーシャ様の元へ歩み寄りサーシャ様の細い首に手をかけ掴み上げました。
「さて、どうするか。とどめを刺してから目玉を取るか、それとも生きたまま、くり抜くか。」
これはもはや一刻の猶予もありません。
サーシャ様が何と言おうとも助太刀に入るしかありません。
「やはり新鮮な方がよいだろう。サーシャよ、このままお前の目を戴く。命までは取らぬ故安心するがいい。」
「ぐっ!く、くっそ――。」
ついにモルドスの魔の手がサーシャ様の美しい瞳へと伸びていきます。
これは僕らが急いでも間に合いそうもありません。
「サーシャ様!」
僕が声を上げた瞬間でした。
僕の後方から涼しい風が勢いよく吹き抜けていきました。
突風でしょうか。
しかし、ここパンドラに風など吹いていません。
「では貰い受ける――ぬっ!?」
いつの間にかモルドスとサーシャ様の元にレジェスがいました。
その手はモルドスがサーシャ様へ伸ばした手をがっちりと掴んでいます。
「何だ、貴様は。」
「レ、レジェス。」
サーシャ様は苦しそうにしながらレジェスの名を呼びました。
「そうか貴様があのアシュベル・グレーを葬った人間か。」
それはキリエス城の地下でのことを指しています。
あの時、僕はレジェスとの久し振りの再会を果たしました。
「まだ私が残っている。私を倒してこそ本当の勝利になるのだ。」
「図にのるな人間。たかだかアシュベル・グレーを倒したくらいで我に勝てるとでも思っておるのか。」
「むろん、勝てる。貴様こそ調子にのるな。私こそが最強の戦士だ。」
こんな時、頼りになります。
もう僕らには彼しか頼れる人がいません。
だけど不安も少なからずあります。
あの真のパープルアイズを開眼したサーシャ様ですら太刀打ち出来なかったモルドスとレジェスがどれだけやれるのかという不安。
もちろんレジェスの強さは秀でています。
それだけに彼が敗れてしまった時、僕らは真の敗北を味わうことになります。
それはもちろん『死』を意味します。
「まあよかろう。時間はたっぷりとある。貴様らに生物としての格の差を見せてやろう。それまでそのパープルアイズと最後の別れでも済ませておくのだな。」
モルドスは、そう言ってサーシャ様を掴んでいた手を離しました。
「ゴホゴホッ。レ、レジェス。済まない助かった。ありがとう。」
「な、何を言っているのだ。私はただ強き者と戦いたいだけだ。」
やっぱり素直ではありませんね。
せっかくあのサーシャ様が素直に感謝をしているのに。
そう考えるとサーシャ様とレジェスはどことなく似ているような気がしてなりません。
「さあ来い、最強の戦士とやら。」
やはりモルドスは余裕の表情です。
こうなればサーシャ様だけでも連れて逃げるという手段も考えなくてはならないかもしれません。
もしもモルドスがパープルアイズの力を取り込むことに成功してしまえば、おそらく打つ手なし。
もはや奴を止めれる者などいなくなり、人間界もフルガイアも彼の手に落ちてしまうことでしょう。
だったらせめてパープルアイズを渡さずにこの場から逃亡する、という手もありです。
もちろんそうするということは、ディミトリさんも連れて行かねばなりません。
二人を連れて僕が行き、残りの皆で奴を食い止めるという方法しかありません。
何故、僕が一緒に行くのかですって?
だって僕は腕を一本失い剣をまともに振れないのですよ。
つまりモルドスを足止めするために戦うことすらできないのです。
だったら二人を連れて行くのは僕の役目。
決してここから逃げたいからではありませんよ……決してね。
「これはまずい。今の内にサーシャだけでも連れて逃げてくれないかピート君。」
僕が考えていたことをディミトリさんも考えていた様子に少し驚きました。
しかし、ご指名とあらば致し方ありませんね。
「分かりました――というかディミトリさんも一緒に行かなければどの道パープルアイズは奪われてしまいますよ。」
「大丈夫だ。私はレジェス君の戦いを見届けた後、必要あらば自分で目を潰す。」
なるほど、その覚悟があるのならばもう何も言うことはありません。
僕は僕の出来ることをしましょう。
サーシャ様と二人で逃げるのです。
「先に言っといてやろう。」
やばい!
モルドスに気付かれてしまったようです。
ここは急がなければ。
「このパンドラからは主らだけでは絶対に出ることは叶わぬ。どこへ逃げてもすぐに分かる。フルガイアへと戻りたくば我を倒すしか手はないぞ。」
な、なんということでしょう。
すっかり忘れていました。
ここはパンドラ、ここへ来る時もモルドスの案内なしでは来れませんでした。
万事休す。
あとはレジェスに頑張ってもらうしかない。
「レジェス。」
「な、なんだサーシャ。」
いつも以上に真剣な眼差しをするサーシャ様にレジェスは緊張したように答えました。
「この戦い、あんたに託す。」
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