最強の戦士ここにあり

田仲真尋

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グリフォンブルー 死闘編~ⅩⅠ部~

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ハーブティーは消耗しきった自身の身体を、クレアとクッキーに支えらながら、王妃メルバの元へと歩み寄った。

そして、残り少ない魔力でメルバの治療を始めた。


「ど、どうして私を救うの?私は敵なのよ。」


メルバは本心から、そんな疑問をハーブティーへと投げかけた。


「私にとっては、あんたの命なんかどうでもいいのよ――でも、あいつが、あんたを助けてくれって頼んだんだから仕方ないの。あいつは――レジェスは、私にとって弟子であり家族みたないなもんなのよ。その頼みを、私は簡単には断れないの、分かる?」


「だ、だからといって、私は貴方がたを殺そうとしたのよ。それでも助けようとするの!?」


メルバには到底、理解できないことであった。


「あーもう!怪我人のくせによく喋る、おばさんね、黙って治療を受けなさい!」


「お、おばさん!?――クスッ。」


メルバは思わず笑みを溢した。


「なに?」


ハーブティーは面食らった顔で、メルバに聞き返した。


「私のことを『おばさん』なんて呼ぶ人は初めてよ――なんだか、おかしくなっちゃって――痛い!」


「いいから黙ってなさい。あんた結構、重症なんだからね。」


ハーブティーは治療を続けながら思った、

「変な女。」だと。

だが同時に、こうも思った、

「悪いだけの人でも、なさそう。」だと。

その治療をウェルもプライトも心配そうに見つめていた。

メルバは、そんな二人の顔を見て、

「ああ、私はまだ一人ぼっちじゃなかったんだ。」と、痛感していたのであった。



「グリフォンブルーの忘却の王子よ。何故、自分を見捨てたグリフォンブルーの為に戦う?」


「……確かに私は、この国に捨てられたのかもしれない。だが――だからこそ私は経験できなかった人生を歩んで来られた。それは何物にも代えがたい貴重な体験だ。だから私は、私を捨てたグリフォンブルーに、むしろ感謝したい。」


「ふっ、面白い男だ。どうだ私と組まぬか?お前を、この世の王にしてやろうぞ。」


「なに!?世界の王――いかんいかん!甘い誘惑に心が揺れた。ゴホン!……断る!」



「あいつ喋れるようになって、思った事を全部口に出してるな。」

「……馬鹿なんだよ、きっと。」


クレアとクッキーは、呆れた顔でレジェスを眺めながら言った。



「どうせ利用されるだけされて、捨てられるのが関の山だぞ。」


「構わん!私は私の、やりたいように生きるのみだ。」


「そうか、残念だ。では心おきなく――死ね!」


アシュベル・グレーはメルデを貫いた槍を突き立てるようにして、一直線に突っ込んできた。

私は、この時を待っていた。

素早く魔法を発動させるべく、準備はすでに万端であった。


「ディサピアー!」


私はアシュベル・グレーへ向け上級魔法を放った。

タイミングは完璧であった。

アシュベル・グレーは攻撃の体勢にはいっており、避けることは不可能。

私の魔法により消滅する――はずだった。


「ぬるいな、忘却の王子よ!」


アシュベル・グレーは私の魔法を避けようともせずに突進してきた。

そして奴の体を捉えた筈の私の魔法はアシュベル・グレーに触れた瞬間に弾け飛んだ。

そして、油断していた私は一瞬判断が遅れ、左肩を槍にて貫ぬかれてしまった。


「ぐっ!何故だ!?」


「仕止め損なったか――どうした?忘却の王子よ。腑に落ちない顔をしているが……ああ、さっきの屑みたいな魔法のことか?そうそう、言い忘れていたが、この完全体になった私には魔法など効かぬのだ。お前は剣士だから問題ないだろうと思って黙っていたが、小賢しい魔法も使うのだな。」


アシュベル・グレーは不敵な笑みを浮かべて言った。


「魔法が効かない……そんなことがあり得るのか!?」


この時、レジェスは軽い混乱状態に陥っていた。

これまでに魔法が効かない魔物など一度たりとも出会ったこともなかったレジェスにとって、それは予想以上のインパクトを彼の心に深く植えつけたのだった。


アシュベル・グレーは自身の槍を物珍しそうに眺めていた。


「いったい、どんな身体をしているのだ、槍が曲がってしまったぞ。」


そう言ってアシュベル・グレーは槍を投げ捨て、背に生えた白と黒の翼を広げた。

そして白と黒の羽を一本づつむしり取った。

その羽根は、みるみるうちに形を変え二本の剣となった。

それを両手に持ち、アシュベル・グレーは再び素早くレジェスを襲った。


私も今度は剣を抜き、応戦する。

しかし、アシュベル・グレーの二本の剣の猛攻に、徐々に押されていく。

そして、一瞬の隙をつき、アシュベル・グレーは剣の一本を捨て、

「黒の衝撃ブラックインパクト!」という黒い球体を掌の上に出現させ放った。


その玉を私は、ギリギリで避けた。

すると、それは部屋の壁に勢いよく、ぶつかった。

その壁には、その球体の十倍程の穴が、ぽっかりと空いていた。


「なんという威力だ。触れてしまっていては危なかった。」


私の額を冷や汗が流れ落ちた。


「いいね。あのタイミングで避けるなんて、素晴らしい。」


アシュベル・グレーは、まるでゲームでも楽しむかのように言った。

そして今度は私との距離を保ったまま、

「白の衝撃ホワイトインパクト!」を放った。

今度も黒の衝撃と同じ大きさの球体であったが、その速度は黒の衝撃を遥かに越えていた。

私は避けれないと踏むと、剣で、その玉を真っ二つにした。

しかし、その瞬間、白の衝撃は激しく破裂した。

その破裂した衝撃に私は後方へ大きく吹き飛ばされてしまった。


「うわっ!」


「白いのは触っちゃ駄目だよ、ククク。」


私は全身を痛めながらも、すぐに立ち上がった。

それを予知していたかの様に、すでにアシュベル・グレーは次の攻撃に移っていた。

今度は私との距離を一気に詰めると、

「ディエティミラー!」と、剣を折った。


それは四大剣士のオリオスの剣を折った技であった。


「終わりだ、死ね!」


アシュベル・グレーの剣が私に突き刺さる瞬間、その時だった。


「ぐわぁ!!」


アシュベル・グレーと私の間に割って入ってきた一人の男性に、その刃は突き刺ささっていた――ルベールである。


「老いぼれが邪魔をしおって!」


その場にルベールは力なく倒れこんだ。

そして、私はルベールを、抱き抱えた。


「レ、レジェス様……幼い頃の貴方を救えなかった事だけが心残りだった……最後にお役に立てて……よ、よかった……。」


私の記憶にも、朧にしかない男だったが、ルベールはずっと過去の事を引き摺って生きてきた。

最後の最後に教育係りとしての責任を果たせ、その顔はとても穏やだった。


「ディルク殿。彼を――ルベールと皆を避難させてくれまいか。」


私の頼みにディルクは躊躇いを見せたが、

「はっ!」と、その命を受けた。

ディルクはルベールを抱え、他の者を外へと案内した。

オリオス達四大剣士は自力で立ち上がりディルクの後に続いた。


「勝つのだぞ。」


オリオスの言葉に私は力強く頷いた。


もはや自力で立ち上がれないラルナをダマンは背負って立ち上がった。


「よいか、お前にこの国の運命がかかっておるのだぞ。」


ラルナの言葉に私は更に覚悟を決めた。


ムーンも師匠のトンボを背負い、立ち上がる。


「チーズケーキ忘れるなよ。」


ムーンの言葉に私は、

「もちろんだ。」と答えた。


そして気を失っているのか眠っているのか分からないが、トンボは右手の拳を上げて私を鼓舞した。


ハーブティーはメルバの治療を続けながら、クレアとクッキーにメルバを運ばせた。


「私は、ここに残してくれませんか?」


メルバはハーブティーの腕を掴み、懇願するように言った。

ハーブティーは、深くため息を吐き、

「そう言うのではないかと思っていたが……本当に言うとはな。」と、呆れた様な顔をした。


「仕方ない、ここで治療を続けよう。お前たちは表に出てろ。」


「ありがとう。」


メルバは涙を浮かべながらハーブティーに礼を述べた。


「私は姉さんと共に残るよ。」と、クレアは強い意思を表情に宿した。


しかしクッキーは、

「それじゃあ、僕はこれで。」と、王の間を後にしようとしたが、クレアに首根っこを掴まれ、

「あんたも、ここにいなさい。師匠が残るんだから当然でしょ。」と、言いくるめられ、クッキーは渋々と、その場に残った。



「私も残ります。」


声を上げたのはウェル王子だった。

その眼差しには、これまでの頼りない少年だったウェルとは違う、信念を感じとったプライト国王も、また、

「私も、この国の行く末を此処で見させてもらおう。」と、言った。


「グリフォンブルーの王家がこの期に及んで揃って一致団結するとは、皮肉なものだな。」


アシュベル・グレーは、私を見据えながら言った。


「私は、この国と人々を守る為、断じて負けぬ!」


「レジェス兄さん、これを!」


ウェルが持ってきたのは、サフィアの剣だった。

私は、その剣に魂を込めて戦うことを誓った。


「また、へし折ってやる!ディエティミラー!」


アシュベル・グレーは先ず、剣を折ってしまおうと動き出した。

しかし、私は落ち着いていた。


「スネークコンディション!」


私は魔法剣で剣を蛇のように軟化させた。

剣は衝撃を受けて柔軟に、その形態を変え攻撃を凌いだ。

アシュベル・グレーの攻撃はレジェスの剣を狙ったが、それは敢えなく失敗に終わったのであった。


「地獄の業火ヘルファイア!」


そして、私はサフィアの剣に魔法をかけた。

剣は激しく炎を纏い躍り狂うように燃え盛った。


「ほう、魔法剣も使うのか。器用な剣士だ。」


余裕をみせるアシュベル・グレーの言葉に、私の不安が高まった。

それは、このアシュベル・グレーに魔法剣が通じるのか?という心配が、あったからにほかならない。

だが、物は試しである。

私は考える事をやめ、アシュベル・グレーへと挑んだのであった。



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