MELODIST!!

すなねこ

文字の大きさ
4 / 88

#004 Fuga

しおりを挟む
ウィーン・39歳男性「21歳の息子がいます。反抗期なのかパパの事をゴミを見るような目で見てきます。ゴミを見る時の方が優しい顔をしています。パパの事もゴミを見る時のように優しい目で見て欲しいです。文字数


…………………………………………………………………………………


 3つの大編成オーケストラ用の交響曲とソリスト用の全21楽章の超絶技巧は、それぞれ日本神話をモチーフに書かれた旋律師メロディスト用の楽譜スコアである。

 呪詛を込めた特殊な作曲技法によって紡がれたメロディーは、一流の奏者が演奏する事によって莫大な量の音エネルギーを生み出す事ができる…とされている。
 音量、音程、拍節の音エネルギーを生み出す三要素が、最も効率の良い巨大な合成波になるように演奏できる者は極限られており、楽団ギルド内でも実力者にしかその楽譜スコアは提供されない。

 また、呪詛によって大きな力点『祝福』と呼ばれる特殊な能力を得る代わりに、その奏者には『災厄』が一生ついて回るという。
 『災厄』の程度は曲の難易度によって異なり、超絶技巧の中でも第1から第3楽章までは奏者に対して生命に関わる負荷を強要するものであると言われている。

 第1楽章『天照大御神アマテラスオオミカミ』、第2楽章『月夜見命ツクヨミ』、第3楽章『素戔嗚尊スサノオノミコト』は既に完奏した旋律師メロディストが存在し、それぞれの災厄は解き放たれた状態であるという。


 楽団ギルド専属の作曲家であり、それらの楽譜スコアを世に生み出した鬼才は日本人であった。


 右神託斗ウガミタクトの名を知らない旋律師メロディストはいない。


…………………………………………………………………………………



 連日閑古鳥が鳴いている良縁屋に、珍しく客がやってきた。
 ネイビーの甚平を纏い、足元はビーチサンダル。興味津々と言った様子で陳列された金属塊を眺めているのは、スライドカットの入ったオールバックショートカットの男。
 見た目だけで年齢を推測するのは非常に難しい風貌で、ただ一つ言えるのはやたら顔が整っている、という事だった。


 いらっしゃいませーと声を掛けた後は遠くから見守っているだけの祐介であったが、暫く店内を見て回った男が手を挙げたのを見て、カウンターから出る。
 歩み寄りながら和かに接客を始める祐介だったが、すぐに関わってしまった事を後悔することになった。

「何かお探しですか?」
「うん、うん、探してる。僕の大切な一人息子を探してる」

何だコイツ?というのが第一の感想。しかし、邪険に扱うわけにもいかず、とりあえず話を聞く。

「息子さん…どんな見た目をしてます?」
「あー…天パだね。マッシュボブっていうの?フワッとした感じで……あと、顔は僕に似てるかなー……」
「えーっと…」

勝手に語り始めた男を見て相手にしてはならない部類の人間であると気が付いた祐介は、ちょうど階段を降りてきたシェリーに助けを求めた。
 ブンブンと手をこ招きながら必死に口パクで何かを伝えようとしている。
「……なに?」
彼女はは面倒くさそうに遠くから返事をすると、あたふたする祐介の隣に立っている男を見て、眉を顰めた。シェリーにとっては見慣れない服装。そして、明らかに胡散臭い表情。

「誰、それ?」
「お客さんだよ、お客さん。人を探してるらしい」
「人?こんなガラクタ売ってる店に来たって見つかる筈ないじゃん」

まったくもって正論を返してきたシェリーを見て、男は何故か目を輝かせる。

「可愛い!外国の子かな?日本語上手だねー」

ニコリと笑った男に、褒められたのにも関わらず何故か苛立ちを覚えたシェリー。祐介と同様、関わらない方が良いと察すると、カウンターテーブルに突っ伏して寝たふりを決め込んでしまった。

 いよいよ1人で対応せざるを得なくなってしまった祐介。ニヤニヤと意味不明な笑みを浮かべて店内を見回している男をどう追い出そうかと悩んでいた所、最後の砦が近付いてくる音に表情を明るくした。
 居住スペースと繋がる奥の扉が開き、眠そうに目を擦っているTシャツ短パン姿の京哉が現れる。


「あぁ!京ちゃん!お客さんなんだけど人を探してて…」

まだ眠たそうに気怠げな様子で目線を上げた京哉の顔がみるみる青褪めていき、その視線の先は祐介の向こう側に立つ件の男をとらえていた。

「お…親父……」

京哉から発せられた予想だにしなかった言葉に、狸寝入り中だったシェリーも思わず顔を上げる。

「父親!?キョウヤの!?」

 客の男と京哉を何度も交互に見たシェリーは、先程感じた苛立ちの正体に合点がいった様子。あれだけ毎日飽きもせずくだらない喧嘩を繰り返してきた相手と同じ遺伝子を感じ取っていたのだろう。
 驚愕する二人の反応に満足げな表情を浮かべていた男は、ヒクヒクと頬を引き攣らせて呆然と立ち尽くしている京哉の近くへとスタスタ歩み寄り、その両肩を力強く掴んだ。
「大きくなったなぁ、我が息子よ」
「…いや、最後に会ったの18歳の時だろ。背格好変わってねーよ…」
変な汗をかきながら返す息子に、男はそうかぁ?とすっとぼけた表情で笑い飛ばしていた。

…………………………………………………………………………………




 カウンターテーブルに並んで座った2人は、確かに親子だとわかる程度には顔が似ている。しかし、父親の方が年齢不詳過ぎる見た目の為、普通は京哉ほどの年齢の子供がいるとは思えない。

右神託斗ウガミタクトでーす。よろしく、よろしく」

祐介とシェリーに無理矢理握手を迫って満足げな表情を浮かべている様子に、彼らは本当に親子なのだとここで確信した。すごく変な奴だ、という感想は第一印象のままだ。

「……京哉はこの人を水で薄めて作ったのか…」

小声で的確な表現を呟いているシェリーの手の甲を捻りながら、祐介は咳払いをした。

「それで、京ちゃんをお探しだったようなんですが…ご用件は?」
「あぁ、ちょっと仕事で日本に来ててさ。京哉にも手伝ってもらおうと思って」

3人の視線が一挙に集中し、京哉はあからさまに嫌そうな顔をした。そして、託斗の方を向いて頻りに首を横に振る。

「忙しい、忙しい…ほんっとに…」
「本当に?ありがとう、助かるなぁー」

全く会話が噛み合っていない事に気付いていないかのように振る舞う託斗は、「それじゃあ3時間後に御苑前で」と勝手に言い残して席を立つ。そのまま引き止める暇もなく嵐のように良縁屋を出て行ってしまった。



 父親の来訪の間、別人のように静かだった京哉は頭を抱えて唸る。赤の他人である祐介とシェリーから見ても、あんな父親は願い下げである。勿論、第一印象ままの人間であるならばの話だが…。

「大丈夫?仕事って言ってたけど、楽団ギルドの人なの?」
楽団ギルドの人も何も……専属の作曲家、アレ…」

気怠そうに椅子にもたれ掛かると、壁かけ時計に目をやり、深い溜め息をつく。
 詳しくは話せないが、京哉が所属する組織にとって大変重要な人間であり、本来一人でブラブラとほっつき歩けるような立場ではないと言う。
 そして、親子関係がうまくいっていない家庭など五万と存在するが、京哉の様子を見るに彼らもその部類なのだろう。ここまで彼のペースを乱す父親とは一体如何程の人物なのだろうかと、祐介は逆に興味が湧いてきてしまった。

 しかし、あの男には触れないで欲しいと言う雰囲気で話を途中で遮った京哉は徐に立ち上がると、カウンターに頬杖をついているシェリーに歩み寄り小さな頭を上から鷲掴みにしてグリグリと撫で回した。
「あー…何日か戻れないと思うから、真ん中で寝てて良いぞ」
触るな!とブチギレられた京哉は、深い深い溜め息をつきながらカウンターの端に据えられた黒電話の受話器に手を伸ばす。




…………………………………………………………………………………




『はははっ!その様子じゃもう着いたんだね、タクト!』

いつもの無駄に陽気な調子で笑い飛ばす受話器の向こう側の男に、京哉はグルグルと唸って不満を露わにする。

『今回は社長直々の依頼だよ。ほら、この前キョウヤが送ってきた楽譜スコアあっただろ?』

「第17楽章ね」

『あれを通しで演奏したの、楽団ウチ旋律師ヒトじゃなかったらしいんだ』

彼の言葉に耳を疑った京哉は、あの日迎賓館で岡島の荷物から拝借した楽譜スコアの状態を思い出す。

 ハードカバーの裏表紙に、XV IIの焼印を確かに確認した。楽団ギルド旋律師メロディストの1人が完奏し、災厄の解放と能力の会得を終えた代物だと思い、京哉は持ち主を探す為に一度本社に送ったのだ。

『元の持ち主は、若いトランペッターだったらしい。エースだったんだけど、マエストロのレッスンの最中に任務に出て殉職しちゃったって』

「それで、どういう経路かは不明だけど楽団ギルド以外の人間が完璧に演奏してしまった…と」


 音楽等禁止法によって厳しい取締を受けている日本の音楽家達は、既にその多くが逮捕され、隔離施設に収容されていると聞く。
 楽器の類を取り上げられた人間が超絶技巧の完奏を成し遂げられる訳がない。自ずと、今でも日常的に演奏ができる環境にいる者に限られてくる。

 そして、その人物に関して京哉には心当たりがあった。

 岡島の背広から奪い取った、一枚のカードキー。


『キョウヤ、君にはタクトと一緒に第17楽章を解放してしまった人物を特定し、災厄との因果を断ち切って欲しい』

「断ち切る…?」

聞き覚えのない指示内容に、京哉は思わず眉を顰めてそれを繰り返す。

『ああ、君にはまだお願いした事無かったね。タクトに教えてもらうと良いよ、せっかくの機会だから』

ブツリと音を立てて唐突に会話が終了し、京哉はゆっくりと受話器を元の位置に戻した。



 楽団ギルドから受ける仕事には2種類ある。顧客から依頼を受ける場合と、楽団ギルド内部から直接任務が下る場合。
 前者は、その依頼内容が報酬面以外にも『楽団ギルドにとって恩恵があるかどうか』という査定を受けてから各地の旋律師メロディストに伝達される。
 一方、後者は楽団ギルドに影響のある内容だと確定している案件だとされている。
 特に今回はロジャーからの任務ということで極めて重要な内容である事は明らかだった。それに、わざわざ楽譜スコアの作曲者本人を派遣してくる辺り、社外の人間による能力の会得とはよっぽど楽団会社にとって都合の悪い事態で早期解決したいと言う事なのだろう。



 カウンターチェアから立ち上がると、重い足取りで目の前を通り過ぎる京哉をシェリーと祐介は黙ったまま目だけで見送った。そして扉の向こう側にフラフラと彼が消えたのを確認すると、顔を見合わせる二人。

「…元気無かった?お父さんのせい?」
「あれくらいが丁度良いよ…定期的に来てもらおう、あの人にさ」

京哉の考えている事などつゆ知らず、静かになった彼の様子に満足げに笑うシェリーなのであった。


…………………………………………………………………………………




 彼女が目隠しを外されたのは、首に得体の知れないチョーカーを巻かれて地下に押し込められた日以来であった。
 あの日、渡された曲を1日で覚えるように言われた音楽家囚人達。できなかった者はその場で頭を撃ち抜かれて死んでいった。
 先に死ぬか、後で死ぬかの違いかもしれない。しかし、音楽家であるという理由だけで囚われ不当な扱いを受け続けた彼女らにとって、これは紛れも無く外の世界に繋がる最後の…天から降りる蜘蛛の糸程度の希望でもあったのだ。



 監視人に連れて来られた小部屋には岡島と名乗る政治家が来ており、ジュラルミンケースから取り出されたハードカバーの分厚い楽譜を手渡された。

「これは実験だ」

そう告げられた彼女は、何度も集音装置の前でヴァイオリンを演奏させられた。


 指の先から血が滲んでから久しい362回目の演奏で、その事態は発生する。


 集音装置の先に繋がる巨大なハンネス機関がまばゆく光を放ったかと思うと、隙間という隙間から蒸気を上げて壊れる程の勢いで駆動し始めたのだ。

「…これは……!やはり、奴等はこんな秘密を隠していたのか!」

駆け付けた岡島がニヤリと怪しく笑った様子が視界に入ったあと、急に喉が焼けるように痛み出し、彼女はその場に倒れてしまった。


 首に渦巻く熱に魘されながらようやく目を開けると、地下に閉じ込められていた筈の彼女が何故か池のほとりに座っていた。
 雲一つ無い、月明かりがよく通る夜だった。
 数ヶ月ぶりに気持ちの良い屋外の空気を吸いながら、彼女は池に沿って歩き始めた。しかし、すぐに違和感に気がつく。
 目線がかなり低いのだ。
 首を傾げながら池の水面に顔を近づけると、そこには艶々とした白い毛並みを従えた狐が映り込んでいた。手を前に突き出すと、同じく白い毛に覆われた獣の前足が見える。
 悲鳴をあげようにも、遠吠えのような鳴き声が出てしまうだけ。バタバタと地面をのたうち回っているが、首に巻きつけられたしめ縄の先の大きな鈴がリンリンと鳴るばかり。
 途方に暮れるしかなくなった彼女は、いつまでも遠吠えを続けていた。



…………………………………………………………………………………



 ジリジリと照りつけるような日差しを浴びながら、京哉は約束通り新宿御苑、大木戸門前にやってきた。ジュラルミンケースを抱えている彼に対して、後から姿を現した甚平姿の男は手ぶらである。
 緑溢れると言ってしまえば聞こえは良いが、完全に手入れを放棄された公園内は植物が好き放題のさばっており、雑草の類は腰のあたりまで伸びているものまである。
 
「ジャックから話は聞いただろ?」
「…第17楽章が知らねー奴に演奏されたって話」

そうそう!と何故か嬉しそうな様子の託斗は、京哉の肩に腕を回しながら続ける。

「本職が吹けなかった譜面、クリアできるならアリだと思うんだよねー僕は」

ニヤニヤと怪しげに笑う父親の様子に、京哉は顔を引き攣らせる。まさかと思いながら、そのまさかが的中してしまうのがこの男なのだと、息子である彼は一番熟知していた。

「スカウトするために、わざわざ日本来たのかよ…」
「ピンポンピンポーン!だってさぁ、人手不足なのよ弊社も?若手を育てるのも一苦労な訳だし、ヘッドハンティングってやつしちゃっても良いんじゃないの?」

嬉しそうに宣う託斗の腕を引き剥がした京哉は、スラックスのポケットから一枚のカードキーを取り出して彼の目の前にかざした。

「ニュー千代田区画のど真ん中に、クソデカい発電施設がある。元外務大臣の岡島は僕に殺される前までそこに出入りしていたらしい。このカードキーで中央のハンネス機関近くまで潜れる筈だ」


 今の日本で楽器を演奏できる人間がいる場所は限られる。例の楽譜スコアを所持していた岡島とも関連のある発電施設の地下に閉じ込められているオーケストラであれば、それが可能ではないかと京哉は踏んでいた。
 何より、あの日…岡島が楽譜スコアの演奏によるハンネス機関への影響についてジェザリックに鼻高々に話していたのを、京哉は給仕係に扮して立ち聞きしている。
 あの発電所に関わる人間が楽譜スコアを演奏したに違いない。

 だいぶ的を得た提案をしたつもりだった京哉だったが、微妙な反応をしている託斗は眉を顰めている。何故だろうと小首を傾げると、どこから持ち出してきたのだろうか、彼の背後の草むらには害獣駆除用の檻が置いてあるのが目に入った。

「…何それ?」
「どう見ても罠でしょうに。本社に頼んで僕が指定した数箇所にコレと同じ檻を設置してもらってんの」
「いやいや、演奏した奴がそんなんで捕まえられるかよ。動物じゃあるまいし…それに音楽家なら多分政府に捕えられてて…」

 託斗は京哉の反論などつゆ程も気にせず、彼にトランシーバー程の大きさの端末を押し付けた。

「檻に何か引っかかったら、センサーに反応してソレに信号が送られてくるからさ。逃げられる前になるべく早く駆け付けて檻の中を調べてよ」
「逃げ…いや、ちょっと!だから、コレって害獣用の罠じゃん!チンパンも捕まらねーよ!」

 人の話を聞かない人間だとは熟知していたが、自分の話すら重要な所は何一つ伝えてくれないとまでは思っていなかった。
 ニッコリ笑いながら踵を返して風のように去っていった父親の背中を見つめる京哉は、途方に暮れて泣きそうになっていた。


…………………………………………………………………………………





 炎天下を避ける為、近くの廃ビルに入る。
 割れた窓から熱風が吹き込んでくる為、決して涼しいとは言えないものの、日陰に入るだけでも体感温度はだいぶマシになった。
 石油が世界のエネルギーの中心だった時代に排出された温室効果ガスの影響によって、現在、夏の平均気温は当時と比べて5度近く高くなっている。
 その為、夏の日差しがあるうちは屋外に出ないように勧告が出される程であった。



 数時間経過しただろうか。暑さでボンヤリとしながら虚な眼差しで端末のモニターを見つめ続けていた京哉の背後に、一つの足音が迫っていた。意識が遠退いているせいか、彼は気付いていない様子。
 ガサッと真後ろでビニール袋の音が鳴り、慌てて振り向く京哉。敵であれば完全に遅れを取ってしまう所であったが、彼の視線の先には見慣れた白衣姿の青年が立っていた。

「…っ、麗慈!?何でこんな所に…」

目をパチクリさせながら尋ねると、彼は京哉の隣にドカッと腰掛けてきた。そして、尋常ではない量の汗をかいている京哉を見て呆れた表情を浮かべた。
「取り敢えず飲め。死ぬぞ」
麗慈がビニール袋に入れて持ってきたのは、熱中症対策用の清涼飲料水。500mlのペットボトルを取り出してキャップを捻り開けると、京哉の前に差し出した。

「託斗が俺んところ来てしばらくダベってたんだよ。で、よくよく聞いたら仕事お前に押し付けて来たって白状しやがったから」
陽はだいぶ西に傾いてきたが、まだ外気温は高い。自分を心配して来てくれたのだと感激していた京哉だったが、「いや、全然」と言われて愕然とする。

宇迦之御魂神ウカノミタマノカミに興味があって来た」
「………は?何ソレ?」

キョトンとする京哉を見て、麗慈は逆に信じられない…といった表情を浮かべた。

「第17楽章は宇迦之御魂神ウカノミタマノカミをモチーフにして作られたソリスト用の超絶技巧だろ。お前、それでもアイツの息子か?」
「いや、いちいち全部覚えてねーだろ、そんなの」

 全部で21曲存在する超絶技巧には、それぞれ別の日本神話がモチーフとなっている。麗慈はその全てを覚えているというのだ。

 託斗に言い渡された任務について説明し、一通りの愚痴を吐き終えた京哉は眉を顰めながら麗慈に尋ねた。
「第一、何で獣用の檻の監視なんだよ?親父は何してんだ?」
「さぁ…どこ行くんだって聞いても、よくわかんねー事ぶつぶつ呟いてたぞ。マジで話噛み合わねーからな、アイツ。頭イカれてんだろ」
本人の前で父親を割と酷めにディスられるも、本当にその通りだと頷くしかない京哉は頭を抱えて唸るしかなかった。


…………………………………………………………………………………






 端末が信号を受信したのは、それから数分後の事であった。モノクロのディスプレイには『ミサキイナリジンジャ』と表示されている。

「ミサキイナリ…?って何処だよ?」
「ニュー千代田区画内だな。こっからだと結構離れてる。乗ってくか?」

廃墟の柱の影には、麗慈が診療所から乗ってきたというネイキッドバイクが止められている。漏れなく小型ハンネス機関を組み込んだ違法単車だ。


 麗慈がエンジンを始動すると、タンデムシートに京哉が跨り、地面を駆けるタイヤが土埃を巻き上げながら廃墟を飛び出した。

 街灯のない荒れた道をヘッドライトの明かりだけを頼りに進む。環状道に入り、夜景が煌びやかなニュー千代田区画目掛けてエンジンを蒸していくと、左手側に遊園地跡が見える水道橋駅を通り過ぎてすぐに赤い鳥居を構えた神社が見えてきた。

 鳥居の手前にバイクを停車させ、立派なお社の手前まで階段を駆け昇っていけば、無造作に置かれた例の罠がガタガタと揺れている。
 薄暗い中目を凝らすが、どうやら野良猫が引っ掛かっているようだった。

「ハズレか?」
後からのんびりと階段を昇ってきた麗慈が追いつき、檻の中身を覗き込みながら問う。
 シャーシャーと威嚇する猫を檻から逃し、近くの茂みに入っていく後ろ姿に手を振って見送った京哉は、深く溜め息を付きながら立ち上がった。
 文句の一つでも垂れようとした時、また端末が信号を受診し、ピカピカとランプが光る。

「カサマイナリジンジャ?」
「人形町の方だな。10分ぐらい走れば着くぞ」

急いで階段を降りると、二人は笠間稲荷神社に向けてバイクで走り出した。

「あの檻が楽譜スコアの奏者探しに何の関係があんだよ?」
「それがわかれば苦労しねーんだよ!親父に押し付けられただけだし」


 御茶ノ水駅の前を通過し、神田川を左手に見ながら進んでいく。清洲橋通りに入り、暫く直進していくと小学校跡地の奥に石造りの白い鳥居が見えた。


 賽銭箱を設けた簡易的なお社の正面に乱雑に置かれている罠には、今度は何も入っていなかった。
「カラスだろ、多分」
麗慈が指差すお社の屋根を見上げると、10匹ほどのハシブトガラスがバタバタと翼を羽ばたかせていた。彼らがイタズラしているうちに罠が作動してしまったのだろう。

「こんなん入れといたら、普通に野良猫だのカラスだのが入ってくるよな…」

檻の中には、升に入った米、白い小皿に乗った塩、小さなお猪口の水が用意されている。京哉の不満げな表情を横目に、並べられた三つをじっと眺めていた麗慈はある事に気が付いた。


…………………………………………………………………………………



「稲荷神社に供物……託斗は狐を捕まえようとしてるんじゃないか?」

ボソリと呟いた麗慈に、狐?と京哉が繰り返す。

宇迦之御魂神ウカノミタマノカミは五穀豊穣とか商売繁盛の神だが、何やかんやで稲荷神と同一視されてる…あー、つまり狐だな」

ポカンとしている京哉に、なるべくわかりやすく説明しようとして途中で諦めた麗慈は、そうまとめた。

「これで2箇所目だが、どちらも稲荷神社だ」

手で狐の顔を作って見せた麗慈の意見を聞いて、確かに…と納得しかけた京哉だが、やはりひっかかる。

「いくら廃れたっつっても、都心部にいるか?狐…」
楽譜アレを書いた張本人が付けてる目星なら、今の所一番信用できるだろ」

続けて信号を受信した端末をスラックスのポケットから取り出した京哉は、本当は知りたく無いと思いながらもその質問を投げかける。

「なぁ麗慈…都内に稲荷神社って何箇所あんの?」

そう聞かれると、暫く考え込んだ麗慈は白衣の両ポケットに手を突っ込みながら口を開いた。

「……ドンパチで鳥居が残ってない所も含めると、大体100箇所だな」

100という絶望的な数字を聞き、白目を剥く。託斗は罠を準備させたのは『数箇所』と言っていたにも関わらず、だ。

「まぁ、仕事なら仕方ねぇよな。頑張れよ」

じゃあな、と踵を返した麗慈の白衣を掴んで無理矢理引き留めた京哉は、信じられないという表情を浮かべている。

「え?ココで帰る?嘘でしょ!?最後まで付き合ってよ!宇迦之御魂神ウカノミタマノカミが気になるって言ってたじゃん!」

「気になるけどな。俺も仕事があるし」

それじゃあな、と再び帰ろうと歩き出した麗慈の、今度は腰に掴まってわんわんと騒ぎ出した。

「どうせ死んでる奴しか運ばれて来ないんだから良いじゃん!生きてる僕を助けてよ、ドクター!!」
「不謹慎な奴だな…。それに俺は医者であって、運転手じゃねーぞ」

もっともな理由で断ろうとする麗慈に、京哉はしつこく食い下がった。ここで一人になってしまっては困る。移動手段が無くなってしまうし、何より100箇所もある稲荷神社を自分だけで周ろうなんて…想像しただけでも精神が崩壊してしまいそうだ。

「何でもします神様仏様麗慈様っ!」

必死にしがみついてくる京哉のその言葉に、麗慈は反応した。
「何でも?」
首をブンブンと縦に振る姿を見て、仕方ねぇなーと溜め息混じりに答えた麗慈の事が、この時の京哉には本当に神様のように思えた。じんわりと昇ってきた朝日が彼の背中に当たり、後光がさしているように見えていることも相まって。



…………………………………………………………………………………




 それから京哉と麗慈の二人は、数分、時には数時間おきに信号を受信する度に示された稲荷神社に向かって檻罠の中を確かめる作業を続けた。
 野良猫が引っ掛かっている事が大半で、何も入っていない時は鳥のイタズラである。

 炎天下の中、又は熱帯夜の中連日連夜都内を奔走し、疲弊しきった捜索5日目。
 廃墟の中で仮眠を取っていた所、端末が信号を受信した。
 コレまでに檻罠の中を確認しに行った稲荷神社の数は67箇所。そろそろ本命に当たりたい所ではあるが、期待するとハズれた時のショックが大きい事はこれまでの4日間で十分に学んでいる。

 京哉は無言のまま出発する支度を整え、先にバイクに跨っていた麗慈の腰に腕を回した。
 相変わらず容赦の無い太陽からの仕打ちで、気持ち良く風を切って走るという訳にもいかず、生温い湿った風に纏わりつかれる。

「京哉ぁ……覚悟しとけよ、お前…」

疲れ切った声色で告げる麗慈の背中に顔を埋めると、消え入りそうな声で「ハイ…」と答えた。





 千代田稲荷神社に到着すると、こじんまりとしたお社の前に無造作に設置された檻が見える。

「…おい」
「ああ……やっと来たな…」

 今までとは明らかに異なる様子に警戒を強める。
 檻一杯に詰まっている白くてふんわりとした毛は尻尾であろうか。ガタガタと小刻みに揺れてはいるが、まだ二人の接近には気付いていない様子だ。

 姿勢を低くしてそっと檻の正面に回り込むと、やはり中には真っ白な狐が捕えられていた。首には先端に大きな鈴のついたしめ縄が巻きついており、野生ではない事は明白である。そして何よりも普通・・でない事を証明しているのが、その狐の尻尾であった。二股に分かれ、左右別の動きをしている。
 静かにしゃがみ込んで狐の顔を伺うと、怖がる様子は無くむしろ悲しそうに鳴き声をあげていた。早く出してくれとでも言いたげに。

「檻から出しても大丈夫か、コイツ?」
京哉が麗慈に尋ねると、何故か狐の方がこくこくと首を上下させている。言葉がわかる様子だった。
 半信半疑ながらも鍵を外し、扉を開けてやる。ふんわりとした獣がゆっくりと外に出てその場にちょこんと座った。そして、逃げ出すどころか、京哉の脚に頭を擦り付けてくる。
「コレが宇迦之御魂神ウカノミタマノカミ…?」
「なんか普通にアニマルだな…」

明らかな人工物を纏ってはいるものの、ただの狐にしか見えない獣。捕まえたは良いが、これがどのように事態解決に繋がるのかなど全く検討もつかなかった。


…………………………………………………………………………………






 ペタペタとやる気のない足音は、ビーチサンダルの底から鳴っていた。
 ニュー千代田区画の中心、巨大なハンネス機関を持つ発電所の地下深く。ネイビーの甚平姿があまりにも場不相応であった。

 カードキーを使って分厚い防音扉の向こう側に足を踏み入れた託斗は、目の前に広がる大編成のオーケストラに拍手を送った。
 いきなり耳に届いた乾いた破裂音に、何事かと戸惑いながらも演奏を止める訳にはいかない彼らは、目隠しの向こう側を行ったり来たりする足音に怯え始めた。

 周囲を見回した託斗は、巨大なタッチパネルを操作するための台の上に飛び乗ると、どこからか取り出してきた指揮棒を左手に構えた。

「素敵な宵にしようか……終焉を奏でる時だ」

口元に薄らと笑みを浮かべた託斗が指揮棒を振ると、オーケストラの音量が数倍に大きくなる。

 集音装置はグラグラと揺れ出し、ハンネス機関の駆動部はギア同士が擦れる場所から火花を上げるほど激しく高速で回転を始めた。各部品の接合部が振動によって外れ、蒸気が逃げるための配管同士を繋ぐ安全弁は本体タービンから近い箇所から順に弾け飛んでいく。

 出力異常を検知した中央制御室の作業員達は、室内に鳴り響くアラームの輪唱にパニック状態となっていた。
「タービン1号機から3号機までの過負荷を確認!」
「冷却水漏れを確認!十分な冷却ができません!」
「このままだと、10分以内に全装置が爆発します!」
駆け回る作業員達を目の前に、額に汗を滲ませて歯を食いしばる作業管理者が避難指示を出す為の緊急ボタンを押下した。
 アラームに非常ブザーの警告音が重なり、作業服姿の人間が一斉に退避を開始する。

 振動はやがて大きな揺れとなり、地震のようにオーケストラの並ぶステージも揺らし始めた。
 非常ブザーに合わせるように奏者達のチョーカーが赤く明滅し始める。そして、次々と爆発が起こり彼らの首を吹き飛ばしていった。首を失った胴体の頸動脈から噴水のように血が吹き出し、託斗の頭上から赤い雨が降り注ぐ。

 この、非人道的方法で成立している発電施設は、プラントの緊急事態の際には全ての奏者を処刑するように最初からプログラムされていたのだろう。
 楽器の音色が完全に消えると、託斗は虚げな表情で目を細めて指揮棒を振っていた左腕を静かに降ろした。


…………………………………………………………………………………




 排気音を響かせながら環状道を飛ばすネイキッドバイク。運転する麗慈と背中合わせになってタンデムシートに跨っている京哉の腕には、真っ白な毛に覆われた狐の姿があった。

「なんか発電所の方からヤバい音がするんですけど」

違法な方法でしか電気を得ることが出来ない一般市民に対する嫌がらせの如く、日々夜景を輝かせていたニュー千代田区画では大規模停電が発生しており、全ての電気が消えていた。
 暗闇をヘッドライトの明かりで裂いて走る二人と一匹のバイクは、地響きを伴った轟音を響かせている発電所の方へ向かっていた。

「親父はあそこの地下にいるって言ってた。何か掴んだんじゃねーの?」

託斗に狐を捕獲したという連絡をした京哉は、彼の所在を聞いていた。カードキーをいつの間にか掠め取られていた事から、託斗の狙いは最初からあの場所だったのだろう。



 発電所を囲う高い塀の向こう側で大きな爆発音が響き、地面を伝う強烈な振動を感じた麗慈はバイクを止めた。
 数回、稲光のような強い発光の後、バリバリと轟音を立てながら建物が崩壊していく。濛々と土煙をあげて地下空間に吸い込まれていく膨大な量の瓦礫を目の当たりにし、二人は目を見張った。

「嘘だろ…何があったんだよ?」
「とりあえず託斗が心配だ。近くまで行くぞ」

再び走り出したバイクは、建物から数十メートルは離れた地点に通る道路上にまで飛散してきた瓦礫を避けながら進み、避難した作業員達の人集りの後ろをすり抜けて騒ぎの中心部に近づいた。


 地上の発電施設が丸ごと吹き飛んでしまったようで、地下に向けて深さ100メートル程の大穴が空いている。
 バイクから降りた京哉は、狐を抱えながら恐る恐る大穴の中を覗き込んだ。吹き荒れる風と所々に燻る火の粉。まるで地獄の釜の中を見ているようである。

「…集音装置が見える」

 目を細めながらそう呟いた京哉の視線の先には、本来地下深くのタービンルームに隣接しているはずの巨大な集音装置が剥き出しになっており、爆発の威力がいかに凄まじかったのかを物語っている。大穴は最地下まで貫通しているようで、託斗の安否を確かめる為にも下に降りるしかない。

「爆発の衝撃で破裂した水道管から水が漏れてるな。深さによってはお陀仏だが、飛んでみるか?」

同じように穴の中を覗き込んだ麗慈が、ごく冷静な表情でとんでもない提案をする。千切れた複数本の配管から冷却の為に使用すると思われる水が大量に放出されて滝壷を形成していた。
 彼の言葉にニヤリと口角を上げた京哉は、助走をつけて飛び上がると、大穴の中へと真っ逆さまに落ちていった。
 やっぱり行くのかー、と呟いた麗慈彼に続いても地獄の釜の中へと消えていく。

 衣服がバサバサと空気抵抗を受けながら、急降下した京哉の身体はトップスピードで大穴の底にできた巨大な水溜りに到達し高々と水飛沫をあげた。続けてドボンと水に飛び込んできた麗慈と共に、水深10メートル程沈み込んだ後、ゆっくりと水面に向かって浮上する。


…………………………………………………………………………………



 水面から顔を出した京哉は、濡れた前髪をかき上げながら狐の無事を確かめる。フワフワだった毛が水分を帯びてペッタリと張り付き、別の生き物のようになっている。犬掻きの要領でスイスイと進んでいった狐は浸水していない最地下フロアの床面まで到達すると、暗がりから突如かけられた声にビクリと全身を震わせてから硬直していた。

「楽しそうじゃん、お前ら」

瓦礫が積み重なって岸のようになっている場所に立っていたのは託斗である。頭から血塗れになっている彼の姿に、二人は目を見開いた。
 ブルブルと犬のように身体を震わせた狐から飛んだ水が託斗にかかり、血が地面に流れていく。
「あ、返り血?」
「そりゃそうよ。元気だし、僕」

なーんだ、と残念な顔をする麗慈を睨み付けた託斗は、狐の前にしゃがみ込んで頭を撫でた。

「さて、少し急ごうか。彼女の耳が聞こえなくなる前に」

ニッコリと笑う託斗の言葉の意味がわからず、京哉と麗慈は顔を見合わせた。



 建物が吹き飛ぶほどの衝撃だったが、オーケストラが幽閉されていた最地下の空間はほぼ原型を留めていた。
 非常灯の薄暗い灯りを頼りに通路を進んでいくと、厳重に管理されている様子の扉が見えてきた。
 託斗がカードキーをスライドさせればすんなりと開くが、5メートル程奥に次の扉がある。4回程同様に開錠していくと、ひんやりとした空気の流れる広い空間に辿り着いた。

 空間の中央には椅子が据えられており、首から上の無い女が座らされている。手足は拘束されているようだった。

「麗慈、治せる?」

そう言って一度しゃがんだ託斗は、徐に血塗れの何かを持ち上げて麗慈の前に差し出した。
 それは目を閉じた女の頭部。頸の位置程の栗色のショートカットで両サイドは耳にかけられており、前髪は眉の下辺りでパッツンと揃えられている。それを見た狐はガタガタと震え出し、京哉の脚に絡み付いてきた。
 まだドロドロと血が滴っている様子から、このような状況になって間もないことがわかる。眉を顰めながら頭部を受け取った麗慈は、様々な角度から確認し始めた。

「…耳が聞こえなくなる前って、そういう意味ね。多分、大丈夫」

明らかに手遅れであろう身体の状態を見て、あっさりと肯定してみせた麗慈だったが、ひとつ問題がある、と付け加えた。

「持ってきてないんだけど、楽器」
「ああ、それならコレ使ってよ」

首の次に託斗が渡してきたのは、これも血塗れのヴァイオリン。

「さっきまでオーケストラが使ってたやつだから、そんなにチューニング狂ってないとは思うけど」

グイッと麗慈に押し付けた託斗は、よろしくーと明るいテンションで声を掛け、踵を返した彼の背中に手を振った。



…………………………………………………………………………………




「京哉はすぐに抜刀できるようにしておいてよ」

しゃがみ込んだ託斗は、京哉の足に纏わりついて震えている狐に笑い掛けながら指示を出す。何故?と顔に書いてある京哉を上目遣いで見上げると、目を細めた。

「因果の斬り方を教えてやるって言ってんの」

その言葉を耳にするのは2回目であった。
 毎度、黒電話で京哉に依頼内容を伝えて来るジャックという男から5日前に聞いたのが1回目。

 言われるがままに、背中に担いでいたジュラルミンケースを開けて3つのパーツに分かれたフルートを取り出す。防水仕様のケースに入れてあるため、ダイビングした時の影響は無い。
 青白い光と共に花弁状に散らばったタングステンが太刀の形状に再凝縮した所で、京哉は麗慈に手招きされた。

「これ、持ってろ。絶対動かすなよ」

これ、と言われて手渡されたのは女の頭部である。あまり間近でじっと見ていられる状態ではない。
 京哉が困り顔う浮かべながらも指示通りの場所で頭を固定している様子を見ながら血塗れの手でヴァイオリンを構えると、麗慈は弦の上で滑らかに弓を動かした。


 第11楽章『大己貴命オオナムチノミコト』を完奏した奏者は、若乃宮麗慈であった。
 冥界かくりよの守護神である大己貴命オオナムチノミコトにまつわる神話を織り込んだ超絶技巧によって、彼は死の間際にいる者を蘇生する程の治癒技術を会得した。
 細密な音エネルギーの波により、細胞分裂の速度を速めるよう脳に直接促すことが出来る。但し、彼の奏でる音が聞こえる状態でなければ治癒効果は無い。
 人間の死に際、最後まで残るとされている感覚が聴覚であり、一説によると死後も短い間であれば音を感じ取る事ができるとされている。
 よって、『完全に死んだ状態』の人間でない限り、麗慈の演奏で蘇生する事が可能であった。

 医者でありながら、楽譜スコアの超絶技巧を完奏できるほどの演奏技術を持つが故、彼は楽団ギルド旋律師メロディスト専門の治療をしているのだ。


 ひんやりとした空気が充満する空間に、薄らと赤い光が広がっていく。すると、女の首の断面から血管や筋組織、神経が伸び、蠢きながら身体に接合していった。
 引き千切られたように損傷の激しかった箇所も、新しく生まれた皮膚によって綺麗に治癒している。

 京哉から離れた後、託斗の足元で震えていた狐は、恐る恐る光の方に視線を向け、修復された女の身体を見て小さな鳴き声を上げ始めた。



…………………………………………………………………………………



 京哉が両手を離しても、女の頭部はしっかりと身体に接合されており安定していた。

「コレで良いのか、託斗?」

弓の動きが止まり、赤い光が徐々に薄れていく。
 血塗れのヴァイオリンを床に置いた麗慈は、脱いだ白衣で手に付いた血を拭き、その場に放り投げた。

「上出来、上出来」

パチパチと呑気に拍手する託斗は、女の身体がピクリと動くのを見逃さなかった。
 次の瞬間には、黒いもやに体全体が包まれており、異変を感じた京哉と麗慈は素早く後退する。

宇迦之御魂神ウカノミタマノカミに纏わる諸説…時に荼枳尼天ダキニテンと同一視される彼女は、裸身で虚空を駆け人々から心臓を奪い取って食べる魔女であった…と」

薄らと開いた女の目は紫色に怪しく光っている。

超絶技巧僕の曲を完奏した後、多分人を殺したんだろうね。こんな何も無い空間に拘束されて、厳重に隔離されてた」





 ハンネス機関が唸りを上げる程の高出力の音エネルギーに、発電所の関係者はどよめき、興奮した。そして、無意識下で背後に迫る『彼女』に気が付かなかったのだろう。
 黒い靄を纏った右手は鋭く作業員の胸に突き刺さり、勢い良く引き千切られ、外気に触れた心臓はまだ脈打っている。
 ドクドクと血が溢れ出す臓器を一心不乱に食べ始めた女の異常な光景にやっと気が付いた周囲の人間は、一瞬にして青褪めて我先にと逃げ出す。
 阿鼻叫喚の室内には、次々と悲鳴が上がり、その中心で返り血に塗れている女はニチャリと悪魔のような笑みを浮かべていた。
 天井の弁が開き、催涙ガスが室内に充満すると、やっと女の動きが止まる。完全に意識を失った状態だと確認するや否や、ガスマスクを装着した監視員達が一斉に入室し、彼女を捕らえた。
 そして、彼女を隔離すべく部屋から引き摺り出す最中、何故か白い狐が駆け出していくのが見えたという。
 誰もが見間違えだと思い、気にも留めなかった。



「災厄は彼女から肉体を奪ったけれど、魂はお稲荷様が守ってくれたようだね」


 広い空間の隅で震えていた狐が徐に顔を上げた。
 手足を椅子に拘束された状態だが、激しく上体を揺らし今にも飛び掛かりそうな勢いの女に、託斗は一歩ずつ近付いていく。
 彼の合図に気が付いた京哉も間合いを取りながら太刀を下段に構えて近付いた。




…………………………………………………………………………………



 そして、遂に拘束を破った女が、獣のように飛び上がり託斗に襲い掛かる。寸前の所で身を翻して躱すと、京哉に忠告した。

「身体は斬っても意味がないからなー。奏者が死んじゃうダケ。中身・・だけを引き摺り出すんだぞ」
「は?中身?」

次々と飛び掛かってくる女の攻撃を去なしながら空間の角に誘導し、勢い良く床を蹴った託斗は三角跳びで高さを付けて女を床に押し倒した。
 腰の上に跨って抑え、首は左手で固定する。素早く振り下ろした右手は彼女の胸元を出血も無しに貫通し、靄の中から眩い紫色の光が顔を出す。

 思い切り引き抜かれた託斗の右手には、黒い靄が纏わり付いた鎖状の物体が握られている。
 ズルズルと続く鎖のようなソレを力を込めて両手で引き抜いていくと、女の体から黒い頭蓋骨が顔を覗かせた。続けて、骨格標本のような全身の骨が鎖で雁字搦めになった状態で引き摺り出される。

 これが、楽譜スコアに込められた呪い…。目の前で繰り広げられる非現実的な光景に京哉は目を見開いた。
 超絶技巧の奏者達は皆、祝福を得る代償としてあの災厄バケモノを体の中に巣食わせているのだ。自身の体の中にもアレが命を蝕もうとのさばっていると思うと、当然良い気はしない。

「京哉ッ!」

託斗の声に反応し、京哉が太刀を上段に振りかぶった。そして、靄を掻き分け黒い骨と女が繋がれている鎖に向けて振り下ろす。しかし、刀身に靄がまとわり付くだけで、刃が進まない。

「早くしろ下手くそ!手が保たない!」

 額に冷や汗を滲ませた京哉は、託斗の両肘から下の皮膚がボロボロになり血が流れ出ているのを目の当たりにした。
 際薬はヒトを蝕む。奏者本人だけではなく、ソレに觸れる人間の体をも喰らおうとしているのだ。実際に血を流す託斗を見て、京哉は呪いが現実のものであると再認識した。


「あー……わっかんねー!教え方が抽象的過ぎんだよクソ親父がっ!!」


太刀の柄を両手で握った京哉は、切先を鎖に向かって垂直に突き立てる。キンっと高い音が響き、切断された部分から紫色の光を放った鎖はボロボロと崩れ落ちていった。
 最後に一際光度を増した紫色が膨張し、凄まじい風圧で京哉と託斗を弾き飛ばした。

 地獄の底から湧き上がるような不協和音は、頭蓋骨の上げる悲鳴であった。鎖と同様に光子状に砕けてか髑髏しゃれこうべは徐々に消えていく。完全に消滅するとその不快な音もピタリと止み、黒い靄も薄れていった。

 女の身体から力が抜けぐったりと床の上に横たわると、それまで隅で震えていた白い狐が鈴を鳴らしながら駆け寄ってくる。そして、悲しげにクゥクゥ鳴きながら女の頬をぺろぺろと舐め始めた。
 託斗の見立て通りであれば、稲荷の意識は元々女のものである。自らの身体を心配して泣いている姿がなんだか不憫に思えてしまった麗慈。
 狐の傍らに歩み寄ってその頭を撫でてやると、突如白い毛並みが光りだして泡のように消えてしまった。



…………………………………………………………………………………




「…え?麗慈、何かやっちゃった?」
京哉が訝しげな表情で尋ねる。
「あーあ…」
そう言いながら悲しげに眉を下げる託斗を見て、麗慈は次第に焦り始めた。
「むしろ、1番何もやってねーだろ俺が!変な言い掛かりやめろ!」

 頭の上で飛び交う声に、女の瞼がゆっくりと持ち上がる。重たい身体を少しずつ動かし、腕に力を込めて上体を持ち上げた女は、自分の周囲で何やら騒ぎ立てている三人の男達を順番に見て首を傾げた。

「…あのー」

突如混ざった女の声に、ピタリと言い合いが止まる。三人の視線が一挙に集まると、女は恥ずかしそうに顔を手で覆った。



 那珂島茅沙紀ナカジマチサキと名乗った女は、発電所の地下に監禁されていたオーケストラの一人だった。
 岡島に呼び出され、実験と称して渡された楽譜スコアを無理矢理演奏させられたのだという。

楽譜スコアを演奏して得られる力と災厄は奏者それぞれだからね。それぞれの神話にまつわるっていう予想は立つけど…正直、書いた僕にもどんな影響があるのかはわかんないんだよね」

そう無責任に宣う託斗に、京哉は眉を顰めながら尋ねた。

「狐になるだけって、そんな力必要無いだろ?」
「誰しもフワフワになりたいって願望はあるだろ、普通」

ねーよ、と声を合わせた京哉と麗慈にシュンとしながらも、茅沙紀の方に向き直った託斗はニコリと笑いかける。

「君の因果は僕の息子が断ち切ったからね。もう狐の姿になる事もないし、魔女に身体を奪われる事もない」

彼の言葉にホッと胸を撫で下ろした茅沙紀だったが、差し伸べられた血だらけの手を見て息を飲んだ。

「君が何かを変える力を手に入れたいと思った時は、いつでも大歓迎だから」


…………………………………………………………………………………



 地震の初期微動のように細かな揺れが足の裏から伝わる。あれだけの大爆発が発生した現場だ。あまり長居をするのも得策では無い。

 最地下フロアの一画に備え付けられていた緊急用エレベーターは奇跡的に生きており、直様四人で乗り込んで地上を目指した。
 途中、数回の爆発音と共に大きな揺れに見舞われると、先程まで立っていた最地下が地響きを立てながら崩れ落ちていく様子が小窓から確認できた。

 間一髪の所でエレベーターは地上に辿り着き、扉が開いた瞬間に足を踏み出した茅沙紀は、目の前に広がる光景に絶句する。
 多くの警察車両に取り囲まれ、銃を構えた警察官が鋭い目つきで彼女を睨み付けていた。

「止まれ!動けば公務執行妨害とみなす!」

拡声器の大音量に肩をビクリと震わせながら、その場にしゃがみ込むと、両手を頭の上に上げる。

「ど…どうしましょう…」

目線だけをそっと動かす茅沙紀は、背後に誰もいない事に気が付いた。一緒に地上に上がってきた筈の男三人がどこにも見当たらないのだ。




 混乱している茅沙紀の目の前に警官隊が詰め寄り、彼女は更に焦り出す。

「ん?逃げ遅れた職員か?」
「首にチョーカーも無いし、オーケストラの人間でもなさそうだな」
「救急隊に引き渡せ」

え?と顔を上げた茅沙紀は、次に警官隊ではなく救急隊に囲まれ、担架に乗せられた。

「怪我はありますか?」
「あ…いえ……」

首のチョーカーが外れている今、自ら名乗り出る他に、彼女を音楽家だと断定する素材は無い。警察達が都合よく勘違いしてくれた事にホッとした茅沙紀は、支給された毛布に包まりながら救急車の中に運ばれていった。



…………………………………………………………………………………




 
 京哉達は旧渋谷区に来ていた。
 薄暗い医院に託斗の悲鳴が響く。

「酷い!何でそんな痛くするの!?」

ギャーギャー騒ぐ甚平姿の男は診察台の上で子供のようにイヤイヤしていた。そんな彼の腕を消毒液に浸した脱脂綿で無心に拭き取る麗慈は、非常に面倒臭そうな顔をしていた。

「僕もヴァイオリンで治して!痛いのはヤダ!」
「あれやると眠くなんだよ。さっきので限界だから、さっさと終わらすぞ」

 彼が能力を使う際の災厄は、耐え難い睡魔に襲われるというものであった。平気な顔をしていたが、相当限界が来ている様子である。時折、コクリと意識を手放しては託斗の腕にピンセットの先が突き刺さっていた。

「ギャーッ!このヤブ医者め!患者差別するなーっ!」
「うっせーな……あー、もうコレはダメですね。両腕とも切断ですわ。京哉、よろしく」

遂に面倒臭くなってしまい、とんでもない診断を下すと、京哉を手招いて太刀で腕を切るように指示している。

「親父…わかった。一思いに僕が……「マジですんませんした……お疲れの所大変恐縮なのですが、手当てお願いします…」

フルートを取り出そうとする京哉を見て青褪めた託斗は、慌てて診察台から立ち上がり必死に麗慈を引き留めた。




…………………………………………………………………………………]





 仕事の為に姿を消してから6日目の朝ようやく帰ってきた京哉に、カウンターにだらしなく座っていたシェリーが悪態をつく。

「何で帰ってきたんだよ?…あれ?アンタの親父は?」
「んな奴とっくに帰ったよ。いつまでも日本にいられてたまるか」

イライラしながらジュラルミンケースをカウンターの上に置いた京哉は、店舗内を見回して祐介がいない事に気がつく。

「祐ちゃんは?仕入れ?」
「ご飯作ってる。今日はハンバーグなんだぁー」

嬉しそうに頬に手を当てたシェリーは珍しく上機嫌である。そうこうしているうちに、奥からエプロン姿の祐介が現れ、京哉の姿を見るなり気まずそうに口を手で押さえた。

「えっ!?…どうしよう……ハンバーグ2個しか作ってないよ…」
「キョウヤの分は無しで良いよ。早く行こう、ユウスケ!」

元気よくカウンターチェアから降りたシェリーは、鼻歌まじりに祐介の背中を押して台所のある方へ二人して消えていく。

「……はっ!おい待て!ハンバーグ寄越せメスガキ!」

あまりの扱いに放心状態だった京哉は、すぐにその後を追う。





…………………………………………………………………………………





 医院の屋上に昇ってきた託斗の両腕は包帯でぐるぐる巻きにされていた。
 熱帯夜もひと段落したのだろうか、この日の夜は風が吹けば心地よい気温である。

 東京で唯一、夜も眠らない街となっていたニュー千代田区画も、発電所の喪失で真っ暗闇だ。
 星が非常に綺麗に見えるようになったのは、現在の日本の唯一誇れる所かもしれない。


「最近さー、盗作被害にあってんだよね、僕」

虚空に指先で何かを描きながら京哉にそう語りかけた託斗。

「カナダで活動していた二人組の旋律師メロディストが何者かに惨殺されていた」
「惨殺…政府の人間か?」

神妙な面持ちで聞いていた京哉に、託斗は振るっていた右手の人差し指を向けた。

素戔嗚尊スサノオノミコトの如き、絶望的な斬撃……って感じの現場だったそうだよ」


第3楽章『素戔嗚尊スサノオノミコト』を完奏し、力を得たのは京哉であった。齢10歳にして成し遂げた彼は、楽団ギルド内でも特筆すべき存在とされてきた。

 その、京哉が得た能力に似た手口で仲間が殺されていたのだという。一瞬、父親に殺人犯だと疑われたのかと思い、京哉は眉を顰めた。指差されると訝しげな表情を返して来た息子を見て、託斗は呆れたように眉を下げながらやれやれと首を左右に振る。
「でも、やっぱなんかちげーわ」
「…僕が日本から出てないのは楽団ギルドが1番知ってんだろ?」

ケタケタ笑う託斗は、京哉の正面に立ち至近距離に顔を寄せた。

「違ェよ。お前じゃあんな絶望的な切れ味出せないでしょって話よ」
「………」

よっ、と軽い調子の掛け声と共にフェンスの近くに胡座を描いて座った託斗は、右手で頬杖を付きながら続ける。


「もっと練習しな、京哉。音出して吹いてないでしょ?バレバレ。表現力ばっかりは聴いてもらわないと伸びないよ」


 旋律師メロディストが楽器を扱う際は、その音が瞬時にエネルギーへと昇華される為、光となって『音』としては聞こえてこない。

図星を突かれたようで唇を尖らして黙っている京哉であったが、「な?」と優しく笑い掛ける父親を見て小さく首を縦に振った。

「盗作ってのもマジな話。誰か僕以外の人間が、真似て楽譜スコアを書いてるし、お前よりも上手い奴が似たような力を得て楽団ギルドを攻撃してる……」

盗作…と呟いた京哉は、つま先を見つめていた視線をバッと上げて託斗に尋ねる。

「第3楽章の楽譜スコア、僕が修得した後は親父が預かるって言ってたよな?……もしかして、盗まれた?」

楽団ギルドにとって貴重な存在である超絶技巧。それが盗まれたとあれば一大事であるというのに、託斗は京哉の問いに対してペロッと舌を出した。
「えへへ、ごめーん」
反射的に手が出た京哉の平手打ちが父親の頬にヒットし、良い音が響く。

「痛いっ!パパに手を上げるなんて!ロジャーに懺悔した時だって殴られなかったのに!」
「呆れられてんだろ、ソレ!どーすんだよ楽譜スコア!?」

反省の態度を見せない託斗に、今度は拳で殴ってやろうかと詰め寄る京哉。息子が本気で怒っているのだと慌て始めた託斗は彼を宥め始める。

…………………………………………………………………………………


「誰かが修得済みの楽譜スコアならシュレッダーにかけられようが、燃やされようが害は無いさ。死ぬまで異能も災厄もお前の物だから」

 託斗曰く、既に焼印の施された楽譜スコアは抜け殻の様なもので、譜面は何度でも彼の記憶から書き起こせるという。
 問題なのは、今回の件のように災厄が解き放たれていない楽譜スコアを紛失してしまう事。


 急に神妙な面持ちを見せた託斗に、京哉は息を呑む。彼が何を言わんとしているのか、想像できたからだ。

「21番目…アレを早く見つけ出さないと、世界が終わるんだろ」

 異能を持つ音楽家達による組織、旋律師楽団メロディストギルド
 エネルギー革命以降に法人としてのテイを成したこの秘密結社は、世界中のクライアントからの依頼を受ける事であらゆる組織の機密情報を得ながら、奪われた天地開闢かいびゃくの神の物語を探していた。

「……あぁ。精々急げよ、旋律師メロディスト諸君」

 まるで他人事のように呟いた託斗は、満点の星々が輝く大空に向かって両腕を高く伸ばし、それらを掌握するかの様に両手を握り込んだ。



[4] Fuga 完

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】うさぎ転生 〜女子高生の私、交通事故で死んだと思ったら、気づけば現代ダンジョンの最弱モンスターに!?最強目指して生き延びる〜

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
 女子高生の篠崎カレンは、交通事故に遭って命を落とした……はずが、目覚めるとそこはモンスターあふれる現代ダンジョン。しかも身体はウサギになっていた!  HPはわずか5、攻撃力もゼロに等しい「最弱モンスター」扱いの白うさぎ。それでもスライムやコボルトにおびえながら、なんとか生き延びる日々。唯一の救いは、ダンジョン特有の“スキル”を磨けば強くなれるということ。  跳躍蹴りでスライムを倒し、小動物の悲鳴でコボルトを怯ませ、少しずつ経験値を積んでいくうちに、カレンは手応えを感じ始める。 「このままじゃ終わらない。私、もっと強くなっていつか……」  最弱からの“首刈りウサギ”進化を目指して、ウサギの身体で奮闘するカレン。彼女はこの危険だらけのダンジョンで、生き延びるだけでなく“人間へ戻る術(すべ)”を探し当てられるのか? それとも新たなモンスターとしての道を歩むのか?最弱うさぎの成り上がりサバイバルが、いま幕を開ける!

レオナルド先生創世記

ポルネス・フリューゲル
ファンタジー
ビッグバーンを皮切りに宇宙が誕生し、やがて展開された宇宙の背景をユーモアたっぷりにとてもこっけいなジャック・レオナルド氏のサプライズの幕開け、幕開け!

企業再生のプロ、倒産寸前の貧乏伯爵に転生する 

namisan
ファンタジー
数々の倒産寸前の企業を立て直してきた敏腕コンサルタントの男は、過労の末に命を落とし、異世界で目を覚ます。  転生先は、帝国北部の辺境にあるアインハルト伯爵家の若き当主、アレク。  しかし、そこは「帝国の重荷」と蔑まれる、借金まみれで領民が飢える極貧領地だった。  凍える屋敷、迫りくる借金取り、絶望する家臣たち。  詰みかけた状況の中で、アレクは独自のユニーク魔法【構造解析(アナライズ)】に目覚める。  それは、物体の構造のみならず、組織の欠陥や魔法術式の不備さえも見抜き、再構築(クラフト)するチート能力だった。  「問題ない。この程度の赤字、前世の案件に比べれば可愛いものだ」  前世の経営知識と規格外の魔法で、アレクは領地の大改革に乗り出す。  痩せた土地を改良し、特産品を生み出し、隣国の経済さえも掌握していくアレク。  そんな彼の手腕に惹かれ、集まってくるのは一癖も二癖もある高貴な美女たち。 これは、底辺から這い上がった若き伯爵が、最強の布陣で自領を帝国一の都市へと発展させ、栄華を極める物語。

エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~

シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。 主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。 追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。 さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。 疫病? これ飲めば治りますよ? これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。

神様転生~うどんを食べてスローライフをしつつ、領地を豊かにしようとする話、の筈だったのですけれど~

於田縫紀
ファンタジー
大西彩花(香川県出身、享年29歳、独身)は転生直後、維持神を名乗る存在から、いきなり土地神を命じられた。目の前は砂浜と海。反対側は枯れたような色の草原と、所々にぽつんと高い山、そしてずっと向こうにも山。神の権能『全知』によると、この地を豊かにして人や動物を呼び込まなければ、私という土地神は消えてしまうらしい。  現状は乾燥の為、樹木も生えない状態で、あるのは草原と小動物位。私の土地神としての挑戦が、今始まる!  の前に、まずは衣食住を何とかしないと。衣はどうにでもなるらしいから、まずは食、次に住を。食べ物と言うと、やっぱり元うどん県人としては…… (カクヨムと小説家になろうにも、投稿しています) (イラストにあるピンクの化物? が何かは、お話が進めば、そのうち……)

 社畜のおじさん過労で死に、異世界でダンジョンマスターと なり自由に行動し、それを脅かす人間には容赦しません。

本条蒼依
ファンタジー
 山本優(やまもとまさる)45歳はブラック企業に勤め、 残業、休日出勤は当たり前で、連続出勤30日目にして 遂に過労死をしてしまい、女神に異世界転移をはたす。  そして、あまりな強大な力を得て、貴族達にその身柄を 拘束させられ、地球のように束縛をされそうになり、 町から逃げ出すところから始まる。

【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活

シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!

あなたが決めたことよ

アーエル
恋愛
その日は私の誕生日パーティーの三日前のことでした。 前触れもなく「婚約の話は無かったことにしよう」と言われたのです。 ‪✰他社でも公開

処理中です...