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#042 lamentoso Ⅲ
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東京都・50歳男性「家内からすごく疎まれていて、あだ名はずっとシンプルに“馬鹿”でしたが、最近は「オイ!」と高圧的に呼び掛けられるだけです。相手にされるだけマシだと思い…あっ、はい!今行きますスミマ…
…………………………………………………………………………………
王の中は梁 緑仙。
極楽町の中央宮殿に住まい、花街の全ての利権を牛耳る者である。
都野崎からの要請で、当時地上で暮らしていた在日外国人を引き連れて地下の世界に潜ってから、花一匁と呼ばれる児童の人身売買を海外のバイヤー向けに斡旋して巨額の富を築いてきた。
緑仙の周囲には常に10人程の下女が取り囲んでおり、その後ろには更に10人の少年少女が並んで雑事に召し使われている。子供達は皆、次の花一匁で売りに出されるまで半年間程教育を受けるのだという。
真城深津葉もその中の一人であった。
不動産事業で多くの負債を抱える事となり、首が回らなくなった両親は苦肉の策として闇金に手を出してしまった。
利息を払うこともままならなくなり、真城涼と深津葉のきょうだいは地下へと売り飛ばされてしまったのだ。
戸を叩く音で目覚めた京哉は、PHSの画面を確認して大きな溜め息を吐く。これ程までに行きたくないと思った仕事は珍しい。
昨夜、調査対象であったはずの大山田淳弥と接触し、今回の依頼に絡む複雑な内情を説明させられてしまった為、京哉は凪央屋を抜け出すタイミングを完全に見失ってしまっていたのだ。
インターホンもドアアイも無い簡素な造りの為、来訪者を確認するには戸を開けて確認する他無い。
薄い布団を持ち上げて癖っ毛をワシャワシャと掻きながら玄関に向かう京哉を、再度戸を叩かれる音が早く開けろと急かしてくる。
「はいはい、どちらさ…ま…」
戸を開けてから気がつく。寝起きでマスクもメガネもしていないことに。真城の使っていた部屋から全く顔の違う人間が出てきたら流石に言い訳のしょうがない。
焦った京哉が再び戸を閉じようとするのを見て、来客は慌てて膝をねじ込んできた。
「待て待て!俺だよ!吉井!」
京哉がドアノブから手を離すと、玄関前に立っていた吉井は勢い余って室内に雪崩れ込んできた。
「もしかして…僕の代わりに個室のお客さんの所に…」
「ちげーよ。あんまりアンタが不安そうにしてたから、事前にどんなお客様か調べようと思ってオーナーの台帳拝借してきたんだよ」
案外大胆な事をやるものだと感心しながら、京哉は吉井の隣に座って彼がくすねてきたノートを確認し始めた。
びっしりと連ねられている文字の列を指でなぞる吉井は、ある一点で動きを止めた。
「珍しいな…一見さんだ」
「新規の人って事?そういうのお断りじゃないんだ」
彼らが勤める類いの店では、完全紹介制であることも珍しくない。しかし、凪央屋に至っては吉井曰くオーナーの『儲け至上主義』のせいで新規だろうと常連だろうといきなり個室予約を取れてしまうのだという。
「え、やだ…僕見ての通りか弱いから、怖い人だったらどうしよう…」
手で口元を隠して眉をハの字にしている京哉を無視し、吉井はノートの次ページを読み始めた。
「あー、なるほど。ID情報が書かれていないから何かと思えば。特殊職か」
「と…特殊職?」
パタンとノートを閉じた吉井は、小首を傾げている京哉に向き直って咳払いをした。そして、右手の人差し指を天井に立てながらニンマリと笑う。
「さて問題です。もし極楽町の中で大怪我をしてしまったら、どうすれば良いでしょうか?」
いきなりクイズを出してくる吉井のノリに戸惑いながらも、京哉は唇を尖らせながら答えを考えた。
「大怪我…命に関わるぐらいなら……もういっそのこと…」
「酷いなアンタ!……じゃあ、お産が始まりそうな時はどうする?」
地下と言えども、政府の人間や警察上官、海外からの来賓も多く訪れる場所なのだから救護所は常設されている筈だ。しかし、出産ともなれば話は別である。最悪、医療器具が十分に揃っていなかったとしても医師がいれば産後も母子共に適切な処置を施す事ができる。
そして、この極楽町では憂うべき事に妊娠出産と因縁が深い。
「医者…外から呼ぶとか?」
「正解ー。まぁ、上級国民と俺らとじゃ待遇は違うぜ、もちろん。奴等のとこには千代田区の病院からちゃんとした医者が来るけど、こっちはモグリの場合が多い」
吉井の解説を聞いて納得しながらも、何故今その話題を振るのかわからないといった顔をしている京哉。察しの悪い彼に呆れながらも、面倒見の良い性格の吉井は続けて解説した。
「つまり、特殊職ってのは医者とかエンジニアとか…千代田区外に住んでるけど技能を持ってないと務まらない仕事の事で、そういう奴はIDが無くても要請があれば一時的に極楽町に入れんだよ」
「あー…じゃあ、予約入れたのはそういう職業の奴って事?」
やっと伝わったか、と苦笑いを浮かべた吉井はノートを小脇に挟みながら踵を返した。
「仕事のついでにちょっと遊んでいこうって奴は割と多いからな。管理側もそういうのは結構目を瞑ってくれてるらしいぞ。さて…それじゃあ、俺にできるのはここ迄だ。頑張れよー」
にこやかに手を振って戸の向こう側に去っていった吉井を見送り、再び隠し持っていたPHSの画面に視線を移す京哉。
何度確認してもあと1時間ほどで凪央屋の開店時間になってしまう。どうして旋律師の自分がこんな事をしなければならないのだ…と心の中で嘆きつつも、過去に楽団の命令であらゆる任務に従事してきた記憶を思い起こす。
名前の付く悪事には殆ど経験のある自分が、夜職と言えども目標の為にまっすぐ生きている彼等の仕事をこんな事などと軽侮するような物言いをしてしまった事を恥じたのであった。
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自身の邸宅に戻ってきた大山田が最初に顔を合わせたのは、身長190センチを超えるスーツを纏った大男だった。ペコペコと頭を下げる大山田の横を無言で通り過ぎ門前に横付けしたセダンに乗り込む間際、低く唸るような声で呟いた。
「アンタも苦労人だな。手に余るだろ、何の下積みも無しにこれだけのデカい会社を引き継ぐなんてな」
ゆっくりと大男の方に振り返った大山田の表情は暗い。
「賢く生きろよ、大山田社長。俺にとっても首相に気に入られてるアンタは大事な仕事仲間だからな。あぁ…奥さんにヨロシク」
「っ……」
言葉が喉まで出かかったものの、屋敷の2階の窓からひな子がこちらの様子を伺っているのが見えて、彼はグッと息を飲み込んだ。そして、両の手を握り締めながら深々と頭を下げて大男が乗り込んだセダンを見送る。
使用人達が帰宅した主人から上着や荷物を預かり散り散りになるなか、奥の部屋から姿を現したひな子が表情ひとつ変えぬまま彼の目の前まで歩み寄ってきた。
「…本当に使えない男だな、お前は。何で計画通りにやらないんだよ!?」
彼女の高圧的な声色に、顔を伏せながら首を小さく縦に振る。
「ごめん……睡眠薬を入れた水を飲んでくれなかったんだ…」
「うまく誘導しろよ!テメェのケツぐらいテメェで拭きやがれ!!」
怒りが収まらない様子のひな子は、近くに花を生けてあった花瓶を持ち出し、頭から水を掛けた。
生臭く冷たい感覚が顔を通り過ぎるのをじっと耐えている夫の情けない表情に背を向けたひな子は、ズカズカと乱暴な足音を立てながら奥の部屋に戻って行った。
大山田淳弥が真城に出会ったのは、都野崎に宮殿内での花一匁を見せられたその日であった。
接待に打ってつけの場所として紹介されたのが、凪央屋であった。この料亭のオーナーである田所には地上で消費者金融を経営しているというもう一つの顔があり、法外な利息を債務者に課して次々と地下送りにしていた。
国力を補う為の外貨を稼ぐ砦となっている極楽町。その働き手の補充という重要な役割を果たしている田所と都野崎は良きビジネスパートナーとして親交があったのだ。
その日、宴会の席で大山田の隣に座り酌をしたのが真城であった。
「大山田様はこのような店にはあまり足をお運になられないんですね」
「…は、はい。性に合わないと言いますか……無理に笑うのが苦手…でして」
そう言いながら乾いた笑いを見せる大山田は、真城にとって初めて出会うタイプの客であった。
「……僕もです。僕は…この見た目から喋り方、所作の端々まで全て仕事の為に身に付けたものなので」
口許は笑っているものの、大山田は真城の横顔から悲しみを感じ取った。
これは所謂、客を落とす為の手口なのかもしれない。同情を誘って、庇護欲を掻き立てる。しかし、大山田は何故か彼の話を信じてみたいと思ったのだ。
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真城涼は親の借金を返済する為に、その身を売る事を強制される毎日を送っていた。妹の深津葉は宮殿の中で様々な教育を受け外国人バイヤーの手に渡り、いずれは海外に売り飛ばされる事になると聞いていた。
「君、妹が宮殿にいるんだって?」
ある日唐突に声を掛けてきた田所は、真城にある提案をした。
「バイヤーから妹を買い取れれば、君はそいつの大事な顧客って事でそれ相応の待遇を受けられる。凪央屋としてもお客さんのお客さんを売るなんて事はできないからね。外の世界に君らの居場所は無いけど、マネージャーとか営業職とか、管理者側に引っ張ってやる事はできるよ」
「……妹を…。一体どれだけのお金が必要になるんですか?」
妹を救い、自分も今の状況から脱する事ができる。かなりの好条件に疑いつつも希望を見出した真城であったが、田所の口からはあまりにも現実離れした金額が言い渡されて愕然とする。
「1億円、かな。この世界では基本的な単位だ。なぁに、君が凪央屋のナンバーワンになれば、次の花一匁までに稼げない金額じゃあない」
また希望を持たせるような耳障りの良い言葉を重ねてくる田所であったが、真城の顔をじっと見て訝しげな表情を見せた。
「うーん……ちょっと、イジってみる?地上から専門の人呼んでさ。少しお金は掛かっちゃうけど、それもペイ出来るぐらいイケメンに仕上げてもらおうよ」
田所の言葉の意味がわからずにキョトンとしていた真城であったが、目元や鼻をグリグリと弄られているうちに次第に理解し、恐怖を感じ始めた。
「せ、整形するって事ですか…?」
「そうよー。この業界は見た目重視。ツラが良いってのはわかりやすく指名を受けやすい。それじゃ、早速明日お医者さん呼んじゃうからねー」
半ば強制的に整形させられた真城は、生まれ持った姿とは全く違う顔で凪央屋に戻ってきた。そして、彼を絶望の底に叩き落とす言葉が田所の口から放たれたのだ。
「良いじゃん、真城ちゃーん!さすが100億はかけただけあるよー」
「……え…ひゃく……何を言ってるんですか?」
しきりに目を瞬かせて混乱する様子の真城の肩を叩く田所は、グッと顔を近付けて冷酷に笑って見せた。
「タダな訳ないだろ?店が負担してやってんだから、とっとと返せよ。あぁ、半年以内に100億貯まらなかったら、妹を買い取るお金なんて夢のまた夢だねェ」
呆然とする真城に哀れみの眼差しを向けていた田所であったが、次第に我慢しきれず大口を開けてそれは愉快そうにガハハと笑い始めた。
「騙された…とすぐにわかりました。100億なんて金、稼げる訳がない。それに、もし完済したとしても…親の借金の利息がかなり上乗せされてる状況なので、とてもじゃ無いけど妹を助ける為の金なんて払えません」
ジッと手元を見つめている真城の小声での告白、周囲の騒々しい話し声によって大山田にしか届いていなかった。
「日の当たらない場所でしか生きられない人間が、誰かを救おうだなんて烏滸がましかったんです。希望なんて持たなければ良かった…もう、僕は…俺たちは……」
代わりに自分が借金を完済しようと言ったとしても、オーナーの田所は更に彼から金を無心する為の方法をすぐに編み出してくるだろう。
地下に堕とされたら最後、死ぬまで地獄を這いずり回る事を強要されるのだ。
「……本当にすみません。こんな事をお客様に聞かせるなんて、どうかしていました。忘れてください…」
悲しそうに笑った真城が立ちあがろうとするのを、大山田は慌てて引き止める。
「諦めてはいけません…。必ず助かる方法はあります…!必ず……」
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大山田はその日から暇を見ては凪央屋に足繁く通い、真城を励ました。
そして、極楽町の中を歩いている内に一つの妙案を思い付きその日の晩に連絡を入れた。
帰ってから嘔吐や下痢が酷く、病院を受診したところ飛沫感染をする酷い胃腸炎であった。隣で長時間会話をしていた真城にうつってしまったかもしれないから、気にかけて欲しい、と。
電話を受けた田所は、その日急な体調不良で真城が欠勤になると聞かされたばかりであった。
妹という人質がいる以上、真白は極楽町から逃げる事はできない。そう考えていた田所は、真城に地上の病院に行く事を許可したのだ。
まんまと地上に逃げ仰た真城を保護した大山田であったが、彼の動向を陰でずっと見ていたひな子は激昂した。
首相のお眼鏡にかない、政府から次々と大きな案件を受注していた大山田建設の業績は鰻登りに好調であった。しかし、社長が政府の管轄する施設から秘密裏に人を逃したと知られれば、会社の経営は傾くどころか完全に潰される未来が目に見える。
夫の愚行に怒り狂ったひな子は、どうにかこの危機を乗り越えなければならないと、思い切って政府内のある人物に打診をした。国土交通大臣の今永昌俊である。
建設関係の事業でかねてより今永と親交のあったひな子。美魔女と呼ばれる彼女の容貌は、夫が近しい人間からも羨望の眼差しを受ける程確かなものであり、今後の開発に関して相談したい事があると言って邸宅に彼を呼び出し、誘惑し、体の関係を持った。
「その真城という負債者の件については、俺の方でもみ消しておこう。その代わり……奴等を誘き寄せる為に利用させてもらう。俺もポイント稼ぎに苦労してんだよ」
今永はひな子を使い、楽団に依頼を出させた。彼らなら大山田の素行調査という簡単なおつかいを利用して、都野崎と懇意にしている人物に接近し、日本政府の何らかの動きを探ろうとしてくる筈だと踏んでいたからだ。
そして、今永の狙い通りに楽団はエージェントをひな子の元に送ってきた。
真城の戸籍を買い取ったと偽り、彼のIDを使わせて極楽町の中に閉じ込める。そして、調査対象である大山田の方から接近してくるという状況を作り、彼を使って丸腰の状態の旋律師を一人捕えるという計画であった。
しかし、大山田淳弥は京哉に睡眠薬を飲ませる事が出来なかったのだ。
今永、そしてひな子の計画は完全に狂ってしまったのだ。
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薄暗い室内。あえて暗く設定されたLED電球を隠す行燈の近くでその時を待っていた京哉の表情は不安に満ちていた。
もう予約の時間が迫っているというのに、この状況を打破する方法が見当たらない。徐々に近付いてくる足音に鼓動がバクバクと狂ったように脈打っているのがわかった。
スパーンと勢い良く開いた障子戸の向こう側から一人の青年が敷居を跨いで入ってくると、京哉は目にも留まらぬ速さで床の間に飾られた掛け軸の裏側に身を隠した。勿論、相手からは丸見え状態である。
「や…やっぱり無理っ!!!ごめんなさい!帰ってください!店にクレーム入れてくれて良いんで!チェンジしてください!チェンジ!」
怒られる覚悟で叫んだ京哉は、必死の訴えも虚しく客の男が畳の床に荷物を置いた音が聞こえると、絶望に打ち震えながら白目を剥いてその場にへたり込んだ。
「こっちが指名してんだからチェンジとかねーだろ、馬鹿。早く出てこい」
聞き覚えのある声に、顔を上げる。脱いだカーキ色のモッズコートを簡単に畳んで荷物の上に置いていたのは、麗慈であった。
「………え、えっとー…」
何故この場所にいるのか、そう尋ねようとした時、京哉は彼が懐でハンドサインを送ってくる様子を確認した。
(話を合わせろ)
「この店で一番売れてるんじゃねーの、お前?」
「す、すみませんでした…病み上がりで調子良くなくて…」
(気付いてるなら、このまま演技しろ)
続いて出されたハンドサインを見て、京哉は麗慈の言わんとする事を完全に理解した。
そして、目を閉じてゆっくり一呼吸起き、完全に仕事モードの頭に切り替える。
荷物の横に胡座を描いた麗慈に歩み寄り、彼の顔を覗き込みながら自分も正座した。
「お仕事って何されてるんですか?」
「医者」
「えーすごーい。その荷物…今日はお仕事だったんですか?」
京哉はわざとらしく手を叩くと、モッズコートが乗せられたジュラルミンケースの方を指差しながら尋ねた。
「お産があったから呼ばれたんだよ。緊急帝王切開」
そう答えながら畳の上に敷かれた布団の方を見た麗慈は、次のハンドサインを出している。その指示内容に一瞬白目を剥いて気絶しかけた京哉だったが、すぐにまた営業スマイルを取り繕った。
「そんな大変なお仕事の後に、こんなお店に来てる先生って…大好きだったりします?」
麗慈との距離を詰めた京哉は、徐に膝の上に置かれた彼の手を握ってグイグイと引っ張り、立ち上がる様に促す。そして、麗慈の両肩に手を置いて敷布団の上に押し倒した。
「何が?」
ずっと黙っていた麗慈がボソリと聞き返すと、京哉は眉を顰めた。
(黙ってろ!)
小さくハンドサインを出す京哉だったが、麗慈が必死に笑いを堪えてるのがわかると殴りたい衝動を抑えて一度俯いた。
「意地悪言わないで早く始めましょうよ、先生…」
麗慈は身体の上に京哉が倒れ込んで来るのを抱き止める。そして喬笑を浮かべた京哉が彼の鎖骨の辺りに密着させた顔をズルズルと下半身の方へ滑らせていくと、頭の上まで掛け布団を被せて完全にその姿を隠した。
天井板の所々が外れ、頭上からアサルトスーツを纏った男達が室内に雪崩れ込んでくる。機関銃やナイフを構えた黒い影が布団の周囲を取り囲む刹那…
青白い光が薄暗かった室内を眩く照らし、掛け布団が勢い良く跳ね上がったのと同時に20人程の人集りが血飛沫を上げながら壁に叩きつけられた。
「蝿の駆除に決まってんだろヴアアァカッ!!!」
ピクリとも動かなくなった彼らの成す赤黒い円の中心では、白い燕尾服を纏い、刀身1メートル程の太刀を右手に握った京哉が鬼の形相でガルガルと獣の様な息遣いを繰り返しながら立っていた。
…………………………………………………………………………………
夜空のプロジェクションマッピングは緊急事態を知らせる表示へと切り替わり、天井に埋め込まれていた赤色灯が激しく明滅を繰り返す。
けたたましいサイレンの音に混乱する人々の様子を数寄屋造りの屋根の上に潜んで眺めているのは、白い燕尾服を纏った二人の男達である。
「さて…此処からどうするかは楽団上層部の審議待ちな訳だが…」
小型の双眼鏡で宮殿の方を眺めていた麗慈がふと視線を隣に戻すと、まだ眉間に深い皺を刻んでワナワナと唇を震わせている。
「どうした?シェリーみてぇな顔して?」
クスクス笑いながら茶化してくる麗慈を睨み付けた京哉。よほど先程の事が気に入らないのだろう。今度は拗ねた幼児のように唇をブーブーと尖らせ始めた。
「もうヤダ。麗慈なんか大っ嫌い」
「ハイハイ。今はブーたれる時間じゃねーから、とっとと情報共有」
通りから見えない位置に腰掛けた麗慈は、PHSの画面をスワイプさせながら楽団から出ている指示について読み上げた。
「大山田ひな子の依頼は顧客側の重要契約違反の為昨日付けで破棄。従事している旋律師には即刻離脱を命ずる…って事だけど」
「ふぅーん…」
昨夜の大山田淳弥との接触で得た情報を楽団に報告していた京哉は、上層部の下した当然の対応を聞いてまるで他人事の様に素っ気ない相槌を返した。
喧騒に包まれた極楽町を見渡しながら麗慈の隣までゆっくりと歩み寄り、隣に腰掛ける。
「で、ここからはお前が俺に頼んだ調べ物について。大山田からは何処まで聞いてる?」
「この町を管理してる奴が日本人のガキを外国人相手に売り捌く悪趣味な公開買い付け…って感じ」
指先を弄りながら答えた京哉は、これ以上に後ろ暗い事がまだあるのかと麗慈の方を睨み付ける。
「一定の期間に買い手が見つからない子供は花街の方で商売道具にするらしいが、その『道具』の使い様は多岐に渡る。町を抜け出そうとした人間の殺害、遺体の解体処理は全部子供の仕事だ」
「…ガキに殺しを?」
眉を顰めた京哉は、麗慈が手渡してきた彼のPHS画面を凝視した。
彼が調べ上げた花一匁の資料にザッと目を通しながら、子供を使った凡ゆる非道な行為について記述された部分でスワイプする手を止める。
「……母親殺しを見世物にする料亭の主人…」
子供連れの債務者も少なくはない。シングルマザーだった彼女は連日連夜の接客で大病を煩い、客を取れる体ではなくなってしまった。遊女を雇用している遊郭のオーナーは、花一匁に出した彼女の子供が売れ残っている事を知ると、呼び寄せて母親を始末する様に命令したのだという。
「生きたまま頭を石で殴り付けて殺害、その遺体から母親の愛用していた裁ち鋏を使って肉を剥がさせ、最後にその肉を煮込んで無理矢理食わせた…ってのは割と良くある話だそうだ」
淡々と述べられた鬼畜の所業に、京哉は無表情のまま虚空を見上げて黙り込んでいた。
美しく輝く古風な街並み。煌びやかな花街の影に蔓延る、人の道を外れた悪意。
一筋の光も届く事なく、ただ絶望に打ち拉がれる毎日を送らざるを得ない彼らの事実を知ってしまった大山田淳弥は京哉に切願したのだ。
「……極楽町という地獄から人々を救い出して欲しい…ってさ。馬鹿じゃねーの?僕達は正義の味方じゃねーってば」
気怠そうに顔を歪めた京哉に、麗慈も苦笑しながら答えた。
「救い出せってのは無理だろ。楽団にメリットが無ェ」
そして、PHSの画面がメッセージを受信したのを確認した京哉は、徐に立ち上がりながら持ち主の方へと投げ返した。
「そいじゃあ……サクッと壊しちゃいましょうか」
いつの間にか組み立てられていたフルートを構え、リッププレートに下唇を乗せる。青白い光が放たれるのと同時に、地上と繋がる検問所の全てが一瞬にして立ち昇った蒸気に包み込まれた。
…………………………………………………………………………………
オーストリアの楽団本社で行われた緊急会議では、大山田淳弥からの依頼を受諾するか否かについての議論が1時間ほど前に終了していた。
「本来なら異端本部の襲撃前に日本政府を刺激する様なことはしたくなかったのですがねぇ…」
「まぁ、あの国の外資収入と諸外国との裏の繋がりを断つ事で我々が活動しやすくなるというのも事実だからな」
一人掛けのソファチェアから立ち上がって会議室を後にする上層部の面々を見送ったロジャーは、『今回の依頼人』に今し方終了した査定会議の結果を知らせるべく、ノートパソコンの前でヘッドフォンを装着した。
AIによる同時通訳機能がついた特別回線に繋ぎ、単調な電子音が途切れるのを待つ。
『はい、大山田です』
「夜分にすみませんね。楽団代表取締役社長のハロルド・ロジャーです。ご依頼いただいた件について、社内での方針が決まりましたのでご報告いたします」
大山田ひな子からの依頼が破棄されたのと同時に、楽団には京哉伝いに夫の淳弥からの依頼が届いていた。
極楽町の債務者や子供達を救う事。それが、彼の願いだった。
しかし、それは楽団の領分ではない。これまでも、結果的に人助けをしてきたケースは多々あったが、それを目的とした依頼を受けた事はなかった。今回も例外ではない。
「査定の結果ですが、地下空間に捕えられている人間を全員助け出す…という依頼はお受け致しかねます」
大山田は落胆しつつも、事前に京哉から「望みは薄い」と聞かされていただけに、食い下がることなくロジャーの言葉を受け入れた。
「ただ…ご依頼の際にご提示いただいた金額や諸々の事情を加味して、“我々のやり方”でゴクラクチョウ・ビジネスを崩壊する事は可能です」
『…ほ、本当ですか…?』
まさか依頼が通るとは思っていなかった大山田の声色が明るくなる。しかし、一喜一憂する画面越しの相手にロジャーは最後、釘を刺す様に低く落ち着いた声で続けた。
「我々は何でもやりますが、何でも“出来る”訳ではありません。異能者は神ではありませんから。ご理解いただけますか?」
大山田は都野崎の言葉を思い出した。
「社長……全ての人間を救おうなんて、神でも無い限りそんな無責任な事を口にしてはいけない」
神でもない、戦う力も、逆らう度胸も無かった自分が出来る事は唯一つであった。
どちらの邪に賭けるか。
震える唇をぎゅっと噛んだ大山田は、画面の向こう側で微動だにせず自分の方を見据えているロジャーに向かって頭を下げた。
「よろしくお願い致します」
…………………………………………………………………………………
常夜街と地上とを別つ強固な金属製の扉が破壊された事により、捕えられていた債務者達が一斉に避難を開始した。
検問所の警備員達は逃げ出そうとする彼らを捕まえようと動き出したが、押し寄せる人だかりには極楽町に遊びに来ていた上級国民達も多く混ざっており乱暴な真似はできない。
あれよあれよと言う間に地上まで続く長い非常階段から多くの人間が地上に逃げ仰せていく。
「朱雀街の方でテロリストが人を殺して回ってるそうだ!」
「俺は玄武門が爆破されて死体が山積みになってるって聞いたぞ!」
「政府が私達を見限って地下に放水を始めるって聞いたわ!早く逃げなきゃ!」
情報が錯綜し、混乱極まる極楽町。デマが人々の間に流布され、火事場泥棒が料亭に押し掛けてキャストやオーナーを襲う場所も出てきた。
日本語がわからない外国人がパニックになり、叫び声をあげながら逃げる債務者に掴み掛かると、周囲を走っていた者達が一斉に外国人に殴り掛かって喧嘩が勃発する。
火の手が上がり、煙に呑み込まれて倒れ込む者。
逃げるのを諦めて、神や仏に祈り始める者。
京哉と麗慈は屋根伝いに走り、混沌極まる街の様子を見ながら中央宮殿の方へと向かっていった。
今回京哉に課されたのは、皇帝梁 緑仙の殺害である。
「皇帝って言うぐらいだから、なかなか表に出てこねーんじゃねぇの?宮殿に子供が多く捕まってるようなら、下手に立ち回れねーんだけど!」
隣の屋根に飛び移った京哉が麗慈に向かって大声を出す。
「その為にアイツを連れて来てる」
アイツ?と聞き返す間に宮殿前の巨大な門に到着した京哉は、彼らと同じ白い燕尾服を纏った男の姿を視界に入れると途端に青褪めた顔をした。
レンズ幅の狭いメガネをスチャッと上げながら踵を返したのは、巳継であった。各地の検問所の扉を破壊したのは彼である。
「ゆ…ゆりづかしゃん…」
にじり寄ってくる巳継に対しておずおずと後退する京哉であったが、両手をガッチリと掴まれて情けない悲鳴を上げた。
「京哉くん、また会えて嬉しいよ。精一杯サポートさせてもらうからな」
無理矢理握手してきた手を上下にブンブン振りながら宮殿の方へと引き摺る巳継には、京哉が泡を吹きながら失神している様子は見えていないようであった。
[42] lamentoso Ⅲ 完
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王の中は梁 緑仙。
極楽町の中央宮殿に住まい、花街の全ての利権を牛耳る者である。
都野崎からの要請で、当時地上で暮らしていた在日外国人を引き連れて地下の世界に潜ってから、花一匁と呼ばれる児童の人身売買を海外のバイヤー向けに斡旋して巨額の富を築いてきた。
緑仙の周囲には常に10人程の下女が取り囲んでおり、その後ろには更に10人の少年少女が並んで雑事に召し使われている。子供達は皆、次の花一匁で売りに出されるまで半年間程教育を受けるのだという。
真城深津葉もその中の一人であった。
不動産事業で多くの負債を抱える事となり、首が回らなくなった両親は苦肉の策として闇金に手を出してしまった。
利息を払うこともままならなくなり、真城涼と深津葉のきょうだいは地下へと売り飛ばされてしまったのだ。
戸を叩く音で目覚めた京哉は、PHSの画面を確認して大きな溜め息を吐く。これ程までに行きたくないと思った仕事は珍しい。
昨夜、調査対象であったはずの大山田淳弥と接触し、今回の依頼に絡む複雑な内情を説明させられてしまった為、京哉は凪央屋を抜け出すタイミングを完全に見失ってしまっていたのだ。
インターホンもドアアイも無い簡素な造りの為、来訪者を確認するには戸を開けて確認する他無い。
薄い布団を持ち上げて癖っ毛をワシャワシャと掻きながら玄関に向かう京哉を、再度戸を叩かれる音が早く開けろと急かしてくる。
「はいはい、どちらさ…ま…」
戸を開けてから気がつく。寝起きでマスクもメガネもしていないことに。真城の使っていた部屋から全く顔の違う人間が出てきたら流石に言い訳のしょうがない。
焦った京哉が再び戸を閉じようとするのを見て、来客は慌てて膝をねじ込んできた。
「待て待て!俺だよ!吉井!」
京哉がドアノブから手を離すと、玄関前に立っていた吉井は勢い余って室内に雪崩れ込んできた。
「もしかして…僕の代わりに個室のお客さんの所に…」
「ちげーよ。あんまりアンタが不安そうにしてたから、事前にどんなお客様か調べようと思ってオーナーの台帳拝借してきたんだよ」
案外大胆な事をやるものだと感心しながら、京哉は吉井の隣に座って彼がくすねてきたノートを確認し始めた。
びっしりと連ねられている文字の列を指でなぞる吉井は、ある一点で動きを止めた。
「珍しいな…一見さんだ」
「新規の人って事?そういうのお断りじゃないんだ」
彼らが勤める類いの店では、完全紹介制であることも珍しくない。しかし、凪央屋に至っては吉井曰くオーナーの『儲け至上主義』のせいで新規だろうと常連だろうといきなり個室予約を取れてしまうのだという。
「え、やだ…僕見ての通りか弱いから、怖い人だったらどうしよう…」
手で口元を隠して眉をハの字にしている京哉を無視し、吉井はノートの次ページを読み始めた。
「あー、なるほど。ID情報が書かれていないから何かと思えば。特殊職か」
「と…特殊職?」
パタンとノートを閉じた吉井は、小首を傾げている京哉に向き直って咳払いをした。そして、右手の人差し指を天井に立てながらニンマリと笑う。
「さて問題です。もし極楽町の中で大怪我をしてしまったら、どうすれば良いでしょうか?」
いきなりクイズを出してくる吉井のノリに戸惑いながらも、京哉は唇を尖らせながら答えを考えた。
「大怪我…命に関わるぐらいなら……もういっそのこと…」
「酷いなアンタ!……じゃあ、お産が始まりそうな時はどうする?」
地下と言えども、政府の人間や警察上官、海外からの来賓も多く訪れる場所なのだから救護所は常設されている筈だ。しかし、出産ともなれば話は別である。最悪、医療器具が十分に揃っていなかったとしても医師がいれば産後も母子共に適切な処置を施す事ができる。
そして、この極楽町では憂うべき事に妊娠出産と因縁が深い。
「医者…外から呼ぶとか?」
「正解ー。まぁ、上級国民と俺らとじゃ待遇は違うぜ、もちろん。奴等のとこには千代田区の病院からちゃんとした医者が来るけど、こっちはモグリの場合が多い」
吉井の解説を聞いて納得しながらも、何故今その話題を振るのかわからないといった顔をしている京哉。察しの悪い彼に呆れながらも、面倒見の良い性格の吉井は続けて解説した。
「つまり、特殊職ってのは医者とかエンジニアとか…千代田区外に住んでるけど技能を持ってないと務まらない仕事の事で、そういう奴はIDが無くても要請があれば一時的に極楽町に入れんだよ」
「あー…じゃあ、予約入れたのはそういう職業の奴って事?」
やっと伝わったか、と苦笑いを浮かべた吉井はノートを小脇に挟みながら踵を返した。
「仕事のついでにちょっと遊んでいこうって奴は割と多いからな。管理側もそういうのは結構目を瞑ってくれてるらしいぞ。さて…それじゃあ、俺にできるのはここ迄だ。頑張れよー」
にこやかに手を振って戸の向こう側に去っていった吉井を見送り、再び隠し持っていたPHSの画面に視線を移す京哉。
何度確認してもあと1時間ほどで凪央屋の開店時間になってしまう。どうして旋律師の自分がこんな事をしなければならないのだ…と心の中で嘆きつつも、過去に楽団の命令であらゆる任務に従事してきた記憶を思い起こす。
名前の付く悪事には殆ど経験のある自分が、夜職と言えども目標の為にまっすぐ生きている彼等の仕事をこんな事などと軽侮するような物言いをしてしまった事を恥じたのであった。
…………………………………………………………………………………
自身の邸宅に戻ってきた大山田が最初に顔を合わせたのは、身長190センチを超えるスーツを纏った大男だった。ペコペコと頭を下げる大山田の横を無言で通り過ぎ門前に横付けしたセダンに乗り込む間際、低く唸るような声で呟いた。
「アンタも苦労人だな。手に余るだろ、何の下積みも無しにこれだけのデカい会社を引き継ぐなんてな」
ゆっくりと大男の方に振り返った大山田の表情は暗い。
「賢く生きろよ、大山田社長。俺にとっても首相に気に入られてるアンタは大事な仕事仲間だからな。あぁ…奥さんにヨロシク」
「っ……」
言葉が喉まで出かかったものの、屋敷の2階の窓からひな子がこちらの様子を伺っているのが見えて、彼はグッと息を飲み込んだ。そして、両の手を握り締めながら深々と頭を下げて大男が乗り込んだセダンを見送る。
使用人達が帰宅した主人から上着や荷物を預かり散り散りになるなか、奥の部屋から姿を現したひな子が表情ひとつ変えぬまま彼の目の前まで歩み寄ってきた。
「…本当に使えない男だな、お前は。何で計画通りにやらないんだよ!?」
彼女の高圧的な声色に、顔を伏せながら首を小さく縦に振る。
「ごめん……睡眠薬を入れた水を飲んでくれなかったんだ…」
「うまく誘導しろよ!テメェのケツぐらいテメェで拭きやがれ!!」
怒りが収まらない様子のひな子は、近くに花を生けてあった花瓶を持ち出し、頭から水を掛けた。
生臭く冷たい感覚が顔を通り過ぎるのをじっと耐えている夫の情けない表情に背を向けたひな子は、ズカズカと乱暴な足音を立てながら奥の部屋に戻って行った。
大山田淳弥が真城に出会ったのは、都野崎に宮殿内での花一匁を見せられたその日であった。
接待に打ってつけの場所として紹介されたのが、凪央屋であった。この料亭のオーナーである田所には地上で消費者金融を経営しているというもう一つの顔があり、法外な利息を債務者に課して次々と地下送りにしていた。
国力を補う為の外貨を稼ぐ砦となっている極楽町。その働き手の補充という重要な役割を果たしている田所と都野崎は良きビジネスパートナーとして親交があったのだ。
その日、宴会の席で大山田の隣に座り酌をしたのが真城であった。
「大山田様はこのような店にはあまり足をお運になられないんですね」
「…は、はい。性に合わないと言いますか……無理に笑うのが苦手…でして」
そう言いながら乾いた笑いを見せる大山田は、真城にとって初めて出会うタイプの客であった。
「……僕もです。僕は…この見た目から喋り方、所作の端々まで全て仕事の為に身に付けたものなので」
口許は笑っているものの、大山田は真城の横顔から悲しみを感じ取った。
これは所謂、客を落とす為の手口なのかもしれない。同情を誘って、庇護欲を掻き立てる。しかし、大山田は何故か彼の話を信じてみたいと思ったのだ。
…………………………………………………………………………………
真城涼は親の借金を返済する為に、その身を売る事を強制される毎日を送っていた。妹の深津葉は宮殿の中で様々な教育を受け外国人バイヤーの手に渡り、いずれは海外に売り飛ばされる事になると聞いていた。
「君、妹が宮殿にいるんだって?」
ある日唐突に声を掛けてきた田所は、真城にある提案をした。
「バイヤーから妹を買い取れれば、君はそいつの大事な顧客って事でそれ相応の待遇を受けられる。凪央屋としてもお客さんのお客さんを売るなんて事はできないからね。外の世界に君らの居場所は無いけど、マネージャーとか営業職とか、管理者側に引っ張ってやる事はできるよ」
「……妹を…。一体どれだけのお金が必要になるんですか?」
妹を救い、自分も今の状況から脱する事ができる。かなりの好条件に疑いつつも希望を見出した真城であったが、田所の口からはあまりにも現実離れした金額が言い渡されて愕然とする。
「1億円、かな。この世界では基本的な単位だ。なぁに、君が凪央屋のナンバーワンになれば、次の花一匁までに稼げない金額じゃあない」
また希望を持たせるような耳障りの良い言葉を重ねてくる田所であったが、真城の顔をじっと見て訝しげな表情を見せた。
「うーん……ちょっと、イジってみる?地上から専門の人呼んでさ。少しお金は掛かっちゃうけど、それもペイ出来るぐらいイケメンに仕上げてもらおうよ」
田所の言葉の意味がわからずにキョトンとしていた真城であったが、目元や鼻をグリグリと弄られているうちに次第に理解し、恐怖を感じ始めた。
「せ、整形するって事ですか…?」
「そうよー。この業界は見た目重視。ツラが良いってのはわかりやすく指名を受けやすい。それじゃ、早速明日お医者さん呼んじゃうからねー」
半ば強制的に整形させられた真城は、生まれ持った姿とは全く違う顔で凪央屋に戻ってきた。そして、彼を絶望の底に叩き落とす言葉が田所の口から放たれたのだ。
「良いじゃん、真城ちゃーん!さすが100億はかけただけあるよー」
「……え…ひゃく……何を言ってるんですか?」
しきりに目を瞬かせて混乱する様子の真城の肩を叩く田所は、グッと顔を近付けて冷酷に笑って見せた。
「タダな訳ないだろ?店が負担してやってんだから、とっとと返せよ。あぁ、半年以内に100億貯まらなかったら、妹を買い取るお金なんて夢のまた夢だねェ」
呆然とする真城に哀れみの眼差しを向けていた田所であったが、次第に我慢しきれず大口を開けてそれは愉快そうにガハハと笑い始めた。
「騙された…とすぐにわかりました。100億なんて金、稼げる訳がない。それに、もし完済したとしても…親の借金の利息がかなり上乗せされてる状況なので、とてもじゃ無いけど妹を助ける為の金なんて払えません」
ジッと手元を見つめている真城の小声での告白、周囲の騒々しい話し声によって大山田にしか届いていなかった。
「日の当たらない場所でしか生きられない人間が、誰かを救おうだなんて烏滸がましかったんです。希望なんて持たなければ良かった…もう、僕は…俺たちは……」
代わりに自分が借金を完済しようと言ったとしても、オーナーの田所は更に彼から金を無心する為の方法をすぐに編み出してくるだろう。
地下に堕とされたら最後、死ぬまで地獄を這いずり回る事を強要されるのだ。
「……本当にすみません。こんな事をお客様に聞かせるなんて、どうかしていました。忘れてください…」
悲しそうに笑った真城が立ちあがろうとするのを、大山田は慌てて引き止める。
「諦めてはいけません…。必ず助かる方法はあります…!必ず……」
…………………………………………………………………………………
大山田はその日から暇を見ては凪央屋に足繁く通い、真城を励ました。
そして、極楽町の中を歩いている内に一つの妙案を思い付きその日の晩に連絡を入れた。
帰ってから嘔吐や下痢が酷く、病院を受診したところ飛沫感染をする酷い胃腸炎であった。隣で長時間会話をしていた真城にうつってしまったかもしれないから、気にかけて欲しい、と。
電話を受けた田所は、その日急な体調不良で真城が欠勤になると聞かされたばかりであった。
妹という人質がいる以上、真白は極楽町から逃げる事はできない。そう考えていた田所は、真城に地上の病院に行く事を許可したのだ。
まんまと地上に逃げ仰た真城を保護した大山田であったが、彼の動向を陰でずっと見ていたひな子は激昂した。
首相のお眼鏡にかない、政府から次々と大きな案件を受注していた大山田建設の業績は鰻登りに好調であった。しかし、社長が政府の管轄する施設から秘密裏に人を逃したと知られれば、会社の経営は傾くどころか完全に潰される未来が目に見える。
夫の愚行に怒り狂ったひな子は、どうにかこの危機を乗り越えなければならないと、思い切って政府内のある人物に打診をした。国土交通大臣の今永昌俊である。
建設関係の事業でかねてより今永と親交のあったひな子。美魔女と呼ばれる彼女の容貌は、夫が近しい人間からも羨望の眼差しを受ける程確かなものであり、今後の開発に関して相談したい事があると言って邸宅に彼を呼び出し、誘惑し、体の関係を持った。
「その真城という負債者の件については、俺の方でもみ消しておこう。その代わり……奴等を誘き寄せる為に利用させてもらう。俺もポイント稼ぎに苦労してんだよ」
今永はひな子を使い、楽団に依頼を出させた。彼らなら大山田の素行調査という簡単なおつかいを利用して、都野崎と懇意にしている人物に接近し、日本政府の何らかの動きを探ろうとしてくる筈だと踏んでいたからだ。
そして、今永の狙い通りに楽団はエージェントをひな子の元に送ってきた。
真城の戸籍を買い取ったと偽り、彼のIDを使わせて極楽町の中に閉じ込める。そして、調査対象である大山田の方から接近してくるという状況を作り、彼を使って丸腰の状態の旋律師を一人捕えるという計画であった。
しかし、大山田淳弥は京哉に睡眠薬を飲ませる事が出来なかったのだ。
今永、そしてひな子の計画は完全に狂ってしまったのだ。
…………………………………………………………………………………
薄暗い室内。あえて暗く設定されたLED電球を隠す行燈の近くでその時を待っていた京哉の表情は不安に満ちていた。
もう予約の時間が迫っているというのに、この状況を打破する方法が見当たらない。徐々に近付いてくる足音に鼓動がバクバクと狂ったように脈打っているのがわかった。
スパーンと勢い良く開いた障子戸の向こう側から一人の青年が敷居を跨いで入ってくると、京哉は目にも留まらぬ速さで床の間に飾られた掛け軸の裏側に身を隠した。勿論、相手からは丸見え状態である。
「や…やっぱり無理っ!!!ごめんなさい!帰ってください!店にクレーム入れてくれて良いんで!チェンジしてください!チェンジ!」
怒られる覚悟で叫んだ京哉は、必死の訴えも虚しく客の男が畳の床に荷物を置いた音が聞こえると、絶望に打ち震えながら白目を剥いてその場にへたり込んだ。
「こっちが指名してんだからチェンジとかねーだろ、馬鹿。早く出てこい」
聞き覚えのある声に、顔を上げる。脱いだカーキ色のモッズコートを簡単に畳んで荷物の上に置いていたのは、麗慈であった。
「………え、えっとー…」
何故この場所にいるのか、そう尋ねようとした時、京哉は彼が懐でハンドサインを送ってくる様子を確認した。
(話を合わせろ)
「この店で一番売れてるんじゃねーの、お前?」
「す、すみませんでした…病み上がりで調子良くなくて…」
(気付いてるなら、このまま演技しろ)
続いて出されたハンドサインを見て、京哉は麗慈の言わんとする事を完全に理解した。
そして、目を閉じてゆっくり一呼吸起き、完全に仕事モードの頭に切り替える。
荷物の横に胡座を描いた麗慈に歩み寄り、彼の顔を覗き込みながら自分も正座した。
「お仕事って何されてるんですか?」
「医者」
「えーすごーい。その荷物…今日はお仕事だったんですか?」
京哉はわざとらしく手を叩くと、モッズコートが乗せられたジュラルミンケースの方を指差しながら尋ねた。
「お産があったから呼ばれたんだよ。緊急帝王切開」
そう答えながら畳の上に敷かれた布団の方を見た麗慈は、次のハンドサインを出している。その指示内容に一瞬白目を剥いて気絶しかけた京哉だったが、すぐにまた営業スマイルを取り繕った。
「そんな大変なお仕事の後に、こんなお店に来てる先生って…大好きだったりします?」
麗慈との距離を詰めた京哉は、徐に膝の上に置かれた彼の手を握ってグイグイと引っ張り、立ち上がる様に促す。そして、麗慈の両肩に手を置いて敷布団の上に押し倒した。
「何が?」
ずっと黙っていた麗慈がボソリと聞き返すと、京哉は眉を顰めた。
(黙ってろ!)
小さくハンドサインを出す京哉だったが、麗慈が必死に笑いを堪えてるのがわかると殴りたい衝動を抑えて一度俯いた。
「意地悪言わないで早く始めましょうよ、先生…」
麗慈は身体の上に京哉が倒れ込んで来るのを抱き止める。そして喬笑を浮かべた京哉が彼の鎖骨の辺りに密着させた顔をズルズルと下半身の方へ滑らせていくと、頭の上まで掛け布団を被せて完全にその姿を隠した。
天井板の所々が外れ、頭上からアサルトスーツを纏った男達が室内に雪崩れ込んでくる。機関銃やナイフを構えた黒い影が布団の周囲を取り囲む刹那…
青白い光が薄暗かった室内を眩く照らし、掛け布団が勢い良く跳ね上がったのと同時に20人程の人集りが血飛沫を上げながら壁に叩きつけられた。
「蝿の駆除に決まってんだろヴアアァカッ!!!」
ピクリとも動かなくなった彼らの成す赤黒い円の中心では、白い燕尾服を纏い、刀身1メートル程の太刀を右手に握った京哉が鬼の形相でガルガルと獣の様な息遣いを繰り返しながら立っていた。
…………………………………………………………………………………
夜空のプロジェクションマッピングは緊急事態を知らせる表示へと切り替わり、天井に埋め込まれていた赤色灯が激しく明滅を繰り返す。
けたたましいサイレンの音に混乱する人々の様子を数寄屋造りの屋根の上に潜んで眺めているのは、白い燕尾服を纏った二人の男達である。
「さて…此処からどうするかは楽団上層部の審議待ちな訳だが…」
小型の双眼鏡で宮殿の方を眺めていた麗慈がふと視線を隣に戻すと、まだ眉間に深い皺を刻んでワナワナと唇を震わせている。
「どうした?シェリーみてぇな顔して?」
クスクス笑いながら茶化してくる麗慈を睨み付けた京哉。よほど先程の事が気に入らないのだろう。今度は拗ねた幼児のように唇をブーブーと尖らせ始めた。
「もうヤダ。麗慈なんか大っ嫌い」
「ハイハイ。今はブーたれる時間じゃねーから、とっとと情報共有」
通りから見えない位置に腰掛けた麗慈は、PHSの画面をスワイプさせながら楽団から出ている指示について読み上げた。
「大山田ひな子の依頼は顧客側の重要契約違反の為昨日付けで破棄。従事している旋律師には即刻離脱を命ずる…って事だけど」
「ふぅーん…」
昨夜の大山田淳弥との接触で得た情報を楽団に報告していた京哉は、上層部の下した当然の対応を聞いてまるで他人事の様に素っ気ない相槌を返した。
喧騒に包まれた極楽町を見渡しながら麗慈の隣までゆっくりと歩み寄り、隣に腰掛ける。
「で、ここからはお前が俺に頼んだ調べ物について。大山田からは何処まで聞いてる?」
「この町を管理してる奴が日本人のガキを外国人相手に売り捌く悪趣味な公開買い付け…って感じ」
指先を弄りながら答えた京哉は、これ以上に後ろ暗い事がまだあるのかと麗慈の方を睨み付ける。
「一定の期間に買い手が見つからない子供は花街の方で商売道具にするらしいが、その『道具』の使い様は多岐に渡る。町を抜け出そうとした人間の殺害、遺体の解体処理は全部子供の仕事だ」
「…ガキに殺しを?」
眉を顰めた京哉は、麗慈が手渡してきた彼のPHS画面を凝視した。
彼が調べ上げた花一匁の資料にザッと目を通しながら、子供を使った凡ゆる非道な行為について記述された部分でスワイプする手を止める。
「……母親殺しを見世物にする料亭の主人…」
子供連れの債務者も少なくはない。シングルマザーだった彼女は連日連夜の接客で大病を煩い、客を取れる体ではなくなってしまった。遊女を雇用している遊郭のオーナーは、花一匁に出した彼女の子供が売れ残っている事を知ると、呼び寄せて母親を始末する様に命令したのだという。
「生きたまま頭を石で殴り付けて殺害、その遺体から母親の愛用していた裁ち鋏を使って肉を剥がさせ、最後にその肉を煮込んで無理矢理食わせた…ってのは割と良くある話だそうだ」
淡々と述べられた鬼畜の所業に、京哉は無表情のまま虚空を見上げて黙り込んでいた。
美しく輝く古風な街並み。煌びやかな花街の影に蔓延る、人の道を外れた悪意。
一筋の光も届く事なく、ただ絶望に打ち拉がれる毎日を送らざるを得ない彼らの事実を知ってしまった大山田淳弥は京哉に切願したのだ。
「……極楽町という地獄から人々を救い出して欲しい…ってさ。馬鹿じゃねーの?僕達は正義の味方じゃねーってば」
気怠そうに顔を歪めた京哉に、麗慈も苦笑しながら答えた。
「救い出せってのは無理だろ。楽団にメリットが無ェ」
そして、PHSの画面がメッセージを受信したのを確認した京哉は、徐に立ち上がりながら持ち主の方へと投げ返した。
「そいじゃあ……サクッと壊しちゃいましょうか」
いつの間にか組み立てられていたフルートを構え、リッププレートに下唇を乗せる。青白い光が放たれるのと同時に、地上と繋がる検問所の全てが一瞬にして立ち昇った蒸気に包み込まれた。
…………………………………………………………………………………
オーストリアの楽団本社で行われた緊急会議では、大山田淳弥からの依頼を受諾するか否かについての議論が1時間ほど前に終了していた。
「本来なら異端本部の襲撃前に日本政府を刺激する様なことはしたくなかったのですがねぇ…」
「まぁ、あの国の外資収入と諸外国との裏の繋がりを断つ事で我々が活動しやすくなるというのも事実だからな」
一人掛けのソファチェアから立ち上がって会議室を後にする上層部の面々を見送ったロジャーは、『今回の依頼人』に今し方終了した査定会議の結果を知らせるべく、ノートパソコンの前でヘッドフォンを装着した。
AIによる同時通訳機能がついた特別回線に繋ぎ、単調な電子音が途切れるのを待つ。
『はい、大山田です』
「夜分にすみませんね。楽団代表取締役社長のハロルド・ロジャーです。ご依頼いただいた件について、社内での方針が決まりましたのでご報告いたします」
大山田ひな子からの依頼が破棄されたのと同時に、楽団には京哉伝いに夫の淳弥からの依頼が届いていた。
極楽町の債務者や子供達を救う事。それが、彼の願いだった。
しかし、それは楽団の領分ではない。これまでも、結果的に人助けをしてきたケースは多々あったが、それを目的とした依頼を受けた事はなかった。今回も例外ではない。
「査定の結果ですが、地下空間に捕えられている人間を全員助け出す…という依頼はお受け致しかねます」
大山田は落胆しつつも、事前に京哉から「望みは薄い」と聞かされていただけに、食い下がることなくロジャーの言葉を受け入れた。
「ただ…ご依頼の際にご提示いただいた金額や諸々の事情を加味して、“我々のやり方”でゴクラクチョウ・ビジネスを崩壊する事は可能です」
『…ほ、本当ですか…?』
まさか依頼が通るとは思っていなかった大山田の声色が明るくなる。しかし、一喜一憂する画面越しの相手にロジャーは最後、釘を刺す様に低く落ち着いた声で続けた。
「我々は何でもやりますが、何でも“出来る”訳ではありません。異能者は神ではありませんから。ご理解いただけますか?」
大山田は都野崎の言葉を思い出した。
「社長……全ての人間を救おうなんて、神でも無い限りそんな無責任な事を口にしてはいけない」
神でもない、戦う力も、逆らう度胸も無かった自分が出来る事は唯一つであった。
どちらの邪に賭けるか。
震える唇をぎゅっと噛んだ大山田は、画面の向こう側で微動だにせず自分の方を見据えているロジャーに向かって頭を下げた。
「よろしくお願い致します」
…………………………………………………………………………………
常夜街と地上とを別つ強固な金属製の扉が破壊された事により、捕えられていた債務者達が一斉に避難を開始した。
検問所の警備員達は逃げ出そうとする彼らを捕まえようと動き出したが、押し寄せる人だかりには極楽町に遊びに来ていた上級国民達も多く混ざっており乱暴な真似はできない。
あれよあれよと言う間に地上まで続く長い非常階段から多くの人間が地上に逃げ仰せていく。
「朱雀街の方でテロリストが人を殺して回ってるそうだ!」
「俺は玄武門が爆破されて死体が山積みになってるって聞いたぞ!」
「政府が私達を見限って地下に放水を始めるって聞いたわ!早く逃げなきゃ!」
情報が錯綜し、混乱極まる極楽町。デマが人々の間に流布され、火事場泥棒が料亭に押し掛けてキャストやオーナーを襲う場所も出てきた。
日本語がわからない外国人がパニックになり、叫び声をあげながら逃げる債務者に掴み掛かると、周囲を走っていた者達が一斉に外国人に殴り掛かって喧嘩が勃発する。
火の手が上がり、煙に呑み込まれて倒れ込む者。
逃げるのを諦めて、神や仏に祈り始める者。
京哉と麗慈は屋根伝いに走り、混沌極まる街の様子を見ながら中央宮殿の方へと向かっていった。
今回京哉に課されたのは、皇帝梁 緑仙の殺害である。
「皇帝って言うぐらいだから、なかなか表に出てこねーんじゃねぇの?宮殿に子供が多く捕まってるようなら、下手に立ち回れねーんだけど!」
隣の屋根に飛び移った京哉が麗慈に向かって大声を出す。
「その為にアイツを連れて来てる」
アイツ?と聞き返す間に宮殿前の巨大な門に到着した京哉は、彼らと同じ白い燕尾服を纏った男の姿を視界に入れると途端に青褪めた顔をした。
レンズ幅の狭いメガネをスチャッと上げながら踵を返したのは、巳継であった。各地の検問所の扉を破壊したのは彼である。
「ゆ…ゆりづかしゃん…」
にじり寄ってくる巳継に対しておずおずと後退する京哉であったが、両手をガッチリと掴まれて情けない悲鳴を上げた。
「京哉くん、また会えて嬉しいよ。精一杯サポートさせてもらうからな」
無理矢理握手してきた手を上下にブンブン振りながら宮殿の方へと引き摺る巳継には、京哉が泡を吹きながら失神している様子は見えていないようであった。
[42] lamentoso Ⅲ 完
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