騎士団に入る事になりました

セイラ

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第1章・第2騎士団

9,背中を預ける事

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私達は指定位置につき武器を構える。蜘蛛がまた、雷の一撃を放つ。

ゼン先輩は、峨眉刺がびしを懐から数本取り出し蜘蛛の足元に投げた。

「捕縛糸」
ゼン先輩が手を握り拳にした。

その瞬間、峨眉刺に繋がれた糸が現れ、あっという間に蜘蛛の動きを封じる。

私はその間に剣を蜘蛛の、雷を溜め放出している部分に刺す。

すると、悲鳴を上げる蜘蛛。これで、再生を放出部分の回復に回す事になる。

これで、溜まるまでの数秒は稼げるだろう。私が地に着地したと同時に3人が動く。

皆、武器に魔力を流して剣の強度を上げている様だ。

それぞれ攻撃をするが、剣は通ったものの倒す一撃になっていない。

凄く固い皮膚なのは、この魔物が希少種だからだろうな。

ーギヤァァァァ
巨大蜘蛛が悲鳴を上げる。

巨大蜘蛛の目は青から真っ赤になっている。怒っているのだ。

脳内に警鐘が鳴り響く。私は素早く後方の木の上に動いた。

他の皆もだ。やはり、火属性を持つ人を連れて来た方がいいだろう。

瞳を真っ赤に染めた巨大蜘蛛は、暴れダンさんの所へ走り出す。

「だから言ったじゃん!逃げようって!どうしよ!ここからどうしたらいいの!」

グレインさんは、理解が追いつかないのか叫び始める。

「皆、僕の糸はもう持たないよ!」
絶体絶命な感じかな。

希望は破棄され、不本意で第2騎士団に来た訳だが。

まあ、給料は貰ってる訳だから働くけどさ。ダンさんはクレイモアを構えている。

魔力を流し込んでいるのか、クレイモアは青く光る。

洗練された強化魔法は、流石である。私もダンさんの援護をする為、剣を構える。

ダンさんは、クレイモアを横に払い、斬撃を飛ばす。

斬撃は巨大蜘蛛の足を全て斬り倒した。私はジャンプし、巨大蜘蛛に近づく。

「夜桜の舞」
夜桜の舞は風魔法である。

風魔法で空気を圧縮した物が、桜の花弁の様な形をしているのだ。

圧縮された空気は、温度が上昇する。まあ、夜桜の舞の場合は別だ。

圧縮された空気で、強度を上げただけなので、温度は関係ない。

だけど、切れ味はあるよ。音はなく、静かに斬る事から夜桜と言う。

その鋭い無数の刃が、巨大蜘蛛を攻撃する。足が地についたと同時に第2の攻撃。

魔力を纏った剣に、圧縮された空気を纏わせ、更に強度を上げる。

「マナ纏い」
声の主に視線を向ける。

ダンさんは、クレイモアに魔力の層を纏わせた。肌がピリつく威圧を放っている。

私の攻撃とダンさんの攻撃は、巨大蜘蛛の急所に当たり討伐を完了した。

「やったー!倒した!」
グレインさんは大喜びだ。

「グレイン。喜ぶのはまだ、早いみたいだよ……。」

ゼン先輩の言う通りだ。森の奥から次々と魔物が出て来た。

「無事っすか!」
ヒューズ先輩が来た。

「無事じゃない!」
グレインさんが叫ぶ。

まあ、絶体絶命な感じがするね。魔物に囲まれてるからかな。

「この数、勝てる訳ないじゃん!逃げるのが1番いい!」

「逃げようって、何処っすか?」
「先ず、この数で勝てる保証ないじゃん!」

「なら、置いていくっすよ。」
「酷すぎるよ!友達だろ!」

漫才してる暇があるなら、倒すの手伝って欲しい。

魔力も体力もまだ余力はあるが、更に数が増え長期戦になるのはきつい。

ここは、グレインさんの言う通り、撤退すべきかな。

「ヒューズ、ここは確かに引くべきだよ。この人数で勝つ確率は低いんだから!」

「僕もゼン先輩に賛成です。ここは撤退し、援軍を待つべきです。」

ゼン先輩とアレンさんが説得しようとするが、ヒューズ先輩が頷く事はなく。

「……ゼン!新人達を連れて行くっす!」
「ヒューズは!」

「俺はここに残って足止めをするっす。」
「ヒューズさん!?」

「誰かが残って足止めをしなくちゃならないっす!」

「なら、俺も残るぞ。足止めは数が多い方がいいしな。」

「ダンまで何を!?」
「新人はこれからなんだよ!」

「そうっす。それに、生き残る確率は高い方がいいっす。」

魔物を倒しながら、先輩達は叫ぶ。誰かの為に命をかける……。

それは、なかなか出来る事じゃない。この魔物の量は先輩達もきついだろう。

生存確率はあったとしても、無事では済むはずがないのは考えなくても分かる。

「ヒューズ先輩、新人を舐めないで下さいよ。ね、レイラ。」

アレンさんに聞かれたので頷いた。確かに、自分の命はかけたくない。

だけど、一生懸命助けようとしている人間を無視出来る程、冷酷ではない。

「なっ!?アレンくんもレイラちゃんも何を言ってるの!?」

グレインさんが叫ぶ。ゼン先輩は、苦笑いをしている。

「グレイン、諦めなよ。皆が戦うなら、僕も一緒に戦うよ。」

「ゼンまで……分かったよ!やるよ!やりますよ!」

私達は、多くいる魔物を倒していく。囲まれたが、まだ戦える。

「うわっ!キングスライム!?皮膚が溶けるよ!」

「そうですね。全て溶けるでしょうから、骨も残らないですね。」

「そこ!冷静に言わない!」
グレインさんに突っ込まれた。

次の瞬間、鋭い氷河が魔物達を倒した。まだ残っているが、数は大分減った。

「お待たせしました。」
「間に合った様だな。」

白銀の髪の美青年と、赤いメッシュが入った癖のある黒髪。

第2騎士団団長と第3騎士団団長が援軍か。やばくない?

「よく持ち堪えましたね。」
「団長!この数はどう言う事!」

グレインさんが、第3騎士団団長に叫ぶ。団長さん達の説明によると。

東方面の魔物を多数撃破したものの、残りの残党がこちらに流れ込んで来た訳だ。

「俺はまだ戦えるっす!」
元気いっぱいですね。

「君達は戦えますか?」
シオン団長は私達に聞いて来た。

「「はい。」」
答えた瞬間、魔法攻撃が飛んできた。

見ると、オークの上位個体だった。団長さん達には、勝てないと見越してか……。

知恵は高い。戦術は弱者から倒すのが基本だ。それは認めよう。

だけど、少し腹が立つのも事実である。私は重心を低く剣を構える。

素早く上位個体のオークへ走る。オークは大きな大剣を振り下ろした。

私は最小限の動きで、振り下ろされた大剣を躱し、剣を振るう。


「やっと終わったね。」
「そうですね。」

あの後、私達は魔物を討伐する事に成功し、無事にテントで休んでいる。

「痛っ……。」
「大人しくして下さい。」

「手当て上手いね。」
「そうですね。」

自分の怪我を治す為に、薬学も医学知識も学んでいる。

アレンさんは軽傷。あの数を相手にしてこの程度なら、言い方なのだろう。

こうして、怪我人は多いものの無事に終わったのだった。




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