騎士団に入る事になりました

セイラ

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第3章・レイフィス獣王国

36,幻に騙される

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黒尽くめの男達を前に、私は短剣を構えている。相手が動いた。

背後に忍び寄る様な動きで、フェイント攻撃が多い。

その間に、魔法を使って罠を仕掛ける。相手の攻撃を短剣で逸らす。

懐に入られない様に配慮し、仕掛けていた魔法の攻撃を放った。

その魔法は、相手に直撃した。後1人、そう思い背後から攻撃して来る者の攻撃を防ぐ。

この一撃で、そう思った瞬間、背中の横腹辺りに激痛が走る。

そう、背後から刃物で刺されたのだ。刺された箇所は熱く、血が流れているのが分かる。

意識が朦朧とし、地面に倒れる。傷が深い為、出血の量が多い。

早く止血しないと、と思うのだが、痛みで身体が思う様に動かない。

「これで、邪魔者は始末したな。」
「後は、隊長さんを罠に嵌めるだけだな。」

「遅かったね。これで、予定通り闇オークションが開催できるよ。」

新たな人物の声が聞こえる。ああ……意識がもう……。

「後は上位貴族が、全てを隠蔽してくれるんだよな。」

「そうだよ。さて、早く動かないとね。」
「こいつはどうする?」

「ほっとけばいいよ。」
「一応、騎士団の仲間だろ?」

ケラケラと笑う黒尽くめの男達。
「俺は元々こっち側だけど?」

そう言って、去って行った。周りに気配はないな。

とある人物は、。それは、誰か。私だよ。

闇で生活する側なら、もう少し警戒しようよ。まさか、罠に引っかかるとはね。

裏切り者の炙り出しも出来て、証拠の一部始終の記録も付けた。

闇オークションの事も聞けたし、一石二鳥だね。後はシオン団長に報告するだけだ。

あいつらは、私が何者かに殺されたと、報告するだろう。

裏切り者がライクス隊長と偽って。ああ、私が何故生きているかと言うと……。

風魔法と土魔法の複合魔法で、幻を出現させたのだ。

種明かしは、密度が異なる大気の中で、光を屈折して目の前に物体を浮かび上がらせた。

その物体を私の姿に似せただけである。操作は難しいから、滅多に使わないけど。

黒尽くめ達が戦っていたのは、本体ではなく幻なのだ。

まあ、幻と気づかれない様に、攻撃の打ち合いの時に工夫はした。

やばい時は、仕掛けていた魔法の攻撃で誤魔化したりした。

と、そう言う話は後にして、今はシオン団長に一刻も早く報告しないと。



私は深緑色ローブのフードを深く被り、城まで一気に走る。

魔法や気配を消して、シオン団長のいる場所へ侵入した。

シオン団長の部屋の窓に小石を投げる。開けるのを見て、一気に入る。

とは言え、窓縁に両足を掛けた瞬間、シオン団長に剣を向けられたけど。

「レイラ、貴女でしたか。不法侵入者として、切る所でしたよ。」

さらりと怖い事を言うな。必死に情報を持って来たと言うのに。

「すいませんが、部屋に入れてくれませんか?私、死んだ事になってますので。」

「はっ?」
シオン団長は私の頬をつねり引っ張った。

「いひゃい、いひゃいれふ。」
そんなに引っ張らなくても!

「今何と言いましたか?」
青筋を浮かべるシオン団長。

「いひゃいれふ。」
更に引っ張る。

「それではありません。最初に言った言葉です。もう一度聞きますね。」

「わはしは、いま、ひんらほとにらっていまふ。」

「どうやったらそんな事になるのか、説明してくれますよね?」

「ひゃい。」
やっと頬を離してもらった。

痛い。確実に赤くなっているであろう頬を、優しく撫でる私。

あった事の全てを報告する。話すにつれ、顔が引き攣るシオン団長。

私が刺されたの下から、青筋を浮かべている。誤魔化す為だと言っても変わらぬ表情。

私を怒らないで欲しい。まあ、大分無茶をした自覚はあるけど。

「レイラ、貴女は自分の身を大切にすべきです。いいですね。」

これでもかと言う程、自分の身が大切ですけど。

「はい。」
素直に返事をする。

「ですが、ここまでの情報、ありがとうございます。」

「私の事は、そのままにしておこうと思います。その方が、動き易いですから。」

「その事については、分かりました。ですが、無理は禁物です。」

おかんだな。
「今、失礼な事を考えましたか?」

「……いいえ、心配性だなと思っただけですよ。」

「それは、貴女の行動を見れば、そう思うのは当然ですがね。」

「兎に角、常に新しい情報が入り次第、随時ご報告します。」

「分かりました。ライクス隊長の事は、気にせずこちらに任せなさい。」

コクリと頷く。あの人は恐らく上手くやる事だろう。

「そうでした。こちらも、情報を提供するべきですね。」

諜報部隊が得た情報に、闇オークションの日程と場所を教えて貰った。

よく調べたな。闇オークションは、闇に詳しい人間しか知らない筈だ。

公爵家であろうと、王家に絶対の忠誠を誓っている限り、分からない事だ。

闇に手を染めまくっている人間が、一同に集まる場所だものね。

「情報をありがとうございます。」
頭を下げ、部屋を出る。

見つからない様に気配を消して、城を出る。来る前に、宿をとっていたのだ。



その宿に向かう。結界魔法と警戒魔法の魔道具を仕掛けておく。

さて、私が調べるべきは、誘拐された子達の居場所を探す事だな。

考えられる場所は、貴族の家の地下室。空き家は目立つだろう。

闇のオークションをするなら、売られる子達も多くいる筈だ。

そんな人数を、多く集めたら目立つに決まっている。

なら、夜中に行動を起こす?いや、騎士の見回りがある筈だ。

それに、闇営業とは別に、夜中から仕事をする者もいる。

その人達の目を欺けて、集めるのは至難の業。闇オークションの近場にいるのが普通だ。

移動させる距離が短ければ、見つかる心配もないものね。

あっ、そうだ。とある花の香りを黒尽くめ達にも、付けたんだった。

戦っている最中につけたのだ。この花の名は、クレイフィス。

前世にはない花で、自分の魔力を流すと魔力の質から匂いを変えると言う花だ。

確か、花言葉もあったな。忘れたけどね。この花はあまり人気がない。

とある魔物を除いては。クレイフィスの花は、クレイテリサの魔物の餌だ。

クレイテリサは、クレイフィスの花が大好物なのである。

だから、クレイフィスの花の香りを辿るのは、大得意なのである。

幸いと言うべきか、この地域はクレイフィスが咲く場所ではない。

つまり、間違える事は恐らくないだろう。まあ、そんな事は関係ないけどね。

それ以前に、私が魔力を流した花を持っているから大丈夫何だけどね。

後は、クレイテリサの魔物に、クレイフィスの花を食べさせるだけだ。

これを知ったのは、師匠の訓練を受けている時、医学を学んでいた頃の事だ。

偶々、知ったんだよね。知らない事を知る事ができるのは楽しい。



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