モブ令嬢は白旗など掲げない

セイラ

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学園編(初等部)

再会と乗馬

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メガネ少年の言葉に作業の手を止めて、立ち上がる。

「お初にお目にかかります。セシリア・メルファーナと申します。」

「彼女はエースだよ。」
「ほう。」

「セシリア・・・」
「俺はナツ・リグシード。中等部1年だ。」

「・・・僕はアスター・アルジェント。ナツと同じ中等部1年だよ。久しぶりだね。」

そう言って優しく微笑むアスター先輩。久しぶり?何処かであったかな?

でも、初めてな感じがしないんだよね・・・。
「覚えていないかな?君が幼い頃だったからね。」

幼い頃・・・路上ライブのお兄さん!
「ギターのお兄さん。」

「覚えていてくれたんだ!」
私の言葉に、満面の笑みになるアスター先輩。

それにアルジェントって、貴族・・それにロゼットと同じ家名!

「ロゼットとアスター先輩は、兄弟だよ!」
アシンが教えてくれた。

「また、会えると思って無かったよ。嬉しい。」
「私も再会出来て、嬉しいです。」

私の言葉を聞いたアスター先輩は、優しい笑みを浮かべ私の手を取る。

そのまま流れる動作で、手の甲にキスを落とした。
「「「なっ!?」」」

「ヒューやるね。アスター先輩!」
「あんな笑顔、久しぶりに見たな。」

全く手を離してくれない。そんな私を見かねたのかナツ先輩が間に入ってくれた。

助かったなどと思っていたら、ナツ先輩も私の手を取った。まさか・・・。

そう思った時には既に遅く、ナツ先輩も私の手の甲にキスを落とした。

またもや放心状態になるシスイ様・エジス・リベルを前に、意地の悪い笑みを零すナツ先輩。

この人、この状況を楽しんでるな。
「アハハハ、面白い!」

アシンの何をツボにハマらせたのか大爆笑。アシンに回し蹴りをするリベル。

しかしアシンは軽々と避けた。私は挨拶を終えたのでナツ先輩の手を解く。

そして、作業に戻った。
「少し休憩しようよ。」

「そうですね。」
アシンの提案にエジスが答えた。他の面々も頷く。

私は作業の手を休める事なく言い放った。
「駄目ですよ。休憩はなしです。」

「え~何で!?」
アシンが文句を言うので、理由を述べる。

「先程まで皆さんは、追いかけっこをしていたじゃないですか。」

「うっ」
「でも~!」

「自業自得ですよね?終了時間は後、1時間ですよ。新たな書類整理も増えていますし。」

私は微笑む。しかし、周りから見れば笑っていない。
「それで、今日の書類を全て明日に回しますか?」

この一言で、彼等は作業に戻った。誰だって何時間も、休みなしの書類仕事は嫌だろう。

私だって嫌である。書類があるので先輩達は帰って行った。

「また、来るよ。」
「書類整理、頑張れよ。」

ーー自分の仕事を終わらせて屋敷へ帰った。

自分の部屋に戻り、コハクをもふもふしながら眠る。

朝に学園へ行く準備をして、学園に向かう。今日の授業は乗馬の練習だ。

馬に乗るには、正しい馬の乗り方と馬との信頼関係を築く事が重要。

つまり、今日の授業は馬との信頼関係を作る事が主な目的である。

その為には話しかけたり、世話をしたりしなくてはいけない。

その前に、自分に合った馬を探すのが重要なのだけどね。

私はコハクと馬を探す。他の皆?ええ、私以外は友達と探しているよ?

寂しそう?大丈夫、コハクがいるからね。馬を見て回る中で1匹の馬に目がいった。

黒馬で毛並みが汚れている。そして周りを威嚇し、近づけさせない様にしている。

「嬢さん、その馬は辞めときな。」
黒馬に近くと飼育員のおじさんが止めて来た。

「その馬はマッハと言ってね。前の飼育者が酷い乗り方をして心を閉じてしまったのさ。」

飼育者よ。乗り方が酷過ぎて心を閉じだとか、マッハが可哀想だよ。

「マッハに近く事は出来ないよ。怪我の確認も出来ないからね。」

怪我の可能性もあるのか。
「マッハには近づかない方がいい。」

おじさんは心配そうにマッハを見てから、飼育に戻って行った。

私はマッハに近づいた。マッハはとても威嚇する。
「大丈夫。私は君を傷つけません。」

手を近づけると、近寄るなと暴れて威嚇する。私はそれでも手を近づけた。

マッハを見ていると、自分を見ている様だったから。周りを信じる事が怖いから。

だから遠ざけようとしてしまう。自分の心を閉じて周りを拒絶してしまう。

私の様にはならないで欲しいから。そう思って近づいた。このままだと、私が後悔するから。

「っつ!?」
『セシー!?』

案の定噛まれた。私は振り解く事なくマッハを撫でた。

「大丈夫だよ。私は傷つけない。怖かったね。」
そう言葉を語りかけながら撫でる。

マッハは噛んでいた私の手を解き、私の頬に顔をすり寄せる。

ごめんねと言う様に。私はマッハを撫でた。
「マッハは怪我をしている見たいね。」

マッハの身体を見ていると脚に怪我をしている様だ。
「癒しの羽衣」

私の詠唱に炎の鳥が現れた。その鳥はとても幻想的で美しく、優しく傷を癒した。

特性の回復は属性ごとに使用可能なので、火属性の癒しをかけた。

この魔法は炎の鳥が羽で包んだ場所の傷を治す事が出来る。

自分の手にもかけた。マッハは嬉しそうに私に撫でられている。

「マッハ!?それにお嬢さん!?」
その光景を見たおじさんはこちらに駆けつけて来た。

「お嬢さん、そのままでいて欲しい。傷を見たい」
私はその言葉に頷いた。

治したけど、飼育者としてマッハの怪我を確認したいのだろう。

「怪我はないな。ありがとう、お嬢さん。」
「お礼は結構ですよ。私はマッハを心配しただけですので。」

ヒィヒィ~ンと甘えた声で鳴くマッハを撫でる。

「凄く懐かれているね。お嬢さん、騎士科の生徒だろう?この子と訓練して欲しい。」

「いいんですか?」
「ああ。マッハがお嬢さんを好いてるしね。」

マッハも嬉しそうに鳴く。
「お嬢さんなら、安心して任せられる。」

そんな感じで、マッハは私の訓練相手となった。コハクとも仲良くなり、めでたしである。

信頼関係を作るのが目的なので、マッハの身体を洗ってあげる。

洗って風魔法で乾かすと、マッハは真っ黒な美しい毛並みをしていた。

そんな光景を見ていた飼育者のおじさんは呟いた。
「あんなに仲がいいなら、乗馬出来るんだけどね。」

私の安眠の地がまた一つ増えた瞬間だった。



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