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第一章 凍てつく春と、雪解けのメス
第1話 止まない雨と、嵐の再来
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3月下旬。
段ボールの山に囲まれた、殺風景な1LDK。
天野 皐月はコンビニのおにぎりを機械的に口に運びながら、窓ガラス越しに雨に煙る灰色の街並みをぼんやりと眺めていた。
ここは北関東の地方都市。
皐月の生まれ育った場所だ。
東京の煌びやかな夜景とは違う。
どこか沈んだ、湿った空気。
まさか、こんな形で故郷に戻ってくることになるとは、皐月は思わなかった。
「……皐月、ごめん。浮気相手、妊娠したんだ」
10月の雨の日だった。
都内のカフェで、高橋 陽介はいつもの優柔不断な顔を歪めながら、決定的な事実を口にした。
相手は、皐月と陽介が勤務していた大学病院の病棟看護師。
皐月が式場選びで休日の予定を埋めていた裏で、彼は別の女と関係を持ち、あろうことか子供まで作っていたのだ。
しかも、妊娠10週目。
つわりが始まったと聞いて、ようやく告白する気になったらしい。
その瞬間、皐月の脳裏をよぎったのは怒りよりも先に、もっと古い、喉の奥が焼けるような記憶だった。
――『ごめんな。父さん、他に守りたい人ができたんだ』
皐月が中学生の時、父はそう言って家を出て行った。
泣き崩れる母の背中を見ながら、彼女は子供心に深く刻み込んだはずだった。
「男は裏切る生き物だ」「信じたら馬鹿を見る」と。
それなのに。
皐月はまた、同じ過ちを繰り返した。
「……汚い」
あの時、皐月が絞り出したのは生理的な嫌悪感だった。
左手の薬指にはめられた婚約指輪が、急に汚らわしい拘束具のように思えて、彼女はその場で引き千切るように外すと、テーブルに叩きつけた。
プライドだけが、皐月の背骨を支えていた。
泣き叫ぶことすらできなかった。
あれから半年。
本来であれば、4月からは陽介と同じ都内の大学病院で、皮膚科専攻医としてスタートするはずだった。
だけど、陽介やあの看護師と同じ職場ではとてもじゃないけど働けない。
皐月は噂好きの看護師たちの視線に耐え、針のむしろのような職場で年度末まで勤め上げ、逃げるようにこの街へ帰ってきた。
都内でのキャリアも、人脈も、未来予想図も。
すべてを東京の雨と一緒に捨てて。
*
この街には、母がいる。
母はこの地元の国立大学出身の皮膚科医だ。
そのツテを頼り、母の先輩である皮膚科の柊教授にお願いして、入局させてもらうことになった。
いわゆる「都落ち」。
そして「コネ入局」。
地方の国立出身者が多いこの医局で、私立医大卒の皐月がどう見られるか。
想像するだけで胃が重くなる。
ふと、荷解きの途中で手が止まった。
引越しの段ボールに無造作に放り込んでおいたもの。
段ボールの奥底から取り出したのは、一台のスマートフォンだった。
画面にヒビが入り、今はもう電源も入らない
高校時代に使っていた古い機種だ。
捨てられずに持ってきてしまった、高校時代の「遺物」。
受験時代の参考書や模試の結果は、すべて実家の押し入れに封印してきた。
見るのも嫌だったからだ。
けれど、この黒い板だけは、なぜか手放せなかった。
指で冷たい画面をなぞる。
この中には、まだ消去していない「あの日々」が眠っているはずだ。
放課後の図書室で撮った、ふざけた写真。
『おはよう』『今から向かう』なんていう、他愛のないメッセージの履歴。
そして、受験当日に交わしたはずのやり取り。
――『二人でこの大学に一緒に受かろう』
記憶の蓋が、勝手に開く。
五十嵐 拓海。
ぶっきらぼうで、いつも偉そうで、制服のシャツからは洗剤の安っぽい匂いがして。
でも誰よりも成績が良かった同級生。
あの日、神社で誓った言葉は、今でも皐月の耳に残っている。
けれど、二人は後期試験を迎える前に決別した。
皐月の不用意な一言が、彼の逆鱗に触れたのだ。
そのまま疎遠になり、皐月は国立に落ちて私立へ。五十嵐の進路は風の噂でも聞かなかった。
電源が入らないこのスマホのように、私たちの関係もプツリと途切れてしまった。
「……男なんて、結局みんなそう」
父も、五十嵐も、陽介も。
大事な約束なんて、彼らにとってはただの言葉遊びに過ぎない。
そして、ひび割れたスマホの横には丁寧に畳まれた、一枚の濃紺のハンカチが入っていた。
スマホは、五十嵐との思い出。
ハンカチは、顔も名前も知らない、私を救ってくれた「恩人」との唯一の繋がり。
私はスマホを引き出しの奥へしまい、見なかったことにした。
ハンカチだけを手に取り、そっと胸に当てる。これがあるから、私はまだ医者を続けられる気がする。
鏡の中の自分と目が合う。
26歳。4月から医師3年目。
もう恋愛も結婚もいらない。
信じられるのは自分自身と、積み上げてきた知識と技術だけ。
皐月は小さく呟き、最後の段ボールを閉じた。
4月からの勤務先は、かつて憧れ、そして皐月を拒絶したあの国立大学病院。
何があっても、もう二度と誰にも心なんて許さない。
*
そして迎えた、4月第2週。
新入職者向けのオリエンテーションが終わり、いよいよ今日からが皐月の本格的な勤務開始日だ。
窓の外は相変わらずの雨模様。
東京ではあれほど「自由を縛る象徴」として憎んでいた白衣も、この場所では皐月の軟弱な心を隠し、身を守る唯一の「鎧」のように感じられる。
まずは教授室への挨拶だ。
緊張しながらノックすると、「入りなさい」という重厚な声が響いた。
扉を開けると、そこには母の大学時代の先輩である柊教授が、温和な笑顔で待っていた。
「よく来てくれたね、天野くん。君のお母さんにはいつも世話になっているよ。ここでは思う存分、研鑽を積んでほしい。困ったことがあったら、遠慮なく相談してくれ」
柊教授の優しい言葉が、皐月の凝り固まった心を少しだけ解きほぐす。
だが、それは同時に「母の七光り」という事実を再確認させるものでもあり、皐月の背中をじっとりと汗ばませた。
その後、皐月は医局員が揃うカンファレンスルームへ案内された。
朝の申し送りの時間。
十数名程度の医師たちが座る中、皐月の入室と共に空気が変わるのが分かった。
皐月は深く一礼し、震える声を腹の底から押し出した。
「天野皐月です。この度、皮膚科医局でお世話になります。至らない点も多々あるかと思いますが、よろしくお願いいたします」
一瞬の沈黙。
医局員たちの視線が皐月に突き刺さる。
その直後、一人の男性医師がゆっくりと立ち上がった。
30代前半。整った顔立ちだが、その表情は凍りついたように動かない。銀縁の眼鏡の奥にある切れ長の目が、ピンと張り詰めた空気を纏っている。
「私が君の指導医となる雨宮 潤一だ」
彼の低く、抑揚のない声が室内に響いた。
「単刀直入に言う。本来、この医局に君の席はなかった」
心臓を鷲掴みにされたような衝撃が走る。
雨宮は皐月を見据えたまま、淡々と続けた。
「教授のお力添えがあったことは理解している。だが、君にはそれに見合うだけの働きを期待する。そうでなければ、ここにいる他の医師たちにも、患者にも失礼だ。私立ご出身のお嬢様気分は、今この瞬間捨ててもらう」
皐月に向けられた、鋭利なナイフのような宣告。
歓迎ムードなど欠片もない。
それは、コネ入局という皐月の最大の弱点を的確に突き、その傷口を広げるような明確な「牽制」だった。
反論などできるはずもない。皐月はただ、唇を噛み締め、「……はい」と答えることしかできなかった。
「……よし。和泉くん、天野くんに院内を案内してあげてくれるか」
柊教授の助け船で指名されたのは、皐月の隣に座っていた女性医師ーー和泉 美雲だった。
彼女は明るい笑顔で「承知いたしました! 行こう、皐月ちゃん」と皐月の背中を押してくれた。
カンファレンスルームを出て、渡り廊下へ。
ガラス窓の向こうには、雨に濡れた大学校舎が見えた。
かつて目指した場所。けれど今は、灰色に見える。
「あ、皐月ちゃん、ちょっとごめんね」
ナースステーションの前で、美雲が立ち止まった。
「私、女子更衣室にPHS忘れちゃったみたい。すぐ取ってくるから、そこで待っててくれる?」
「はい、分かりました」
美雲が小走りで去っていく。
皐月は一人、廊下の壁際に立って、ぼんやりと雨打つ窓を仰いだ。
耳の奥で、雨音に混じって、9年前の声が蘇る。
――『なあ、天野。俺たち、2人でこの大学に入って、医者になろうな』
あの時、固く誓い合った約束。
叶わなかった、幼すぎた誓い。
「……天野?」
不意に。
記憶の中の声と、現実の声が重なった。
皐月の心臓が大きく跳ね上がる。
恐る恐る振り返ると、そこに立っていたのは、紺色のスクラブに白衣を羽織った、かつての同級生だった。
少し大人びた顔つき。
けれど、その不機嫌そうな眉間の皺は、あの頃のままだ。
彼は信じられないものを見るかのように目を見開き、皐月を凝視している。
時が止まる。
すべての音が遠のき、彼と皐月だけの空間が切り取られたようだった。
「五十嵐……?」
「……なんで、お前がここにいるんだ」
9年ぶりの再会。
皐月の口から漏れた震える声に対し、彼が返したのは、あの日と同じ拒絶の色を含んだ、低い問いかけだった。
段ボールの山に囲まれた、殺風景な1LDK。
天野 皐月はコンビニのおにぎりを機械的に口に運びながら、窓ガラス越しに雨に煙る灰色の街並みをぼんやりと眺めていた。
ここは北関東の地方都市。
皐月の生まれ育った場所だ。
東京の煌びやかな夜景とは違う。
どこか沈んだ、湿った空気。
まさか、こんな形で故郷に戻ってくることになるとは、皐月は思わなかった。
「……皐月、ごめん。浮気相手、妊娠したんだ」
10月の雨の日だった。
都内のカフェで、高橋 陽介はいつもの優柔不断な顔を歪めながら、決定的な事実を口にした。
相手は、皐月と陽介が勤務していた大学病院の病棟看護師。
皐月が式場選びで休日の予定を埋めていた裏で、彼は別の女と関係を持ち、あろうことか子供まで作っていたのだ。
しかも、妊娠10週目。
つわりが始まったと聞いて、ようやく告白する気になったらしい。
その瞬間、皐月の脳裏をよぎったのは怒りよりも先に、もっと古い、喉の奥が焼けるような記憶だった。
――『ごめんな。父さん、他に守りたい人ができたんだ』
皐月が中学生の時、父はそう言って家を出て行った。
泣き崩れる母の背中を見ながら、彼女は子供心に深く刻み込んだはずだった。
「男は裏切る生き物だ」「信じたら馬鹿を見る」と。
それなのに。
皐月はまた、同じ過ちを繰り返した。
「……汚い」
あの時、皐月が絞り出したのは生理的な嫌悪感だった。
左手の薬指にはめられた婚約指輪が、急に汚らわしい拘束具のように思えて、彼女はその場で引き千切るように外すと、テーブルに叩きつけた。
プライドだけが、皐月の背骨を支えていた。
泣き叫ぶことすらできなかった。
あれから半年。
本来であれば、4月からは陽介と同じ都内の大学病院で、皮膚科専攻医としてスタートするはずだった。
だけど、陽介やあの看護師と同じ職場ではとてもじゃないけど働けない。
皐月は噂好きの看護師たちの視線に耐え、針のむしろのような職場で年度末まで勤め上げ、逃げるようにこの街へ帰ってきた。
都内でのキャリアも、人脈も、未来予想図も。
すべてを東京の雨と一緒に捨てて。
*
この街には、母がいる。
母はこの地元の国立大学出身の皮膚科医だ。
そのツテを頼り、母の先輩である皮膚科の柊教授にお願いして、入局させてもらうことになった。
いわゆる「都落ち」。
そして「コネ入局」。
地方の国立出身者が多いこの医局で、私立医大卒の皐月がどう見られるか。
想像するだけで胃が重くなる。
ふと、荷解きの途中で手が止まった。
引越しの段ボールに無造作に放り込んでおいたもの。
段ボールの奥底から取り出したのは、一台のスマートフォンだった。
画面にヒビが入り、今はもう電源も入らない
高校時代に使っていた古い機種だ。
捨てられずに持ってきてしまった、高校時代の「遺物」。
受験時代の参考書や模試の結果は、すべて実家の押し入れに封印してきた。
見るのも嫌だったからだ。
けれど、この黒い板だけは、なぜか手放せなかった。
指で冷たい画面をなぞる。
この中には、まだ消去していない「あの日々」が眠っているはずだ。
放課後の図書室で撮った、ふざけた写真。
『おはよう』『今から向かう』なんていう、他愛のないメッセージの履歴。
そして、受験当日に交わしたはずのやり取り。
――『二人でこの大学に一緒に受かろう』
記憶の蓋が、勝手に開く。
五十嵐 拓海。
ぶっきらぼうで、いつも偉そうで、制服のシャツからは洗剤の安っぽい匂いがして。
でも誰よりも成績が良かった同級生。
あの日、神社で誓った言葉は、今でも皐月の耳に残っている。
けれど、二人は後期試験を迎える前に決別した。
皐月の不用意な一言が、彼の逆鱗に触れたのだ。
そのまま疎遠になり、皐月は国立に落ちて私立へ。五十嵐の進路は風の噂でも聞かなかった。
電源が入らないこのスマホのように、私たちの関係もプツリと途切れてしまった。
「……男なんて、結局みんなそう」
父も、五十嵐も、陽介も。
大事な約束なんて、彼らにとってはただの言葉遊びに過ぎない。
そして、ひび割れたスマホの横には丁寧に畳まれた、一枚の濃紺のハンカチが入っていた。
スマホは、五十嵐との思い出。
ハンカチは、顔も名前も知らない、私を救ってくれた「恩人」との唯一の繋がり。
私はスマホを引き出しの奥へしまい、見なかったことにした。
ハンカチだけを手に取り、そっと胸に当てる。これがあるから、私はまだ医者を続けられる気がする。
鏡の中の自分と目が合う。
26歳。4月から医師3年目。
もう恋愛も結婚もいらない。
信じられるのは自分自身と、積み上げてきた知識と技術だけ。
皐月は小さく呟き、最後の段ボールを閉じた。
4月からの勤務先は、かつて憧れ、そして皐月を拒絶したあの国立大学病院。
何があっても、もう二度と誰にも心なんて許さない。
*
そして迎えた、4月第2週。
新入職者向けのオリエンテーションが終わり、いよいよ今日からが皐月の本格的な勤務開始日だ。
窓の外は相変わらずの雨模様。
東京ではあれほど「自由を縛る象徴」として憎んでいた白衣も、この場所では皐月の軟弱な心を隠し、身を守る唯一の「鎧」のように感じられる。
まずは教授室への挨拶だ。
緊張しながらノックすると、「入りなさい」という重厚な声が響いた。
扉を開けると、そこには母の大学時代の先輩である柊教授が、温和な笑顔で待っていた。
「よく来てくれたね、天野くん。君のお母さんにはいつも世話になっているよ。ここでは思う存分、研鑽を積んでほしい。困ったことがあったら、遠慮なく相談してくれ」
柊教授の優しい言葉が、皐月の凝り固まった心を少しだけ解きほぐす。
だが、それは同時に「母の七光り」という事実を再確認させるものでもあり、皐月の背中をじっとりと汗ばませた。
その後、皐月は医局員が揃うカンファレンスルームへ案内された。
朝の申し送りの時間。
十数名程度の医師たちが座る中、皐月の入室と共に空気が変わるのが分かった。
皐月は深く一礼し、震える声を腹の底から押し出した。
「天野皐月です。この度、皮膚科医局でお世話になります。至らない点も多々あるかと思いますが、よろしくお願いいたします」
一瞬の沈黙。
医局員たちの視線が皐月に突き刺さる。
その直後、一人の男性医師がゆっくりと立ち上がった。
30代前半。整った顔立ちだが、その表情は凍りついたように動かない。銀縁の眼鏡の奥にある切れ長の目が、ピンと張り詰めた空気を纏っている。
「私が君の指導医となる雨宮 潤一だ」
彼の低く、抑揚のない声が室内に響いた。
「単刀直入に言う。本来、この医局に君の席はなかった」
心臓を鷲掴みにされたような衝撃が走る。
雨宮は皐月を見据えたまま、淡々と続けた。
「教授のお力添えがあったことは理解している。だが、君にはそれに見合うだけの働きを期待する。そうでなければ、ここにいる他の医師たちにも、患者にも失礼だ。私立ご出身のお嬢様気分は、今この瞬間捨ててもらう」
皐月に向けられた、鋭利なナイフのような宣告。
歓迎ムードなど欠片もない。
それは、コネ入局という皐月の最大の弱点を的確に突き、その傷口を広げるような明確な「牽制」だった。
反論などできるはずもない。皐月はただ、唇を噛み締め、「……はい」と答えることしかできなかった。
「……よし。和泉くん、天野くんに院内を案内してあげてくれるか」
柊教授の助け船で指名されたのは、皐月の隣に座っていた女性医師ーー和泉 美雲だった。
彼女は明るい笑顔で「承知いたしました! 行こう、皐月ちゃん」と皐月の背中を押してくれた。
カンファレンスルームを出て、渡り廊下へ。
ガラス窓の向こうには、雨に濡れた大学校舎が見えた。
かつて目指した場所。けれど今は、灰色に見える。
「あ、皐月ちゃん、ちょっとごめんね」
ナースステーションの前で、美雲が立ち止まった。
「私、女子更衣室にPHS忘れちゃったみたい。すぐ取ってくるから、そこで待っててくれる?」
「はい、分かりました」
美雲が小走りで去っていく。
皐月は一人、廊下の壁際に立って、ぼんやりと雨打つ窓を仰いだ。
耳の奥で、雨音に混じって、9年前の声が蘇る。
――『なあ、天野。俺たち、2人でこの大学に入って、医者になろうな』
あの時、固く誓い合った約束。
叶わなかった、幼すぎた誓い。
「……天野?」
不意に。
記憶の中の声と、現実の声が重なった。
皐月の心臓が大きく跳ね上がる。
恐る恐る振り返ると、そこに立っていたのは、紺色のスクラブに白衣を羽織った、かつての同級生だった。
少し大人びた顔つき。
けれど、その不機嫌そうな眉間の皺は、あの頃のままだ。
彼は信じられないものを見るかのように目を見開き、皐月を凝視している。
時が止まる。
すべての音が遠のき、彼と皐月だけの空間が切り取られたようだった。
「五十嵐……?」
「……なんで、お前がここにいるんだ」
9年ぶりの再会。
皐月の口から漏れた震える声に対し、彼が返したのは、あの日と同じ拒絶の色を含んだ、低い問いかけだった。
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